釜沢こもち

登山の沼にハマってしまった主婦のエッセイです。 ネタ切れまでは書き続けます。 よろしく…

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登山の沼にハマってしまった主婦のエッセイです。 ネタ切れまでは書き続けます。 よろしくお願いします!

最近の記事

あじさいの山〜栃木太平山〜

太平山に登ったのは6月のことであった。関東ではそろそろ梅雨入りの時期である。 梅雨を目前にし、私にはひとつ挑戦してみたいことがあった。雨の中の山行だ。 それまでの登山は雨予報の日を避けていたし、山行中に降られることも幸いにしてなかった。しかしいずれは必ず降られる。 ある日突然そういう目に遭うよりも、まずは雨天を前提に山を登ってみたかったのである。 雨。梅雨。梅雨といえばあじさい。あじさいの植わった山なら、雨の中でも風情のある登山を楽しめるのではないか。 調べてみれば

    • いろいろアウトな下山〜秋田太平山〜

      ピストンであるから下りに書けることは多くないが、樹林帯に戻って以降、登りと下りでこれほど印象が違うことがあるものかと驚いた。そもそも荒れていて分かりにくい道だから記憶も曖昧なのだろう。 沢を登った覚えはあるが、下りながらこんなに距離あったっけ? こんなに危なかったっけ?と思う。アプリを確認すれば、道を間違えている。 この沢で、足をかけた岩がごろりと外れた。空いた空間から水が噴き出してきて、私ごときが山の形を変えちゃう!と本気で焦った。慎重に岩をはめ直して一息つく。 下方

      • 藪漕ぎの先に〜秋田太平山〜

        樹林帯を抜け、やがて両脇が笹薮の道に出た。明るい。それまでの登山で、山頂でもないのにこれほど明るい道を歩くことはなかった。 初心者であった当時にはぴんと来なかった状況であるが、多分森林限界を超えていた。緯度が高いと低地でも森林限界が訪れるということも、その頃は知らなかった。 明るいと更に恐怖は薄れる。疲れてはいたがうきうきと歩みを進めていた私の前に、最後の難所が現れた。 厚く繁った笹薮で足元が見えないのである。いつの間にか私の下半身は笹に埋まっていた。道が、分からない。

        • 静かなる山〜秋田太平山〜

          登山前日に秋田入りして、レンタカーを借り、翌日の早朝から登ることにした。そして下山後すぐ埼玉へ帰る。 タイトなスケジュールだが、私も主人も連休が取りづらい仕事なのでやむを得ない。 ホテルの部屋からは太平山がくっきりと臨めた。秋田に住んでいた頃にはただの風景にしか過ぎなかったそれが、自分と関わりのあるもの、名前と意義のあるものとしてそこにあった。 思っていたよりも大きい。本当に登れるのだろうかと緊張が高まる。 翌日日の出前に目覚めると、山の背後に美しい朝焼けが広がってい

        あじさいの山〜栃木太平山〜

          初めての遠征計画

          高尾山からの下山については省く。こうして私の初登山は、無事というかかろうじてというか、とにかく終わった。 登山の醍醐味として挙げられる達成感は正直よく分からなかったが、数日経つとまた無性に山に登りたくなった。 とりあえず私は山にいることが好きである。登山を始める前も、休日には山の見える場所に行くことを望んだ。 山が好きとは言っても、単純に山にいられればいいのなら、わざわざつらい思いをして自分の足で登る必要はない。車でもケーブルカーでも使えば良いのだ。実際、登山を始めるま

          初めての遠征計画

          山頂のとろろそば〜高尾山〜

          実は高尾山について覚えていることはそれほどない。つらくてつらくてそれ以外のことは何も記憶に残らなかった、わけではない。 初めての登山である。見るもの感じるもの、いいこともそうでないことも何もかもが新鮮で、私の脳の乏しい処理能力が追いつかなかったというほうがふさわしい。 全てを覚えておくには刺激が強すぎたのだ。未知の世界に踏み込むとはそういうものなのだろう。 ほかの記憶がこぼれ落ちてしまうほど印象に残った事柄を数点挙げようと思う。 まずは柵がないこと。 稲荷山コースは

          山頂のとろろそば〜高尾山〜

          もったいない精神〜高尾山〜

          縦走に憧れて登山を始めたとは言っても、いきなり複数の山を登ろうと思うほど無謀ではない。 初心者におすすめの山を調べると、どの記事でも高尾山は外せないもののようであった。世界で最も登られている山でもあり、その安全性たるや盤石である。 と、思っていた。 高尾山にはたくさんの登山ルートがある。 ネットや「山と高原地図」の情報から、私は6号路が魅力的に見え、それを登りたかった。しかし残念なことに当時6号路は改修工事で通行不可となっていた。 そこで選んだのがお隣りの稲荷山コー

          もったいない精神〜高尾山〜

          ある日、天啓のように

          40歳になったばかりの冬、突如、登山をしたいと思い立った。 きっかけはウェブの何かの記事で、縦走という単語を目にしたことである。 私には全く未知の言葉であったそれは、ひとつの山を登った後、下山せず稜線を伝ってそのまま次の山を目指すことだという。 大層たまげた。そんなことが可能だとは思ってもみなかった。 山脈だの連峰だのという言葉を知ってはいても、その意味は知らなかったものらしい。 私にとっての山とは全て独立峰で、別の山とつながっているなどとは考えたこともなかったので

          ある日、天啓のように