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なぜ振付師に「印税」が払われないの?「著作物としての振付」の可能性


 著作権の入門書を読まれた方は、「著作物」の定義に、詩、小説、楽曲、絵画などと並んで、舞踊の振付が含まれてることを目にすることになります。ダンスの振付は著作物として位置づけられています。
 ところが、実際にダンスの振付を第三者が使った時に、振付師に「印税」が分配されることはありません。日本だけでなく世界的に、ダンスの振付を著作物として登録したり、管理をする機能している仕組みがないからです。

 ダンスを自分の作品として発表する場合は、その舞台なり映像全体を一種の権利として持つことができますが、その振付を第三者が利用した際に、楽曲の印税のように振付師に収益が入ることはありません。誰かに振付をした場合に、実際の稼働が生じるので報酬が発生しますが、「著作物への対価」という発想は無いように思います。振付という非常にクリエイティビティの高い行為に対して、正当な報酬が分配されないのは、音楽ビジネスに長く関わってきた中で、不思議に、そして残念に思っていることの一つです。
 法律の専門家とディスカッションすると、「独自性の定義が難しい」「誰がオリジナルであるか、それをどうやって証明するのか?」等の指摘が出てきます。もちろん難しさは理解できるのですが、音楽との比較で考えてみるのは有益だと思います。

 実は、誰もが当たり前と思っている音楽著作権についても、本質的には同じ問題が存在しています。実際に流通している音楽の楽曲も「独自性の担保」をして登録するような制度ではありません。、JASRACに届け出るのは「曲名、作詞作曲家名、アーティスト名、最初の公表(リリース日やリリース元)」といったテキスト情報だけです。長年の業界慣習と性善説で成立している訳です。その方法で盗作などのトラブルもごく稀にしか起きていません。
 そして、デジタルサービスでの流通が広がる中で、録音された原盤に対して1曲ごとにisrcという国際共通コードが付番され、楽曲についてはJASRAC/ Nextoneコードが振られ、iswcという国際標準番号とリンクしています。isrcとiswcが紐付けられていることが、印税分配の肝になっています。また、オーディオフィンガープリントと呼ばれる技術が発達して、テレビやラジオで流れた楽曲も自動で判別し、これらコードと結びつけて、著作権の徴収分配に活用される流れになっています。YouTubeなどの動画サービスも完全では有りませんが同様の仕組みが広がっています。
 音楽著作権の徴収分配は、性善説と業界慣習で成立していた仕組みがデジタル化しつつある状況なのです。

 さて、「振付も著作物」の話です。動画認識、モーションデータなどのデジタル技術の進歩が、振付を楽曲と同様の「印税」を産む、著作物として流通を可能にしていると僕は思います。従来の性善説の慣習が無い分、一気に進めやすい側面もあります。そこには大きなビジネスチャンスがありますし、ダンサー、振付家の才能が正当に評価される世界の到来が期待されます。各論での課題はたくさんありますが、音楽にできてダンスにできない理由を僕は思いつきません。
 その時に大切なのは、マネタイズの仕組みです。著作物には保護と利用促進の両面があるというのは著作権の本には必ず書いてあることですね。名誉や権利者の確定はもちろん大切なことですが、お金の分配がしっかりおこなわれないと、広まっていきません。
 ここにもデジタル化が可能性を提供しています。自分のキャラクターをデジタルでアバターにするという習慣が広まっていますよね?アイコンが写真かイラストかみたいなことの延長に誰もがデジタルアバターを持つ時代はア来るのでしょう。ゲームや動画UGMなどメタバースと言われるバーチャル世界が広まる中で、自分の分身=アバターを通して活動するというのはアタリマエのことになってきました。VR/ARの普及がこれから後押ししていくでしょう。自分のアバターをイイ感じで踊らせてみたいユーザーニーズは存在することでしょう。リアルの身体ではできないキレのあるアクロバティックな動きをアバターにやらせることが広まると、振付師のダンスが著作物としてマネタイズするチャンスが出てくると僕は思っています。

 ゲームの分野で数々の実績を持つ平井 武史さんが、この領域への熱い思いをENTREのnoteに寄稿してくれました。是非、お読み下さい!

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