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「岳」を読んだ話。

漫画を読んで泣いたことはこれまでに2度しかない。(そもそも好きな漫画は「ちびまる子ちゃん」と「あたしンち」という趣味嗜好が影響しているのだろうが。)
1度目は言わずと知れた名作「スラムダンク」、2度目は山にまつわる話を描いた「岳」だ。

先日西穂山荘に泊まったとき、「岳」のポスターやTシャツが飾られているのをみた。「岳」は小栗旬主演で映画化していて、その際のロケ地だったようだ。それから気になる存在になり、スーパー銭湯の漫画コーナーでそれを見つけたときは、すぐに手にとっていた。
<↓こちらが作品>

この先に内容のネタバレはありませんので、安心して読み進めてくださいませ。

主人公は山に住むほど山が好きで、山岳救助ボランティアをしている三歩(さんぽ)。普段は、自由に飄々と山に囲まれた生活を楽しんでいて、行方がわからなくなった登山客の救助要請が入ると、ヘリが向かえない悪天候な時でもすぐに駆けつけ、警察と共に捜索救助しにいく。
そんな三歩の生活を通して、山と関わる人たちに触れていくストーリーだ。

三歩の救助活動のおかげで助かる人もいれば、到着したとき既に亡くなっている人もいるし、救助中に命を落とす人もいる。
普段から意識しているようでしていない山の危険さが、リアルに描かれている。

一緒に登っていた仲間が重傷を負い、最後まで諦めずに声をかけ続けても目の前で亡くなる姿を目の当たりにした人。必死に無事を祈っても、駆けつけたときには既に命尽きていて、突然遺されてしまった家族。想像を絶する悲しみがそこにはあるだろう。銭湯のリクライニングチェアに寝転びながら読んでいようとも、涙を流さずにはいられなかった。

胸が締め付けられるくらい悲しくなるのに、途中で読むのをやめようとは思わなかった。なぜだろう?って自分でも不思議だったが、1つの答えをみつけた。

助からなかった人の仲間、友人、家族は、どうしようもない暗い悲しみに打ちひしがれる。大切なひとを奪った山を許せなかったり、もう山に登るのはやめようと考える。そんな遺された人たちに、三歩は必ずあることをする。
大切なひとが見た、あるいは一緒に目指した山の美しい景色を見せ、「また山に来てね。」と優しく微笑むのだ。生前の彼らの「山が好きだからここに来た」という純粋な思いが伝わり、遺された人々はみるみる救われた表情になっていく。
大切なひとは、“最期まで好きなことをしていた“、つまりは幸せな人生を送れたと物語っていて、悲しみの中に光を見出すことができたのだろう。

 
大切なひとが好きだったものは好きであってほしい、という三歩の優しい思い、大切なひとの幸せは自分の幸せ、という人間の純粋な気持ちが美しかった。“悲しい“という感情を上回っていた。

私は、登山を始めて大切な仲間に出会えた。彼らがもし…なんて縁起でもないことは考えないが、山がなければ出会えなかったし、山が私の世界を広げてくれたことは、どんなことがあろうとも絶対に変わらない事実だ。
生きていれば色々な変化がある。一緒に山に登り、同じ景色を美しいと思える時間の尊さを噛み締めたいと強く思った。

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