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realisticなバレンタイン

私は女子校に長く通っていたこともあり、2月14日といえば友チョコ大交換会ぐらいしか記憶に無いな、と思っていたのだが、よくよく振り返ってみると小っ恥ずかしいバレンタインエピソードを1つ思い出してしまったのでここで成仏して頂こうと思う。

私には幼馴染がいる。彼とは同じ幼稚園に通っていたため当時はそこそこ仲は良かったが、正直なところ母親同士の方が仲が良い気がする。私の母は超恋愛体質で何でも恋愛に繋げようとするきらいがあり、そんな母からすれば男女の幼馴染などまるで少女漫画の様な理想的な設定であり、ここぞとばかりにくっつけさせようとしていた。母は「2人はいつか結婚すると思うのよ」と何かにつけてそうこぼしていた。そんな母が格段に色めき立っていたのがバレンタインというイベントである。小学校低学年のうちは友情と恋愛の好きの違いもよく分かっていなかったので言われるがままにチョコレートを渡していたが、小学3年生の私は恋心すらわからなかったが、恋愛についてどこか気恥ずかしい様なむしろ嫌悪の様なものを抱えていたため今年はチョコレートを渡したく無いとごねたのである。怒られるかな、と思ったが寧ろ今年が最後でいいからと悲しそうな表情を浮かべて言うものだから断るのが申し訳なくなってしまい、泣く泣くチョコレート菓子を作り、やっとの思いで彼の家の前まで向かった。すると途端に怒りの様な感情が込み上げた。なんでこんなことをしなくてはならないのか、私はせっかく作ったチョコレートを半ば投げつけるかの様な形で手渡すと、吐き捨てるかのように「義理だから!」とだけ言って乗ってきた自転車を全速力で飛ばした。走り出してから自分の稚気溢れた言動の全てが逆効果になっている気がしたり、私にチョコレートをもらう彼の迷惑というものを一度も考えなかったことなど、どうにもこうにも恥ずかしい気持ちになり今にも泣き出しそうなのを堪えようと鬼の様な形相で家に帰ったことを記憶している。

今はただ、彼がこの一連の出来事を忘れていますようにと願うばかりである。

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