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続々・気になる放送のことば

この間「ことばの変化に対してはすべからく寛容であるべきだと思っています」と書いたばかりですが、

とは言いながら、ことテレビとかラジオとか新聞とかに関して言えば、時々「その表現はおかしくないか?」と言いたくなることがあります。

それで、note にもこんなことを書きました:

一般人の話し言葉ならともかく、やっぱり公共のメディアには正確で理解しやすい表現を使ってほしいし、そのためには規範性の高い、つまり辞書に載っている意味から外れないことばを使ってほしいと思うのです。

そういう観点から言うと、テレビ局がバラエティ番組などでよく使うことばで、僕が気になって仕方がない表現がまだ2つありました。ここ 10年ぐらいのあいだに一気にフツーに使われ始めた表現です。

〇〇に挑戦

ひとつは「◯◯に挑戦」というやつ。

若い女性タレントが生まれて初めて何かをやってみるみたいな場面で、この表現はよく使われます。

でも、たかが作ったことのない料理を作ってみるとか、未経験のスポーツを体験するとか、そんな類のことに「挑戦」は大げさじゃないですか?

「挑戦」って、「いどむ」んですよ「戦い」ですよ。

「体験」とか「やってみた」じゃダメですかね? 「挑戦」という単語は本来はもっと難度が高かったり危険を伴ったりする行為に使うべきものなんじゃないかな、といつも思うのです。

どこそこに潜入

それからもうひとつは「どこそこに潜入」ってやつ。

調理場とか工場とか、一般客からは見えない裏側を取材したときによく使われる表現です。

でも、「潜入」って「こっそり忍び込む」という意味ですよ。夜中に鍵こじ開けて侵入したんですか? 違うでしょ?

ちゃんと取材許可取って撮影させてもらっているくせにどうしてそういうことばを使うのかな?

それらはいずれも、視聴者に対して少しでも刺激の強い表現をぶつけて煽ろうとしているんですよね。

そろそろそういうのやめませんかね? 昭和も平成も終わっちゃったわけですから。

ニュース番組では規範的なしゃべり方のできるアナウンサーを立てて公正中立な表現を目指しているくせに、バラエティ番組ではそんな言葉遣いしていて良いのか!? ── というところまで言う気はありません。テレビってそういうごった煮みたいな媒体ですから。

ただ、そんなことばを使ったって、もう今の視聴者はそんな簡単には釣られませんよ、と言いたいわけです。社としていろんなタイプの番宣をやってきて、その効果のほどもだいぶ掴んでいるはずじゃないですか。

そんなことばのインフレーションでは視聴者は釣られないということにそろそろ気づいてくださいよ。

一方、一般人のほうでもいつの間にか(と言うか、テレビの影響なのかもしれませんが)、何か新しいことをやるときに、テレビ番組と同じように軽率に「挑戦」なんて言うようになっちゃいましたしね。

昔ほどではないとは言え、テレビの影響力は依然として小さくないわけで、そのテレビで何かを言うときにはどういうワーディングにするのか、テレビ局はもっと慎重に考えてほしいなと、僕は及ばずながら社内で主張してきたつもりではありますが、退職しちゃって自分の声がもう社内に届かなくなった今、なおさらそんなことを思うのでありました。




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山本英治 AKA ほなね爺
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