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独居の高齢者

男性とか女性とか言うのは社会的に良くないのだろうが、不適切時代の昭和世代の言動として、ある程度のお目こぼしを願いたい。最近は男性でも40代から毛染めをするらしいが、私が生まれて初めて髪を染めたのは61歳を過ぎてからだった。

61歳になったとき「死ぬ前に一度くらい髪を染めても良いかな」と思ってやってみたのだが、もう一つの理由として毛染め専門の店が多く出回るようになり、手ごろな価格で出来ることを知ったことも、体験してみようの気持ちを押した。

かと思えば、世の中には毛染めなど必要のない「歳を取っても全く白髪が無い」人もいる。50代で白髪が一本もない人は個人的に結構知っているが、そんな中で一番凄いと思った人が80代の独居お爺さんで、見事に白髪が一本もなく、薄毛もなく、フサフサとした黒髪の高齢者に会った時だった。

私は独立後一時期、興味を持ってバイト感覚で「訪問介護の仕事」をしていた事があり、その利用者さんの男性が黒髪だったのだ。訪問介護サービスを受けているくらいなので自分で髪を染めるなどなく、かつフサフサの黒髪は羨ましいくらいであった。

私は週末だけ訪問介護に入っていたが、朝食を作って、洗濯をして、投薬介助をしていた。認知症ではあったが会話のやりとりに問題はなく、毎回楽しく仕事をさせて貰っていた。家具職人が仕事だったとのことで、自分の持ち家に住んでいたが、生涯独身だったようで「俺も一度くらい結婚しても良かったのかなぁ~」と良く言っていた。

そんなとき私は、「今からでも遅くないのでは?」と返し、「まだ歩けるのだから、少しは社交場にも出てみたらどうですか?」などと介護をしながら言ったりしていた。トイレが自分で出来る人だったので、その点は楽であった。

黒髪だとやはり若く見える。そのお爺さんは肌艶も良かったので80代に見えないのは当然ながら、70代にも見えなかったくらいだった(年齢不詳に見えた)。認知症であってもBPSDの類はあまりなく、気性的にも穏やかでお話もちゃんと出来ていたが、家族はおらず、親族とも疎遠だったので認知症が悪化し始めたのを契機に特養に移って貰い、同時に私の訪問介護の担当も外れた。

介護仕事は3年間くらいしか経験がないが、訪問介護で7ケースくらい並行してやってきた。独居高齢者はこの黒髪のお爺さん以外に数件、あとは身体障碍者の壮年の人、施設で共同生活をしている人の通院介助、老夫婦で自宅で過ごしている人が数件などであり、独居高齢者の訪問介護をしていると色々なケースがあることを実感している。

「誰もが望んで独居高齢者になったわけではない」ので、子供や家族やましてや親族がアテにならない(逆に阻害要因になるケースもある!)ことで必要な社会的擁護はもっと満たして欲しいと思う次第である。
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【記】やく・たたず(屋久 佇(竚))

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