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僕が悩む Pokémon GO と陰陽五行、アリストテレス、『マイ・エレメント』


Pokémon GO と「タイプ」

僕は従来ポケモンというゲームやアニメとは全く接点がなかったのですが、iPhone のゲームとして Pokémon GO が始まってからはずっとプレイしています。

下手糞ですが7年経ってもやり続けているということはそれなりに満足している証拠なんでしょうね(笑) でも、どうも気に入らないと言うか、しっくり来ないと言うか、違和感を感じていることはあるんです。

それはポケモンの「タイプ」です。

ご存知ない方のためにご説明いたしますと、それぞれのポケットモンスター(ポケモン)はいろいろなタイプに別れています。1つのポケモンが2つのタイプに属していることも珍しくありません。そのタイプとは、

ノーマル、ほのお、みず、でんき、くさ、こおり、かくとう、どく、じめん、ひこう、エスパー、むし、いわ、ゴースト、ドラゴン、あく、はがね、フェアリー

で、全部で 18 あります。

むしろ全くご存知ない方にお訊きしたいのですが、どうでしょう? なんか非常に場当たり的な印象がありませんか?

陰陽五行と四元素論

僕は、もう少しシステマティックな分類はできなかったのかなという気がしてなりません。基本の設定がもっと整理された、論理的な何かに繋がっていてくれたら説得力があったのになと思ってしまうのです。

整理された、論理的な何かって何かと言えば、例えばそれは中国の陰陽五行説とか、あるいは古代ギリシャのエンペドクレスアリストテレス四元素論とかです。

陰陽五行の「陰陽」のほうはとりあえず措いといて、「五行」説のほうを説明すると、全てのものは木・火・土・金・水のどれかの元素でできているということになっています。

この五行にそれぞれ兄と弟の2つをかけあわせたものが甲乙丙丁戊己庚辛壬癸の「十干」なんですよね。だから、甲乙丙丁…の訓読みはそれぞれ「きのえ」(木の兄)、「きのと」(木の弟)、「ひのえ」(火の兄)、「ひのと」(火の弟)…となります。

ちなみに「兄」を「え」と読ませるのは大化の改新の中大兄皇子(なかのおおえのおうじ、のちの天智天皇)と同じですね(「弟」を「と」と読ませる例は他に知りませんがw)。

アリストテレスで言うと、火・空気・水・土の四元素で、それぞれが「」と「」、「」と「湿」の対立する性質の組合せで構成されていて、火は熱/乾、空気は熱/湿、水は冷/湿、土は冷/乾ということになっています。

五行の話に戻ると、五行説には五行相生という考え方があって、木が燃えて火が生じ、燃え殻が固まって土になり、土から鉱物の金が現れ、金が腐食して水に帰り、水が木を育てるという循環があります。

また五行相剋という考え方もあって、水は火を消し、火は金を溶かし、金は木を削り、木は土を突き抜けて芽を出し、土は水を堰き止めるという、巨大なジャンケンのような、よくできた優劣強弱の関係があります。

どうです? かなりシステマティックだと思いません?

先人が構築したこういうしっかりした理論に、ポケモンは準拠していません。自由に考えたんでしょうね。それはそれで素晴らしいことです。でも整合性のある完結した世界を一から作り上げるって大変なことだと思うんですよね。

ポケモンの中の五行とそれ以外

ポケモンの中にも木火土金水のようなものは含まれています。木の代わりに「くさ」、火とは言わず「ほのお」、「金」ではなく「はがね」と呼び方は微妙に違っていたりはしますが…。で、土は何かと言うと、それらしきものとして「いわ」と「じめん」があるのですが、ゲームをプレイしていても外見からこのポケモンが「いわ」なのか「じめん」なのか却々憶えられないんですよね。

その辺りを詳しく述べる前に他のタイプについても見て行きましょう。

僕としては「でんき」が出てきたのはなんとなく分からないでもないんです。古代のギリシャや中国には電気という概念はまだなかったでしょうから。近代になって新たに出てきた元素であるという捉え方もできないではない気がします。

「エスパー」や「フェアリー」についても陰陽五行説や四元素論では語りきれない超常的な新要素であると捉えることもできないわけではありません。百歩譲ってそこについでに「ゴースト」を加えてもまあ良いでしょう。

しかし、「かくとう」とは何ですか? いきなり特技ですか? しかし、すべてのポケモンが「バトル」するので、まあ格闘とバトルは違うのかもしれませんが、なんか重複感ないですか?

さらに、言うに事欠いて「ノーマル」とは何ですか? じゃあ、他のポケモンは全てアブノーマルなの? ネーミングとしてはむしろノンタイプとかノンジャンルとか言うほうが適当ではないかと思うのですが、それ以前にどうして「ふつう」「何者でもない」というタイプを設定する必要があったのかがよく分かりません。

全体を眺めてみると、「くさ」とか「いわ」とか、体がその元素からできているという分類もあれば、火を吹くから「ほのお」、空を飛ぶから「ひこう」というような能力・特性による分類もあります。

上述した「じめん」は体の組成の話ではなくて、むしろ空を飛ぶ「ひこう」に対して「地を這うもの」というような位置づけなのかなとも思うのですが、しかし、フライゴンのように空を飛ぶのに「ひこう」ではなく「じめん/ドラゴン」みたいなのもいて非常に分かりにくいのです。

