見出し画像

コロナ危機下でのアップルのしたたかな戦略

 コロナに関連したチャリティ的な動きはたくさんあって、音楽に対する様々な愛着を感じられて嬉しいことなのですが、Appleが行うこのニュースはちょっと別の意味があるなと感じたので取り上げます。
 最初に確認したいのが、「印税の前払い」であるということです。そしてインディペンデントのレーベルおよびディストリビューターが対象です。
 基金というとドネーション(寄付)的なイメージがありますが、意味が違います。もちろん利息などを取らずに資金を融通しているという意味では、基金ではあるのでしょうが、Appleのビジネス的なメリットにしっかり裏打ちされた行動だと言えるでしょう。その証拠に、4半期に最低1万ドル (約100万円)の収入をApple Musicから得ていることと、Apple Musicと直接的なディストリビューション契約があることが条件となっています。主要取引先への一時的な支援策ということですね。
 Appleのような配信事業者にとっては、自社の音楽サービスの中で、メジャーレーベル3社(ユニバーサル、ワーナー、ソニー)の比重が増すことはメリットではありません。レーベル側の交渉力が相対的に上がるからです。数多くの独立系プレイヤーが多様な音楽を提供し、ユーザーがそれを楽しんでいる方がApple Musicのサービスとしての価値が上がります。インディーレーベルを応援する動機がApple側にある訳です。また、楽曲配信がされているということは、「債権確保」ができることになります。時間がかかっても回収でき、トリッパグレのリスクは低いでしょう。印税の前払いという形で、インディレーベル、ディストリビューターに恩が売れるのであれば、十分メリットがある合理的な行動です。
 改めて音楽ビジネス生態系の幹がストリーミングサービスになったのだなと思わされるニュースでした。

 podcastでわかりやすく話します、是非、聴いてみてください!


モチベーションあがります(^_-)