アメリカでリトルリーグのコーチ/監督をやってみた
友人家族に誘われて6歳からリトルリーグをはじめて、7歳になった2022年はコーチピッチというカテゴリーで野球を続けている長男。このシーズンは、父親である自分が監督・コーチという形でボランティアに挑戦してみたので、色々と考えたこと・感じたことをまとめてみる。
アメリカのリトルリーグ
まず、アメリカのリトルリーグは多くの場合それぞれの市ごとに組織が運営していて、越境での参加は許されていない。例えば、自分が住んでいるカリフォルニアのパロアルト市はPalo Alto Little Leagueという団体がリーグを運営していて、運営サイドは全てボランティアで賄われている。2022年現在、アメリカで人気なプロスポーツというとフットボール(NFL)やバスケットボール(NBA)で、野球(MLB)はやや元気がない印象。でも、昔から親しまれてきたスポーツということもあって、組織や制度が整っていて、小さい頃から親子で一緒になって取り組めるのはとてもよいと感じている。
例えばパロアルトのリトルリーグは(主に)年齢別でカテゴリーが分かれていて、簡単にまとめると以下の通り。
T-BallやCoach Pitchはそこまで本格的にやる感じではなくて、コーチや他の大人が大いに手助けして試合を進める形式。守備でアウトが取れるのは稀で、打順が一巡したらチェンジして…みたいな緩いノリ。ボールも外側に柔らかい素材が入ったソフトボールを使うので、当たってもそこまで痛くはない。
逆に、AAA以降になってくると試合も本格的な形式になってきて、特にPCLやMajorではドラフトという形で過去の実績やトライアウトの結果を踏まえて監督が選手を選んでチーム編成が行われたり、オールスターが選抜されて他地域の選抜チームと対戦したり…なんてことにもなってくる。さらに、地元の店・会社がスポンサーになっていたりすることも多い。
チームの運営とボランティア
どのカテゴリーでも共通して言えることとしては、家族が積極的にボランティアとしてチーム運営に携わり、子供たちはとにかく野球を楽しむことに集中できる…というところ。ボランティアも、リーグやカテゴリーをオーガナイズする役職から、チームの監督、コーチ、おやつ担当、グランド整備、写真係…と多岐に渡り、自分の子供だけに限らずチームの他の家族や子供たちともシーズンを通じて触れ合うことになる。
春のシーズンは3月から5月までの約3ヶ月で、毎週土曜日の試合と、平日1回の練習、そしてカテゴリーによってはさらに平日に週1回の試合もあったり…と、なかなか忙しい。ただし、少なくとも下位カテゴリーに関して言えば試合は1-1.5時間で終わるし、練習も1時間程度なので、無茶苦茶大変な負荷になるかというとそこまでではない感じ。
チームの運営は監督(manager)が請け負う形で、シーズンが始まる際に各カテゴリーのオーガナイザーが監督やコーチのボランティアをやる意思のある家族(登録時に意思表示できる)を分散させてチームを組んで監督を決定。そこから先は各チームでボランティアの役割分担や練習の曜日などを調整してドタバタとシーズンが始まる。共用の装備品は監督が管理する形で、練習や試合には毎回出席(あるいは誰かに渡す)。コーチは2人くらいいてくれればうまく回る。多くの場合、監督がヘッドコーチを兼任する。
下の方のカテゴリーでは、必須の装備はグローブだけでヘルメットやバットはチームのものを使うことが可能。バッティンググローブやスパイク、それに野球用のズボンも、やる気に応じて‥という感じ。ユニフォームは、チームが決まってしばらくするとメーカーから直接オーダーできるようになり、背番号は早いもの順。
シーズン中の様子
経験者から未経験者が混じることの多い下の方のカテゴリーでは、練習はチームによってまちまち。とりあえず追いかけっこでウォーミングアップして、キャッチボールやって、バッティングして、ゴロ捕って一塁投げて…みたいな練習を漫然とやるチームもあるし、もう少し本格的なメニューをやるチームもある。一応リトルリーグ公式の練習ガイドみたいなものもあったりするけど、ガイド通りに練習をばっちり組むのははっきり言って現実的ではない(時間的制約、集中力、などなど)。5-7人のグループに分けてローテーションしながら違うメニューをこなすと効果的な練習ができることが多い。
下位のカテゴリーの練習場所・試合会場はバックネットのある公園の芝生や学校の校庭。試合はカテゴリーのオーガナイザーがシーズン開始時に設定したスケジュールに則って場所と時間が指定される。上位のカテゴリーでは、各市にひとつくらいあるリトルリーグ用の野球場が使われることが多い印象で、設備もしっかり整っていて応援スタンドなどもあっていかにも「野球をしています」という感じになってくる。
試合は最初に両チームの監督がどのくらい厳密にルールを適用するかとかを決めて、あとは1時間15分を超えるくらいまで試合を進めて集中力とやる気が残ってたらもう1イニングやりますかーというノリ。下のカテゴリーでは勝敗はつかないけど、とりあえず楽しんだら勝ちでしょというスタイル。試合が終わったら円陣組んで掛け声だけたり、列を作って相手チームとハイファイブなどなど。試合後はスナックタイム(あるいはピザパーティー)をするチームが多いので、交代で当番制にしているところも多く、野球そのものよりスナックを楽しみにしている子供も多い。
監督とコーチ
監督をやってみての感想としては、とにかくアメリカの子供たちはよく喋るし、よくも悪くも自主性が強いので、放っておくと勝手なことをやったりしがち。楽しみつつ安全と野球に対する意識は失わないようにうまくバランスを取るのが難しい。チーム内でのコミュニケーションは適宜情報を流したり、ヘルプを求めていけばよいし、基本的に親たちも協力的なのでよほど運が悪くなければ運営そのものはそこまで大変じゃないかなと思った。
コーチは練習を仕切ったり、子供たちにあれこれコーチングしたり、試合のオーガナイズをしたり、とチームの運営にとって欠かせない存在。子供達にしっかり声をかけたり、楽しませたり、あれこれ技を駆使して練習や試合を盛り上げてくれる存在が理想的。監督としていちばん最初にやるべきことは、1,2人のレギュラーに練習・試合に来てくれるコーチを確保するところで、そのほかの諸々のチームの運営を軌道にのせてしまえばあとは粛々と通常営業できる。
逆説的に、監督がオーガナイズが上手じゃなかったり、コミュニケーション不足だったりするとチーム運営が壊滅的になって親も子供もやる気が起きずにグタグタに…というケースもありえる。このあたりはアメリカのボランティアベースの活動の常で、リトルリーグに限ったものではないけれど、より協力的な人たちが多いコミュニティーに属することと、そのコミュニティーを良くするためなら率先して自分から努力する…という姿勢の重要さを感じる。たとえば自分が住んでいるパロアルトだと、野球に親しんで成長したアメリカ育ちの人の割合が少なくて、習い事的なテンションでリトルリーグに参加している家族も多くて、その割合が一定数を超えてしまうと健全なチーム運営のハードルが上がってしまうかな、という印象。
そんなわけで、リトルリーグは家族側からのコミットメントも求められることも多いけど、アメリカの子供らしいスポーツを楽しみつつ、他の家族や子どもたちと触れ合うよい機会なので、我が家はしばらくお付き合いしていくことになりそうです。
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