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小説とかドラマとか映画とか

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他のマガジンに含めていた映画評や書評などを抜き出してここに独立させました。
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2022年2月の記事一覧

『愛なのに』 #映画感想文

映画『愛なのに』を観てきた。城定秀夫監督、今泉力哉脚本。 今泉力哉監督の『街の上で』を観た人なら記憶に残っているかもしれないが、あの映画で中田青渚が演じた衣装スタッフの役名が「城定イハ」で、彼女が自分の名前の漢字を説明するときに「映画監督の城定秀夫」を引き合いに出していた。 僕はあれを見て、「ははぁ、今泉力哉は城定秀夫のファンなのか。ひょっとしたらこれは今泉力哉から城定秀夫へのラブ・コールなのかもしれないな」と思った。 同じ年に公開された今泉監督作品『あの頃。』では脚本

『ノイズ』 #映画感想文

映画『ノイズ』を観てきた。廣木隆一監督。 相変わらず引き画が多い。 この監督はワンカットの長回しで知られる人で、この映画にもそういうシーンはふんだんにあったが、僕はいつもこの監督の力強い超ロングの構図が心に刺さる。そういうところにも注目してほしいなと思う(長回しで撮るからこそ引いた画も増えてくるのは確かだが) 。 予告編にも使われていた部分なので、ここまでは書いても良いと思うのだが、猪狩島で黒イチジクを育てている圭太(藤原竜也)と、その幼馴染で猟師をしながら時々圭太のい

『ちょっと思い出しただけ』 #映画感想文

映画『ちょっと思い出しただけ』を観てきた。松居大悟監督。 冒頭、高速道路、そこから見える東京タワー、雨、新宿の夜景に続いて、伊藤沙莉が白手袋を嵌めて車を運転しているシーンが来る。暫くして、彼女がタクシー運転手の役だと分かって僕は少し驚いた。 この映画は、松井監督と長らく交流のあるクリープハイプの尾崎世界観が、自身のオールタイム・ベスト映画だと思っている、ジム・ジャームッシュ監督の『ナイト・オン・ザ・プラネット』に着想を得て書いた新曲『ナイトオンザプラネット』を聴いた松井監

邦画:私の「掘り出しモノ賞」2012-2021

twitter ベースの映画賞である coco賞の投票部門のひとつだった「掘り出しモノ賞」を選ぶのが楽しかったので、coco賞がなくなってからも選び続けることにして、以来ずっとブログに書いてきました。 この記事は去年も note に書きましたが、毎年新しい記事で更新(前年度分を追記)してアップすることにします。 選んでいる基準は年によって、映画によって微妙に違います。 共通しているのは、大作かインディーズか、映画がヒットしたかしていないかにはあまり関係がないということ。

『さがす』 #映画感想文

映画『さがす』を観てきた。片山慎三監督。 知らない監督だなと思ってスルーしていたのだが、映画の評判が良いのでもう一度調べてみたら、『岬の兄妹』の監督だということに気づいて慌てて見に行った次第。 『岬の兄妹』はえげつない映画だった。極度の貧困から知的障碍の妹に売春をさせる(そして自分はその女衒となる)物語だった。胸塞ぐストーリーなのに、時々おかしく、そして何よりも構図が素晴らしく、画に力のある監督だった。 自分のブログで「次回作も断然観たい」と書いておきながら、危うく見逃