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文化部系トランスが、いきなり筋トレ始めたはなし

生まれてこのかたずっと文化部を貫いてきた私が、パーソナルジムに入会した。
ジムに通ってはプロテインを飲む姿に「新しいワタシ、デビューだね」といじられたりもするけれど、実はそんなにキラキラもしていない。
文化部系トランスジェンダーの私がいきなり筋トレを始めた背景には、「胸オペをしたけど、やっぱり自分の身体を好きになれない」ことが理由として大きい。

トランスジェンダーである私は、小学校高学年から胸が少しずつ膨らむのと比例し、絶望も少しずつ膨れあがっていった。
お小遣いで粘着性が高い包帯を買って巻いてみるも粘着力が足りずすぐほどけてしまったり(そりゃそうだ)、その上からガムテープ巻いて汗疹になったり(そりゃそうだ)。
鏡の前で胸が目立たない猫背の姿勢を練習したり、胸の膨らみが目立ってしまうからと愛用していた斜めがけバックを持たなくなったり、高校からはトラシャツ(胸をつぶすタンクトップ)を1日中着用し、心身ともに息苦しい記憶が多い。

10代の頃は、親の同意なく手術ができる年齢になったらすぐに胸を平らにする手術(胸オペ)をしようと心に決めていたが、金銭的やその他さまざまな理由から、実際に胸オペをしたのは昨年12月だった。

胸オペから半年が経過し、正直体調はまだ悪い。手術前より疲れやすくなり、胸の麻痺や鈍痛も続いている。
一方で、小学生の頃から胸を目立たぬようにと努めて猫背にしていた背中を伸ばして歩けるようになったり、Tシャツ1枚で外出できるようになったりと、精神的にはだいぶ軽やかになった。

しかし、胸オペして一番わかったことは、「胸オペしても身体違和がなくなるわけではないんだなあ」ということだった。
乳首の形が変なんじゃないか、少し残った胸の脂肪や逆に少しへこんでしまった部分が変なんじゃないか、上半身裸になったらバレるのではないか、もしかしたら服の上からでもわかるのではないかと、ふと不安を感じるときもある。

数年前にホルモン投与を始めた際も、やっぱり自分の身体は好きになれなかった。胸オペをしたら身体違和がなくなるかなと思ったけれど、やっぱりそうではなかった。その経験のなかで、自分の身体を嫌いだと思う気持ちを(あくまで私は)医学的な処置で軽減はできても、なくすことはないんだなあとわかったからこそ、他の方法でどこまで軽減できるのだろうかと、筋トレを始めてみた。

胸筋が少しだけ増えたことが嬉しくて、シャワーを浴びるときに鏡にうつる自分の姿にニヤっとしている自分に気づいて、鏡に映った自分の姿を嬉しく眺めることなんて人生で初めてだなあと、それにさえ嬉しくなったりする。

「嫌いである自分の身体に、時間と気持ちとお金を投資する」という決断はどこへつながっていくのだろうか。自己肯定は、継続的な努力の上に成り立つことはできるのだろうか。そんなことを考えながら、半年間筋トレに励んでみようかなと。

ちなみに余談だけど、パーソナルジムにしたのは、トランスジェンダーであることで入会を断れる可能性が低いと考えたから。また、今の事務にした理由は見学の際に「トランスジェンダーなんです」と言ったら「友人にもいます」と"ふつうに"返されたから。
トランスジェンダーの人にとってスポーツへのアクセスハードルはまだ高いからこそ、そう言ってくれるトレーナーとの出会いに感謝するとともに、誰にとってもスポーツへのアクセスも、それを通じた自己肯定の機会も、あるといいなと思っています。

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