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アニメ制作の生態系が変わる時、やるべきことは?〜Netflix覇権の時代への向き合い方

●Netflixが6人のアーティストと組む理由。

 Netflixが日本のアニメ制作システム自体を「中抜き」して、クリエイターと直接、作品創りをするという話です。画期的で刺激的な話です。日本市場向けだと重宝される「コミック原作」ものはやらずに、オリジナル原作で作る、世界同時配信を原則にした企画だそうです。
 DVD等のパッケージ販売は行わず、必要な制作費はNetflixが全額負担し、クリエイターには印税契約付きということで、世界市場を意識して、人気作品を作れば評価される、それに挑戦できるという意味では、クリエイターにとっては素晴らしいことだと思います。
 日本のアニメ制作会社は下請け体質が見透かされて「中抜き」されてしまったようです。日本の大型アニメは、ほとんどの場合、地上波テレビ局も巻き込んだ「製作委員会方式」で作られますので、マーチャンダイジングもDVD、Blue-Rayも前提です。この記事の中に、〜「テレビ放送の枠を埋めるために作っているのではない」、というスケジュール感の違いは強く感じます。〜との発言からも日本市場だけを見て、テレビの伝搬力に依存してアニメを作る仕組みへのクリエイターのストレスが感じられます。
 是非、日本発のアニメ作品が世界のユーザーに受け入れられるヒット作が生まれてほしいですし、アニメだけでなく実写の映画やドラマも増えてほしいです。

 一方で、大きな懸念もあります。視聴データの精緻さを売りにしているNetflixは、ユーザー情報をパートナーにも一切知らせないことで有名です。「必要な金は出す、作品に余計な口は出さない、マーケティングデータは独占する」というのがNetflixの基本スタンスです。新たなアニメ制作の生態系ができることは本当に素晴らしいことですが、そのNetflix生態系が広まれば広まるほど、彼らに生殺剥奪の権利を握られることにもなるのです。iPhoneのアプリリリースについて、Appleの恣意性のある基準に振り回されていると同じことです。ディズニーが自ら配信サービスをやる理由も同じだと思います。

 日本は、エンタメコンテンツ流通のシステムがのデジタル化への対応が周回遅れ、それも2〜3周遅れてしまっているので、見極めというか正しい対応策が難しいですが、認識だけは正確に持ちましょう。国内市場を従来型の仕組みを温存することで延命しようというのが、音楽、映像、アニメ、出版、あらゆるエンタメ業界の既存プレイヤーの意向になっているのが、日本の現状です。これは、日本の人口減、世界的な市場シェアの縮小とともに、「ゆっくり滅びる」という選択を意味します。そこに飽き足らない日本人クリエイターが、グローバルプラットフォーマーと組むことを選ぶのは必然です。むしろ、日本の国力を考えると、積極的に活用して、グローバル市場で日本発のコンテンツを流行らせることが、他の産業への波及効果(インバウンドがわかりやすいですね)も含めて、日本の国力向上に繋がります。ただ、その時に注意しないと、巨大なグローバル企業の「駒」として踊らせるだけの存在になって、「ゲームのルール」には発言権がなくなるリスクも意識するべきだと思います。「コンテンツイズキング」という諺も真実ですが、生態系の仕組みを握られてしまうことの意味は非常に大きいです。アメリカ系グローバル企業は、基本的には市場原理ベースなので、まだわかりやすいですが、ここに巨大中国IT企業が覇権を持ち始めているのが今の時代です。Tencentと組めば、中国共産党政府に都合が悪い作品は作れません。デジタル化とグローバル市場の進展で、アニメや音楽を作る時でさえも、そんなパワーゲームを知っておく必要な時代になってきているのです。

 エンタメに関わるクリエイターやプロデューサーが、自分は日本がどうなるかとか関係ないと思っているとしたら、認識が浅すぎます。自分の価値は、日本人であることと紐付いています。そこをどう意識するのは、もちろん断ち切るという選択肢もあり得ますが、僕はオススメしません。エンタメにおいては、日本人であることは今のところ、優位性だからです。そんな話もいろんな人としていきたいです。

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EnterTech Street
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モチベーションあがります(^_-)