見出し画像

イヌに最も近縁なオオカミは「ニホンオオカミ」!

 3月17日の朝日新聞デジタルに、「すべてのイヌはニホンオオカミの祖先から誕生? 遺伝情報で迫る起源」という記事が出ています。この記事の元ネタは、nature communicationsに掲載された”Japanese wolves are most closely related to dogs and share DNA with East Eurasian dogs”という論文です。この研究は、総合研究大学院大岐阜大アニコム先進医療研究所株式会社などの研究チームによって行われたため、それぞれからもこの研究の概要をまとめたものが公表されています。

 国内に残る江戸時代や明治時代のニホンオオカミ6標本と、オランダとドイツの博物館に保管されていた3頭の計9個体の標本と、日本犬11個体からDNAを抽出してゲノムを解析したところ、主に

1.ニホンオオカミは、遺伝的に他のオオカミとは異なる単一起源の独自のグ
 ループであること。
2.ニホンオオカミは、イヌのグループに最も遺伝的に近縁なオオカミである
 こと。このことからイヌのグループは東アジア起源だと推定されました。
3.ユーラシア大陸の東側のイヌのゲノムには、ニホンオオカミの祖先のゲノ
 ムが含まれていること。なお日本犬のゲノムにもニホンオオカミの祖先の
 ゲノムが2~4%含まれています。

ということが明らかになったということです。
 なかでも最も注目されるのが、2番の「ニホンオオカミはイヌのグループに最も遺伝的に近縁」で、「イヌのグループは東アジア起源だと推定」されるという点です。
 イヌの起源は複雑で、従来からいろいろと言われてきましたが、今回の結果は、イヌの東アジア起源説を裏付けるような成果なわけです。

 また、シーボルトが残したオランダ・ライデンの自然史博物館所蔵のオオカミとされる3つの標本のうち、Jentink aは犬と同定されていますが、Jentink bはオオカミ、Jentink cはヤマイヌとされて、ヤマイヌとは何かが問題となっていましたが、Jentink bはニホンオオカミであり、ヤマイヌ(Jentink c)はニホンオオカミとイヌの交雑個体であることが明らかになりました。つまり、少なくとも江戸時代には日本列島にニホンオオカミとイヌの交雑個体がいたことになります。

 今回の結果は、チームを率いた総研大の寺井洋平准教授が「絶滅したオオカミのゲノムをここまで大規模に解読した分析はほかになく、イヌの進化の歴史を塗り替える価値がある」と述べているように、非常に成果であり、絶滅してしまっているとは言え、ニホンオオカミが非常に重要な存在であることが明らかになりました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?