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これから作詞家になりたい人へ

 作曲家育成プログラム「山口ゼミ」に、作詞家ないし作詞家志望者の受講が増えてきました。彼女たちとのコミュニケーションで、作詞家目指す人の状況がよろしくないのだなということを知り、間違った考えが広まっていることもわかったので、本稿を書きました。

1)作詞家の仕事が誤解されている
2)コンペで消耗せずにコーライティングを活用しよう
3)コーライターになるために必要なスキルとは?
4)自分の可能性を自分で狭めるのはやめよう


1)作詞家の仕事の本質は「メロディに言葉を当てはめること」では無い。

 まず驚いたのが、平気で「メロディを持つ曲に当てはめて歌詞を書いていくのが主な仕事」との説明が書かれていることです。これは非常に矮小化された、不正確な説明です。作詞家を目指す時に最初にこんな風に思った人は、プロの作詞家にはなれないのでは無いでしょうか?方法論として言葉をハメることがあるのは事実ですが、あくまで方法論です。
 現状は、楽曲とアレンジの基本を選んで、歌詞を最後に決めるためのコンペを行うという制作方法が多くなってしまっているので、こういう誤解が広まるのでしょう。
 「歌もの」の楽曲は、ほとんどのユーザーは旋律に乗っている言葉を聴いています。歌詞を書くということは、「曲の核」を決めることで、その楽曲のコンセプトを定める作業なのです。
 秋元康さんが塗り替えるまでの殆どの作詞家のヒット記録を持っていた昭和の巨匠、阿久悠は「詞先」の仕事しか受けなかったそうです。メロディが先に決まっていると指名の仕事でも断るという意味です。歌詞を書くことはコンセプトを決めることだと確信されていたが故の「詞先」だったのでしょう。秋元さんは曲先でコンペをやっていますが、AKB48というグループのコンセプトや在り方を明確にした上で、曲を集めているので、作詞家がコンセプトを定めるという方法論に則っているとも言えると思います。

2)誰もが「こだまさおり」になれないのでコーライティングを活用しよう

 作詞家として大きな存在になっているこだまさおりは僕の会社(BUGcorp)で、デビュー前からマネージメントしていました。シンガーソングライターとしてビクターからデビューしたのですが、アーティストしての成功は残念ながら掴めませんでした。作詞家としての最初の作品(東京エスムジカ「月凪」)は僕のプロデュースワークでしたが、その後、アニソンの世界で作詞家として活躍していくことには、さしたる貢献をできていないのです。ただ、彼女がアーティストから職業作詞家に変化していったプロセスは身近で見ていました。今活躍している多くのサウンドプロデューサーと同様に、作詞家についてもアーティストとしての活動が礎になるのだなというのは感じています。クリエイティブへの厳しい基準設定やセンスの磨き方などは高いレベルを持っていた上で、作詞家として活動にアジャストしていった訳です。本人なりには苦労したと思いますが、その感覚で言うと、メジャーの世界での音楽経験がない人がコンペに参加するだけで、自分のクリエイティビティやセンスを向上させながら、第一線の作詞家になっていくのは至難の業だなと率直に思います。
 コーライティングに加わって、デモを完成させて、「作曲のコンペ」に参加する方が、ずっとクリエイティブな作業です。作曲のコンペを倍率は高く簡単に採用されるわけではありませんが、メロディメイク、アレンジ、ミックス、仮歌など、高いスキルを持った音楽家と共同作業で完成形に近いデモ制作することで自分のセンスやスキルが上がっていきます。該当コンペで不採用でも、「返却」を受けてストックとして管理すれば、別の適切なコンペに提出することができます。提出して採用されなければソレっきりで終わりの作詞コンペとは消耗感が全然違うでしょう。

 実際に作詞家から「コーライター」に幅を広げた人によるblogはこちらです。是非、参考にして下さい。

作詞家・Mikeyがいま、コーライトを始めたわけ 

「一人で曲を作らない」という選択

3)コーライターになるために必要なスキルとは?
 
