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衆院選は「政権選択選挙」 連立政権の時代、カギを握る政党は?

第49回衆議院総選挙の投開票日まで、あと一週間となった。

衆院選は「政権選択選挙」といわれている。今後4年間、どの政権、政党・政治家に託すのかを決める重要な選挙だ。今回の衆院選は長年政権を担ってきた自民・公明と、立憲・共産を中心にした野党連合との対決。日頃から対立する、公明と共産が各陣営に分かれているのも面白い。まさに二者択一!政権を選択する衆議院選挙に相応しい構図になったといえる。

話はかわり、その衆議院だが「55年体制の崩壊」と呼ばれ、自民党が単独政権を失った1993年の細川連立政権が誕生して以降、これまで約30年にわたり“連立政権の時代”が続いてきた。細川、羽田政権の後、自民党は社会党に総理を譲る形で自社さ政権(村山政権)を誕生させた。その後、新進党との対立を経て、2000年には自由党、公明党と連立を組み自自公政権、小沢一郎氏の離脱で自由党が分裂した後、自公保政権に移行し(ちなみに、小沢氏と決別し設立された保守党の中心者が二階前幹事長)、自民党と保守新党の合流を経て、2003年に自公政権がスタートした。さらにいえば、2009年に政権交代で誕生した民主党政権でさえ、社民、国民新党との連立政権を樹立。そして、現在は自公政権が続いている。

なぜ、日本では「連立政権」が主流になっていったのか。その要因は二院制であること、つまり参議院の存在が大きい。かつて、自民党単独政権の時代は、衆議院はもちろん参議院でも過半数を確保していた。しかし、1989年の第15回参議院通常選挙で、自民党は結党以来初めて単独過半数を失い、参議院では独自に法案を通すことが難しくなった。その後、今日に至るまで(自民会派は他会派議員の合流もあり、単独で過半数を確保した期間もあったが…)参議院で単独過半数を獲得した政党はなく、連立政権が続く要因になっている。この状況を鑑みてか「参議院不要論」が叫ばれ、廃止して一院制にすべきとの議論が起きたり(そのためには憲法改正が必要)、欧米のように政権交代が起こりやすい二大政党制を模索する動きもあったが実現していない。

自民党がかつてのような強さを失うなかで、参議院の位置づけが高まる中、良くも悪くもカギを握ってきたのが公明党の存在だ。ご存知のように、公明党といえば日本最大の宗教団体・創価学会を支持母体とし、国や地方など各級の選挙において安定した強さを発揮してきた政党だが、この公明党が持つ参議院の議席数が大きなポイントになっている。

自民と公明は選挙で協力関係にあるようにみえるが、実は参院選の選挙区において、東京や大阪などの複数区では対立関係にある。自民は公認候補を立てつつ公明候補を推薦するという不思議な対応をとっているが、公明党は東京、神奈川、大阪、愛知、埼玉、兵庫、福岡の7選挙区で、改選・非改選を合わせ14議席を獲得している。また、公明のような組織政党にとって最も効率的に選挙運動ができる全国比例区でも14議席を獲得し、参議院(総定数245、過半数は123)で1割強の専有率を保持している。現在の28議席は公明党にとって過去最多だそうだが、簡単にいえば選挙に強い、地力のある政党といえる。この安定した議席の確保こそ、長きにわたり参議院でキャスティング・ボートを握ってきた理由なのだ。

仮に自民党が参議院の選挙区(一人区32議席、複数区13議席以上)で圧勝し、比例区で20議席以上を獲得すると65議席程度で、改選・非改選の2回連続で同等の議席が取れれば単独過半数もみえてくる(実際に一人区で全勝はかなり困難…)。しかし、直近の参院選でも2016年は56議席、2019年は57議席に終わっている。現在、一票の格差の問題で一人区が合区されるなど、地方に基盤がある自民党にとっては、さらに厳しさが増している。自民支持者から政策の違いを理由に公明党との連立は解消すべきと主張する声があるが、自民党にとって安定した政権運営を考慮すれば、公明党とは離れたくても離れられないのが本音で、これこそが長きにわたって自公政権が続いてきた理由だと考えられる。

今回の衆院選、岸田新総理は「自公で過半数が目標」と公言し、公明党の小選挙区候補の応援にも積極的に駆けつけているようだ。また、直近の発言を聞いていても、政策面などで公明党に配慮した姿勢も示している。誰が自民党の総裁になっても、避けては通れないのが「公明党」との関係なのかもしれない。マスコミ各社の世論調査では序盤戦で与党劣勢と報道され、自公が議席を減らす情勢だが、そこまで野党への期待が高まっていないため、自公が大敗し政権交代するまでは難しいだろう。いつかまた、あの2009年のように政権交代のムードが高まる時がくるのだろうか。 20年以上にわたり続いてきた自民・公明という連立政権の枠組み。選挙巧者の両党を倒すには、野党が実力をつけ、与党への逆風に乗じて、国民の大きな期待の風でも吹かない限り、簡単ではないような気がしている。

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