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「時間の切り取り」 と 「時間の解放」

こん○○は。
作り手の想いにストーリーという名の翼を授ける「ストーリービデオグラファー」藤堂八雲がつづる、今日の雑感。


今日は、「写真と映像の違い」について。

長らく写真を撮ってきたのち、映像作家になった立場として、僕なりの解釈を語りたいと思う。

写真家(フォトグラファー)と映像作家(ヴィデオグラファー)は、根本的に異なる表現コンセプトや視点を持っている。

僕が映像作家として大切にしている「ストーリー」の観点から見ると、写真と映像には大きな違いがあるのは皆さんもおわかりだろう。
あらためて、具体的な例で解説してみたい。


写真は、一瞬を切り取る力強さや美しさを伝える媒体だ。

写真家は、瞬間の魅力や被写体の表現に焦点を当て、そこに自身の感性や視点を反映させようとする。
ポートレート写真家であれば、被写体の表情や人物像を一瞬の中に凝縮し、感情や個性を伝えることにフォーカスする。


一方、映像はどうか。
当たり前だが、映像は「時間」という要素を持つ。

つまり、写真と違って、動きや流れを伝えることができる。つまり、被写体や主人公のメッセージや「ストーリー」を、視覚(映像そのもの)と、聴覚(音声やナレーション、BGM、効果音など)を複合的に組み合わせて展開し、観る者へ印象を与えることができる媒体だ。

たとえば、ドキュメンタリー映像では、主人公の「声」や「ストーリー」を通じ、社会問題を浮き彫りにし、視聴者の心に訴えかける。

そのために、映像作家は、被写体や主人公のメッセージを正確に捉えて理解し、映像化することが重要になる。
当然、そのためのインタビュー技術や撮影技術、編集テクニックやサウンドデザインが求められるということだ。



ここで、読者のみなさんにイメージしやすい例になるかどうかわからないが、写真家と映像作家の対比として、僕の敬愛する偉大な写真家、スティーブ・マッカリーと、ドキュメンタリー映像作家の巨匠、フレデリック・ワイズマンを紹介したい。

ちなみに余談だが、スティーブは、不思議なことに私と逆の方向で写真家になった経歴を持つ。
どういうことかというと、彼は映画製作を学ぼうと大学に入ったが、卒業後に新聞社で写真を撮るようになったことがきっかけでその魅力に惹き込まれ、フリーランスとして写真家になった。
「写真から映像」である僕とは逆の、「映像から写真」という流れで写真家になったのだ。

彼の最も有名な写真は、間違いなくこれだろう。

アフガンの少女

参照元


「アフガンの少女」と名付けられたこの写真。
1985年6月に創刊125周年を迎えた『ナショナルジオグラフィック』の表紙になり世界中の人の目に留まった。

一瞬を切り取るその中にも、スティーブの生き様や、被写体への思いなど、様々なストーリーを想起させる、そんな偉大な写真家の一人である。


さて、「現存する最も偉大なドキュメンタリー作家」と称されるフレデリック・ワイズマンも、弁護士→大学の先生→映像作家という、非常に興味深い経歴の持ち主であるが、彼の作品に色濃く出るメッセージ性は、彼の過去から形成されているのだろうと強く感じる。

wikiにもある通り、数々の受賞歴がある彼は、活動開始当初、日常の身近な存在に徹底的に密着し、それまで知られていなかったアメリカの実態や実像を描き出す、いわゆる社会的なテーマで、人々の心に残る映像作品を数多く作った。

「世の中に埋もれてしまっている素晴らしいものを人々に伝えたい」という僕の映像制作の原点と重なるところも多く、非常に影響を受けた。

彼はその後も様々なテーマや表現手法で、人々の心に響く作品を作り続けているが、声高にメッセージを叫ぶという感じではない、プロパガンダになり切らないようにしているところが彼らしいし素晴らしいなと、尊敬している。



ということで、代表的な写真家と映像作家をそれぞれ挙げてみたわけだが、アプローチはまったく違えど、両者ともそれぞれのメディアの特性を活かし、被写体や主体者のメッセージを伝える役割を完遂している。


写真は一瞬の美しさや情感を捉える力強さがあり、写真家の感性や視点が非常に重要だ。

一方、映像は時間の要素を持ち、ストーリーの力で感動や示唆を引き出すことができる。

そのために映像作家は、被写体や主体者との深いコミュニケーションを通じて、いかにメッセージを正確に伝えられるかを極めなければならないという点が、写真と大きく異なる点だろう。


僕が写真ではなく、映像の道に進もうと思った理由は色々あるが、長きにわたって人材採用にかかわってきたことがとても大きいのだな、とあらためて気づかされた。


この人ってどんな人なんだろう?
どんな考え方や生き方をしたら、こうなれるんだろう?
もっとこの人のことを知りたい!
そして、もっとたくさんの人に、この人のことを知ってもらいたい!


人材の採用に携わりながら、たくさんの人との面談を通じてそんなことを思ってやってきたわけだが、それと同じことを「映像作家」という立場で、同じ気持ちでやっているだけなのだなと。
写真だと、それを徹底的にやることができないから、映像なんだなと。


やっぱり人生、起こることはすべてつながってるね。
さて、今日はどんなことが起こるのかな😊

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