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[音楽ビジネスの学校2020レポート:6]日本のライブエンタメを背負うリーダーの矜持から学ぶ可能性

 Studio ENTREが主催し、僕がホストを務めている「音楽ビジネスの学校2020」は、素晴らしい講師陣の熱のこもったお話で毎回、貴重な内容になっています。この日も感動的な内容でした。詳細レポートがあるので、こちらをご覧ください。

 日本を代表するアーティストのコンサートを手掛けるディスクガレージ代表の中西さんは、コンサートプロモーターズ協会の代表も務めると共に、スポーツ団体(日本トップリーグ連携機構)と一緒に「ECSA(Entertainment Committee for STADIUM・ARENA)」を設立されるなど日本のライブエンターテイメントの発展に、リアルタイムに貢献を続けていらっしゃる方です。
 業界の偉い方とだとは意外に多いのですが、深夜の西麻布で飲みながら、垂直的に深いお話を伺うことはあっても、系統だって経歴や網羅的な視点を伺う機会はこれまでなかったことに気づきました。僕にとっても大変勉強になりました。

 詳細は前掲のENTREのnoteを読んでもらうとして、印象的だったところと、ECSAの価値の二点について触れたいと思います。
 前提として日本のコンサートプロモーター各社は、基本的にインディペンデントで各地域に根づいている会社です。北海道はWESS、東北はGIP,東海はサンデーフォーク等々、音楽業界関係者なら名前を知っている会社が、各地域に3〜5社くらい存在しています。
 僕は『ミュージックビジネス最終講義』に書きましたが、日本は大規模コンサートにマフィアが関与せずにできる、おそらく世界で稀有な国だと思います。そこには、先輩たちが、暴力団には触らせないとコンサートを守ってくれた歴史があります。なので音楽事務所とイベンター(業界内ではコンサートプロモーターのことをこう呼びます)は、仲間意識の絆で結ばれています。僕自身はそんな歴史とは無関係の音楽事務所を始めましたが、気づけば、その恩恵を受けていました。日本の素晴らしい伝統だと思っています。
ただ、昭和から続くので、比喩的に言うと「FAXと携帯電話で進める」業務も多く、DXが必要な領域だと強く感じているところです。

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 さて、僕がこの日に印象的だったのは、コロナ禍の後に、コンサートにお客さんが戻ってくるのには、少しタイムラグ的に時間がかかるのではないかという中西さんの懸念でした。現場を知り尽くした方の肌感なので、重みのある発言でした。
 本当に感染リスクが高いのかどうかの検証もなく、様々な営業形態があることも無視して「ライブハウス」という言葉が一人歩きをしする「風評被害」があり、今も続いています。政府による補償なき中止要請を、ファンやアーティストの気持を考えて受け入れ、保険会社からはコンサート中止保険の対象にされず、会場キャンセル料は支払わされる音楽業界の理不尽な辛さを具体的にしっている方です。「コンサートなんとなく怖いから行かないでおこう」というふわっとした感覚が音楽ファンに広がっていて、その払拭には、Covid-19収束して公演が再開しても、少し時間が必要なのではないか?という懸念を軽んじることはできません。音楽に関わる人達みんなで考えていくべき問題なと思いました。

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 ご本人がやられたことなので、この日はお話がなかったですが、ECSAの設立は実は画期的なことです。
 デジタルコンテンツ白書でも指摘しました「2016年問題」がありました。これは、東京五輪に向けて、東京近郊の大きなスタジアムやアリーナが同時期に改修工事に入って、大規模コンサートの会場が不足するという問題です。1年半くらい前から音楽業界では問題視されていたのですが、僕は正直、大変だけれど、それなりに現場レベルでやりくりするのではと思っていました。データが上がってきて、実際に売上が下がっているのを見た時には衝撃でした。
 これはスタジアム同士のコミュニケーションの問題もありますが、それ以上に、スポーツのための場所で、音楽は二の次という経営者の意識の問題だったと思います。そこに問題を感じた、トップリーグの川淵さんと中西さんの連携プレイが成立したことで、今後はこういう事態は避けられるでしょう。ライブエンターテイメント振興のためにスポーツ興行とコンサートが連携していくことは重要だなと、中西さんのお話を伺いながら感じました。

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