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指輪物語:中つ国の伝承 リミテ反省会(環境理解篇)

はじめに

こんにちは!
いつもポジティブ、山辺カフカです!

指輪物語:中つ国の伝承(以下、LTR)実装から4日ほど経過し、17lands.comの統計データもだいぶ集まってきております。
そして、筆者はリリース前にnoteで環境予想をしておりました(↓)

そこで、筆者のLTR環境予想がどれだけ当たっていたか/外れていたか、17landsのデータに加えて、LTR環境のリミテッド(主にプレミアドラフト)を体感した経験も基に、恒例で行っている反省会を今回もやっていきたいと思います。


予想の検証

予想記事において、筆者はLTR環境を、高速(平均キルターン≒8.7)かつ先手有利(先手勝率≒52.5%)と予想しました。
これは、①先手有利な「指輪があなたを誘惑する」メカニズムが環境のメインテーマになっていることに加え、②レアカードのカードパワーが過去セットと比較して低く、③マナサポート不足で多色化も難しいためロングゲームが肯定されにくい、と考えたためです。
また、③の派生として④アーキタイプ間の横断的なシナジーが少なく、純2色デッキの強いアーキタイプ環境とも予想しておりました。記事の中ではある色の組み合わせが顕著に強くなる可能性(一強環境)にも言及しました。

さて、実態はどうだったのでしょうか。

環境のスピード

今回も17landsのPlay/Draw Advantageというデータを参照します。(これ以降のデータ集計期間はいずれも2023/6/25まで)
このデータでは先攻・後攻の勝率差と、その環境で試合が終わるまでの平均ターン数が分かります。

以下にプレミアドラフト・シールドでのデータを、現行スタンダードのエキスパンションと比較して載せています。
縦軸が試合が終わるまでの平均ターン数、横軸が先攻の勝率です。
銀シンボルがプレミアドラフト、赤シンボルがシールドのデータでして、筆者予想の環境も赤色の★で示しております。

ドン・ピシャ💕

ということで、筆者予想はかなり当たっており、予想通り高速環境(平均キルターン=8.65)かつ先攻勝率52.5%の先手有利環境と言えそうです。

アーキタイプ別の強さ

こちらも17landsのFormat Color Ratingsからデータを参照します。

まず、以下にプレミアドラフトのタッチカラー(3色目3枚まで)有り/無し別の2色デッキの色別勝率を示します。
上段、"Two-color"がタッチカラー無し、下段"Two-color+Splash"がタッチカラー有りのデータです。

筆者予想の「多色化が難しい」に関しては、タッチカラー無しの2色デッキの勝率(57.3%)とタッチカラー有りの2色デッキの勝率(53.0%)の差が4.3%と大きいことからも、予想は当たっていたと言えそうです。

(参考) 各環境のプレミアドラフト 2色タッチ無し/有り勝率差Δ

MOM: (無)56.1%     (有)54.0%     Δ=+2.1%
ONE: (無)56.0%    (有)52.0%    Δ=+4.0% 
BRO: (無)56.1%    (有)54.9%    Δ=+1.2%
DMU: (無)58.5%    (有)56.7%    Δ=+1.8%
SNC: (無)56.8%    (有)55.9%    Δ=+0.9%
NEO: (無)56.9%    (有)54.2%    Δ=+2.7%
VOW: (無)56.0%    (有)53.0%    Δ=+3.0%
MID: (無)56.8%    (有)53.3%   Δ=+3.5%

続いて、タッチカラー(3色目3枚まで)も含んだ2色・3色デッキの色別勝率データを参照します。

今回事前予想記事にてアーキタイプ別の強さ予想までは行っておりませんでしたが、実態は赤黒一強と言ってよいほど躍進しており、白黒・赤白といったマルドゥカラーが続く形となっております。
特記すべき点として、赤黒は成立したデッキ数でも全体の23.4%と抜けており、次点の白黒の2倍近く組まれているということです。
このような状態でありながら赤黒の勝率が1位ということは、卓において複数人が赤黒に向かったとしても十分強力なデッキが組めるということであり、所謂赤黒一強環境を示すデータと言えそうです。
個別の色としては、黒に絡む2色はどの組み合わせもそこそこの勝率を示しているのに対して、緑に絡む2色は組まれた数が少ないにも関わらず黒緑以外奮わないことからも、黒が勝ち組カラー、緑が負け組カラーなのは明確になってきております。

総合評価

一応予想を総合的に検証すると、今回の予想はほぼ当たっていたと言えそうです!

普段この記事では筆者予想との相違点をベースに掘り下げるので、これはこれで困る…

カフカのつぶやき

そこで、筆者がLTRのプレミアドラフトイベントを複数回プレイして、予想時点では感じなかったこの環境の特徴を、以下に記します。
既に事前予想記事に記した点は省いていますのでそちらをご参照ください。


環境の特徴

①オーク動員が強い

「知ってるわ!」と言われそうな項目名にしてしまいましたが、この環境で採用されているオーク動員(以下、単に動員と記す)というメカニズムは非常に強力です。
黒中心+赤青に採用されているメカニズムであり、今回のアーキタイプ別勝率の結果にも大きく影響したであろうメカニズムです。

実は事前予想記事で触れる予定で失念していたのがこの動員だったのですが、動員は環境の加速にも貢献しております。
なぜなら、2回目以降の動員は疑似速攻として働くためです。
既に多くのプレイヤーが、2T目《モルドールの召集》or《黒門からの出撃》→3T目《褐色国のクレバイン》で動員パンチ、の黄金ムーブに泣かされていると思います。