「みず」には水を使って攻撃するポケモンが多く含まれていますが、水棲動物は大体「みず」に分類されています。寒いところにいるポケモンは「こおり」だったりします。

しかし、「むし」はそのものズバリ虫じゃないですか。「ドラゴン」もドラゴンです。組成でも能力でも生息地でもありません。

そして、分かりにくいのは「あく」で、これは性格、ですかね? なんとなく悪そうなやつとしか言いようがないんです。もちろんそれが「あく」なのかどうかはひと目では分からないし、却々憶えられません。「あく」と「どく」が似ていたりもします。

ことほどさように分類の仕方、基準がバラバラなんですよ。そこのところが僕にはどうもスッキリしないのです。いや、基準が2つ以上あっても、例えば縦軸が組成、横軸が特性というように、きれいなマトリックスに集約されているならそれはそれで素晴らしいのですが、残念ながらそこまで体系的には見えないのです。

『マイ・エレメント』と『フィフス・エレメント』

今ディズニーの『マイ・エレメント』という劇場版アニメが公開されていますが、ここでは登場するキャラクターは全て火・水・土・風の4つのエレメント(元素)に所属していて、と言うか、体がその元素でできていて、火の女の子と水の男の子が恋をしたりする話のようです(観ていないけど)。

ポケモンと比べて一貫性があってスッキリしていると僕は思います。そして、この西洋のアニメは西洋の哲学者アリストテレスの四元素論に則っています(空気が風に変わっているけれど)。

そう言えば、昔『フィフス・エレメント』という映画がありました(リュック・ベッソン監督)。ここで言われているフィフス・エレメント、つまり「第5の元素」もアリストテレスの四元素論を踏まえていて、水・火・土・風に次ぐ元素を探す(実はそれが「愛」だった)という話です。

そんな風にこの四元素論が西洋の文化の底流をなしている感があります。ここには陰陽五行で言う「金」が欠けていますが、西洋的な考え方では金は土に含まれているものなのだそうです。

なんか深いと思いません?

もちろん陰陽五行説も四元素論も現代の科学には否定されてしまうものかもしれません。でもそこには確固たる文化と歴史が刻まれている気がします。ポケモンの背景にも、なんかそういう歴史的なものがあったら良かったのになあなどと思うのは僕だけなのでしょうか?

ポケモン同士の相性と強弱

さて、僕自身はポケモン同士の戦いよりもいろいろなポケモンの収集に興味の中心があるので、あまり積極的にバトルはして来なかったのですが、それでもトレーナー・レベルを上げて行く過程である程度のバトルも必要になって来ます。

ポケモン同士が戦うときには、どのタイプに属しているかが優劣に大きく影響して来るのですが、その強弱の関係がこれまた僕は憶えられなくて、非常に困っているのです。それはひとえに変なタイプを作ってしまったからだと言ったら愚痴になっちゃいますかね?

たとえば「みず」が「ほのお」に勝つのは分かります。これは陰陽五行と同じです。「ほのお」が「こおり」に強いのも、「くさ」が「みず」に勝つのも推測できます。

でも、「かくとう」と「いわ」だったらどうでしょう? 多分格闘家が岩を叩き割ってしまう──正解! では「かくとう」と「はがね」だったら? 如何に格闘家といえども鋼鉄には歯が立たないだろうと思うのですが、実は「かくとう」は「はがね」に勝つのです。

「じめん」は水を吸収するから「みず」より強いのかと言えばそうではなくて、地面を削って流れる「みず」の勝ちなのです(これは五行とは逆ですね)。

もうその辺で充分わけが分からなくなっているのに、そこに「あく」とか「むし」とか「ひこう」とか「ゴースト」とか「ノーマル」とかがぐちゃぐちゃに絡んでくると、もうさっぱり分からなくなります。

飛んで火に入る夏の虫」と言うから「むし」は「ほのお」に負けるとか、「一石二鳥」の喩え通り岩で飛行物体を落とせるから「いわ」は「ひこう」に勝つとか、皆さん工夫して憶えておられるようですが、どうにもこじつけようがないケースも少なくありません。

「こおり」が「ドラゴン」に勝つとか「エスパー」が「どく」に勝つとか「フェアリー」が「かくとう」より強いとか「いわ」が「ノーマル」より強いなんてのはもう丸暗記するしかないみたいです。「むし」が「あく」に勝つのは『仮面ライダー』を思い出せ!なんてアドバイスは冗談みたいな話ですよね。

それほどややこしいからこそ、それらが全部しっかり頭に入っているプレイヤが強いのだと言えば確かにその通りなんでしょうが、どうも僕にはストンと腑に落ちないのです。でも、それが気に食わないのでプレイするのを止めるということは決してないのですが(笑)

ポケモンが初めて登場した「ゲームボーイ」からポケモンを楽しんでいる人や、TVアニメをずっと観てきた人には何の抵抗感もないのかもしれませんが、ずっと「ことば」にこだわって「ことばのウェブ」なども運営し(現在は閉鎖)、論理的なものに常に魅力を感じてきた僕としては、どうにもしっくり来ないのがこのポケモンのタイプ分けなのです。

随分くだくだと書いてしまいましたが、さて、皆さんはどう思われますでしょうか?

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