 ここで質問です、作詞家、もしくは作詞家志望のあなたはPCのワープロソフトを使っていますよね?類語辞典などを使う方も多いのではないでしょうか?紙のノートとペンを併用するにしても、スマホを全く使わない人はいないのではないでしょうか?
 これと同様にコーライト・ソングライターになるのであれば、DAW(Digital Audio Workstation)と総称されるアプリをパソコン使うことはマストです。機械もアレンジも苦手という人もいるかも知れませんが、1人で完成形まで作る必要はありません。自分に必要な部分でだけ道具として使えばよいのです。難しいことではないので心配いりません。現在の音楽創作は、デジタルデータのやりとりになっています。最低限、メロディをMIDIデータに変換する感覚は持っておきましょう。楽器が弾けなくても大丈夫です。
 コーライト・ソングライターになるのですから、メロディも積極的に創っていきましょう。メロディができたら、MIDIデータで保存しましょう。歌詞テキストで添えておくとよいですね。
 一番持っておきたいのは「歌」に関するセンスです。歌える人は「仮歌シンガー」も積極的にやっていきましょう。でも大切なのは、自分が歌うかどうかより、完成形のデモに向かって、しっかりとイメージを持ったボーカルディレクションができることです。DAWのスキルは最低限で良いのですが、やるならボーカルエディットは覚えると便利です。今は、音程を直すだけなら一瞬でできます。視覚と耳でチェックして自分のイメージするボーカルに直せると一気に戦力アップです。
 気をつけたいのは、「デジタル恐怖症」にならないことです。「DAW難しい」という先入観にとらわれずに自分のイメージを伝える道具として使っていきましょう。そう。ワープロソフトのように。

4)可能性を広げよう 音楽を聴こう、本を読もう

 楽曲のコンセプトを知るためには、引き出しが沢山あることが必須です。作詞家でもアレンジャーでも職業クリエイターは、アーティストやA&Rの要望に合わせて、無限に選択肢を示すことがもとめられる職業です。発想を柔軟に、そしてイマジネーションが豊かであることが前提ですね。
 小説を読んで、気になる表現をメモしておくのおよいでしょう。映画や舞台や美術館など音楽以外のインプットも貴重ですね。自分の脳神経に「感動しやすい癖」をつけておくのは表現者として大切です。

 「山口ゼミ」副塾長の音楽プロデューサー伊藤涼は、ジャニーズエンターテインメントのプロデューサー時代に「青春アミーゴ」という200万枚セールスの国民的ヒット曲を生み出しています。作詞家育成の「リリックラボ」というオンラインセミナーもやっていて成果が上がったいるようです。作詞を題材にこんなエッセイも書いています。頭を柔らかくする役に立つでしょう。

 ちなみに、編集者にそそのかされて、僕と彼とで「ラブソングラボ」というユニット名義で書いた本は、セールス的には空振りでしたが(笑)J-Popのヒットラブソングの名フレーズをまとめているので、作詞家志望者のお役に立てるかと思い紹介。華原朋美さんの推薦文が懐かしいww

 作詞家を目指している人、作詞家デビューはしたものの停滞感を覚えている人は、コーライト・ソングライターというアプローチがあることを知って下さい。

 エイベックス創業者の松浦さんもCEO退任で語るほどCo-Writingは一般的になっています。Co-Writing Farmでは定期的にオープンなコーライティングワークショップを行っています。peatixアカウントをチェックしておけばお知らせが届くかと思います。


 もちろん、「山口ゼミ」を受けるという選択肢も有力です。作詞家、作詞家志望者の受講も徐々に増えてきました。2021年1月開始の冬期生を募集しています。コロナ禍対応でオンライン講座にしましたので、地方や海外在住の方も受講しやすくなっています。

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モチベーションあがります(^_-)