犯罪ムーブたち

これにより序盤からライフレースを優位に進めることで、中盤以降も相手にライフを気にさせながらコンバットできるのが、この環境の黒(特に赤黒)の強みです。

そして、動員はトークンが横並びせずに一点に集中するために単体除去に弱いという脆さも抱えているのですが、この環境で大きいサイズのクリーチャーに触れる除去は限られています。
4/4以上になると火力や格闘除去で落としにくいサイズ感となるため、対処手段が限られる点も、動員の強さを後押ししています。

この中でも一番優秀な対処手段が《いとしいものを取り返す》である時点で、黒に触らない理由がなくなってきています。
アンコモンとはいえ《ホビット庄の庄察》は環境柄強いので、今後評価が上がっていきそうです。


②打ち消しも強い

青は緑に次ぐ負け組カラーになっているものの、今回は打ち消しが非常に強力です。

これも背景には①の動員が大きく関わっていると思われます。

仮想敵として最初に浮かぶのは今回のトップコモンクリーチャーである《褐色国のクレバイン》であり、この環境はこれを中心に回っていると言っても過言ではありません。

このクリーチャーは動員(2/2相当)と本体(1/1飛行)に分割され、いずれも無視できない存在となります。
前者の強さについては①で述べましたが、後者についても事前予想記事で触れた通り、指輪を持たせたときにほぼアンブロッカブルとなる点で全く軽視できない存在なのです。
これにより、さながらLTRリミテッドにおいては《鏡割りの寓話》のような存在と言っても良いでしょう。

そして、構築において後手で《鏡割りの寓話》を諌める手段として《かき消し》が重要であったように、この環境の《輝かしき突風》は《褐色国のクレバイン》を後手で綺麗に止める唯一の手段として重要です。
また、後手では止められないものの《サルマンの策略》もクレバインを止めながらアドを取ることができる数少ないカードとして存在感を示しています。

そしてこれらの打ち消しはそもそものカードパワーも歴代屈指のため、クレバイン以外のカードに対しても有効であり腐りにくくなっています。
これにより、専用の対策を積むことなく自然とクレバインに対しても対等に立ち向かえる青のデッキが、一定の成果を残しています。

ただし、打ち消しをスペルの主軸にすることからもコントロール寄りの構築となりやすく、結果的には相方の色は黒になりやすいのも事実です。
少々嚙み合わせが悪い点もあるものの青赤のスペルシナジーデッキも比較的高い勝率を残しており、これらの打ち消しを擁してTier1の赤黒デッキに立ち向かえるか、今後の研究が待たれます。


③ボムレアはアーティファクトに多い

事前予想記事で他の環境に比べてボムレアが少な目であることに言及しましたが、この環境にも当然ですがボムレアと呼べるカードは存在します。
そして明確に3枚、アーティファクトのボムレアが存在します。

これらのカードは神話レア・レアとは言え、色を問わずにデッキに間違いなく入ることからも比較的出くわします。
そして通常のデッキでは対処手段をあまり持ち合わせずにそのまま負けることもしばしばです。
以下に対策カードと言えるものを並べましたが、白以外のカードはとてもBO1のメインデッキに入るものではありません。

右にいくほどアンプレ

そこで、先述の《サルマンの策略》や、ピーピングハンデスである《ゴラムへの拷問》がその強さを増します。
前者の強さは既に述べた通りですが、後者も単体のカードパワーが十分すぎるほど高く、ボムレアのケアをしながらもその他のカードに対しても腐らなずアドを取る優秀なカードです。
事故のようなボムレアゲーを少しでも減らすためにもこれらのカードの採用を優先して検討すべきかと思います。

また、上記ボムレアのうち通常レアで最も遭遇率の高い《ゴンドールの角笛》に対しては、《危ない!火事だ!敵だ!》が刺さることも付記しておきましょう。
角笛は横並びして殴り始めるまでにマナと時間が必要ですので、その間にこちらの盤面を構築してから「火事だ!」で流せば逆に優勢となります。
こちらも非常に強力な汎用カードなので自然とデッキに入るかと思いますが、使い所を十分考える必要のあるテクニカルなカードです。

実はトップアンコ(全カードでGIHWR 9位)



提言:味変の必要性

正直ここまで読んでいただいて感づいた方もいるかと思いますが、この環境のリミテッドはおそらく赤黒一強から揺るがないと思います。
(少なくとも筆者はそう確信しています)

だからこそ、アリーナならではのゲーム体験として、今回もニューカペナの街角(以下、SNC)やバルダーズゲートの戦い(以下、HBG)で実施していたような、アルケミー専用の能力修正を行った味変ドラフトを実施してほしいです。

アルケミーやアリーナ専用カードに対しての賛否両論があることは筆者も存じていますが、筆者は基本的に歓迎しております。
アルケミーの本来の目的である環境の固定化の抑制はできるのであればすべきであると考えますし、何なら今のアルケミーフォーマットは能力修正が少なすぎると思っているくらいです。

特に、期間限定であるリミテッドであれば能力修正に対する批判も起きにくいはずです。
HBGの味変は筆者としても大成功であったと感じておりますし、アリーナの可能性を広げるためにも今回もこの味変を是非採用していただきたいです。


おわりに

以上、相変わらず雑多ですが筆者なりにこの環境の全景を言語化してみました。
まだまだこの環境は研究されていくと思うので、気づき等あれば是非筆者にも気兼ねなく共有いただきたいです!

ここまでご一読いただきありがとうございました。
それでは!また次回記事か配信でお会いしましょう!
バイバイ、さよなら、再見

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