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日本一無名な島根が異世界に行ったら世界一有名になった話 7

岩本の言葉を受けて、寺山は議事堂で起こった出来事を思い出した。

「通信が取れない、というのはインターネットなどがつながらないということですか?」
「はい、インターネットもつながりません。それどころか、固定回線の電話も衛星通信も、災害用の非常連絡網もすべて外部との通信が出来なくなっているのです」
「災害用のやつも…ですか」

ネット回線が不調でサイトが見られないことは日常生活の中でも起こりうる。
それは地震など災害時ならなおさらだ。
そこまでなら寺山も理解できる。

だが固定電話や衛星通信、ましてや災害用の通信網が全て同時に途絶することなど前例がない。
にわかには信じられない話を聞いて、寺山は口元をゆがめる。

「通信が取れなくなったのは地震が発生してから、ということですよね?」
「そうです、少なくとも地震が発生する前、各通信網に異常は見られませんでした。しかし地震発生直後から突如として一切の通信ができなくなりました」
「通信設備が地震によって破壊されたという可能性はありませんか?アンテナが破損したり、ケーブルが断線したりした結果このような事態になったということでは?」
「もちろんその可能性も考えています。そのため各職員で設備に異常がないか確かめているのですが、現状特に問題は見つからず何が原因なのかわからない状況です」

岩本の苦々しい表情から、この事態に対してお手上げ状態であるということが伝わってくる。
寺山がふと顔を上げると、多くの職員が通信網を復旧させようと業務にあたっていた。
にもかかわらず状況はまったく好転していない模様。
それゆえ寺山の脳裏に想像もしたくないことがよぎる。

「それだけ通信に影響が出ているということは、とてつもない規模の地震が起きている…ということでしょうか?」

全ての通信が途絶するという異常事態において沸き上がる当然の疑問。
島根を取り巻く周囲に甚大な被害が出るような地震だったのではと寺山は邪推してしまう。

「確かに、その可能性もないとは言えません。情報が入ってこない以上憶測にすぎませんがね。ただいくら大きな地震でも外部と全く連絡が取れないというのは不自然すぎるんです。
被災地との連絡が取れないのはまだ分かります。通信設備の故障やパンクによって途絶したりしますから。でもあらゆる通信手段を用いてもどこともつながらないというのは説明が出来ません。周辺の県や日本政府、外国にまで通信の範囲を広げていますが、一向に連絡がつかないんです」
「外国とも連絡がとれないんですか?」
「はい。まったく取れない状況です」

災害を想定して信頼性の高い通信環境を提供するはずの災害用通信網が一切使用できないという事態。
日本国内だけでなく海外とも交信できないという状況がいかに深刻なのか、二人だけでなくこの部屋にいる全員がひしひしと感じていた。


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