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鬼一則

電通と言えば、昨今では非常に評判の悪い会社、と言うか、むしろ直接取引のない人たちがやたらと悪し様に言う会社のようにも思うのですが、少なくとも私の個人の体感としては、やはり飛び抜けた会社だと思っています。

もちろん、自殺者まで出てしまったような問題について安易に擁護したりはしませんが、私個人としては電通に鍛えられ、電通に仕事を教えてもらったという思いがあるのも確かです。

その電通には、かつての社長が作った有名な鬼十則という行動規範があります。ここでは全文を引用したりしませんので、気になる方は検索してみてください。すぐに見つかりますから。

まだ若かった私がそれを初めて読んで、ひっくり返るほど驚いた項目があります。それは十則のうちの6番目、

周囲を引きずり回せ

です。

私は正直「え? それはあかんやろ!?」と思いました。何故なら学生時代から社会人になりたての頃まで、私はひたすら周囲を引きずり回さないことを第一に生きてきたからです。

どんなに自分がひどい目に遭っても、最悪他人を巻き込んで迷惑を掛けることだけは避けなければならないと、そのことをいつもいつも、ずっと、とても気にして生きてきました。それなのに、私が一番避けてきたことが、仕事で心がけるべきことだと言うのです。

でも、仕事を続けて行くうちに、だんだんと解って来たのです。

確かに、考えてみたら、仕事というものは、どんな仕事であれ、初めから最後まで独りでやりきれるものではありません。むしろ、ひとりでも多くの人が手を貸してくれてこそ、良い仕事ができるのです。

最初から周囲を引きずり回すのが上品な作法か下品な作法かと言えば、やり方によってはかなり下品、と言うか、がさつな作法になるかもしれません。でも、この一則はその後こう続くのです:

引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。

窮地に陥ってから他人を巻き込むぐらいなら、最初から引きずり回したほうが良いに決まっています。引きずられる側にいてやる仕事もあるにはあるのですが、もしも自分のやろうとしていることが明確であるなら、下手に引きずることを控えていると、逆に意図しない方向に引きずられたりするものです。

かくして、この「周囲を引きずり回せ」という格言は、私の仕事人生のコペルニクス的転回となりました。いや、そんなに上手に引きずり回せたとも思っていませんし、いや、それ以前に、そんなに引きずり回せたとも思っていません。

でも、そんな経験をスタートとして、私はいろんなことを学び、いろんなことを覚えました。

例えば、自立している人間は適度に依存しているものだ、ということ。例えば、取引先の会社の若手を育てるのは重要な仕事のひとつであること。例えば、借りを作らないでおこうと必死になるのは馬鹿げているということ、等々。

ちょっと長くなったので、この続きはまた明日か明後日にでも書きますね。

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