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観劇記録、廃材・楽器・舞踏、即興

前回の番外公演から、次の本公演でもお世話になる、冷泉荘での観劇。

captureはギターやサックス、自動演奏システムを使った即興演奏、
サウンド・リノベーション・バンドは、冷泉荘管理人の杉山さんもメンバーである「廃材」を使った楽器の演奏、
そしてマツオカリョウコさんは舞踏、
この二団体と一人が組んで、三つの作品を作っていた。

会場は現在期間限定で空き部屋になっている冷泉荘の地下で、もうすぐ新しい入居者が来るらしく、「特設会場」として使われていた。
1階のレンタルスペースと違い床はコンクリート打ちっぱなしで、言ってしまえば、汚い、でも僕が好きな雰囲気がある白い壁の部屋だった。

部屋中には「廃材」で組み立てられた楽器のような奇妙な装置が壁際に並べられていて、譜面台が4つ。部屋の壁の角に、長方形(後で数字のゼロと分かる)がプロジェクターで投影されていた。
元々廃材やら廃墟やらガラクタ好きな僕はこれでもうワクワクしてくる。どんな音が鳴るのだろうか。

最初の演奏は、サウンド・リノベーション・バンドの4人の廃材演奏と、舞踏のコラボ。壁に投影されていた映像はカウントダウンを始め、演奏者の1人がストップウォッチを押し、映像が0:00から時を刻み始める。
と、5人は各々「演奏」を始める。

舞踏、といっても、振り付けのあるダンスのようなものではなく、壁際で少しずつ身体を曲げたり、足を鳴らしたり、息を吹いたり、場所を移動したり、奇妙なもので、途中で、あぁこの人も曲を演奏をしているのだ、と気づいた。

後で聞くと、これはJohn Cageという現代音楽家の「four 6」という曲で、曲の何分から何分まではこの番号の音を鳴らせ、といった指示が「楽譜」に書いてあるらしい。廃材から鳴らされる音は、弦が震えて楽器のような音になることもあれば、ほとんどはブーンとかカンカンガンガン、カタカタ、といった、環境音のような音。

なんとなくいつか映画で見た東南アジアかどこかのマーケットの風景が見えてくるような、あるいは昔住んでた町の工場から聞こえてきた何をしてるのか分からない音のような、懐かしいような響きだった。

2番手はcaptureと舞踏。
これはおそらく完全に即興で、サックス?だったりアコギだったり鍵盤ハーモニカだったり自動演奏システムだったりぎゃんぎゃんにエフェクトをかけたエレキギターだったり、不思議な音が重なり合って、そしてマツオカさんが「ドア」を持ち、少しずつ、少しずつ、動いていく。

曲が激しくなったり静かになったり、色んな音色が混ざり合う中で、マツオカさんはそれに合わせているような合わせていないような、無理に抗いもせず、かといって流されもしない、ただただ「聞いている」ように見えた。僕はそれをただただ「見て」いた。

あと、アコギってあんな音が鳴るんだ、と、びっくりしたことも。

最後はこれら全てが混ざりあった作品。
まずはcaptureの即興演奏。
舞台端からマツオカさんが、車のタイヤのホイールを転がしてくる。転がしては戻しを繰り返して、舞台中央まできたところで、サウンド・リノベーション・バンドの人がホイールの動きを邪魔するように廃材を置く。するとホイールは新たな音を出して向きを変え、マツオカさんもそれに従って動く。その繰り返し。

廃材はマツオカさんを巻き込み、ガシャガシャと音を立て、captureは即興演奏を続け、天井から下がった紐が絡みつき、音と廃材に取り込まれていくような…

と、音が止んだ。
暗転。
完全に、全ての音が消えたところで、明かりがつき、終演。

素晴らしい舞台だった。
マツオカさんは身にふりかかる全てを受け入れ、そして現象を引き起こし、僕達が目撃する。
大げさなことを言えば、ヒトのあるべき姿を、幸福論を見た気がする。

これも杉山さんから解説を後で聞くと、舞踏者の周りの人は「邪魔をする」という行為を請け負っていて、その「ハプニング」を受けて何が起きるか、という実験音楽だったらしい。あー面白い!

演劇でも僕や、もっと進んだ人達がやっていることで、「役者に負荷をかける」というのがある。
現代音楽は、例えばそのJohn Cageの「4分33秒」という「無音の曲」だったり、かなり洗練されているところまで究められていて、しかしまだ発見されていないことも多いのかもしれない。

演劇も今、どんどん新しいことが発見されて、全国で様々な小劇団がそれを究めている。
言わずと知れた青年団しかり、僕が観たくてもなかなか観れないマームとジプシーしかり、チェルフィッチュしかり、五反田団しかり、これは以前観た、そして今度観るハイバイしかり…

自分が何をどこまでできるのか、近頃はそればかり模索しているのである。

まずは2月の「pump」
何を見つけられるだろうか。

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