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化蟹ザムザと忘年の城

ザムザは夜の生き物だ。
ザムザは暗い水の底を住む。
ザムザは星を眺めて暮らす。
ザムザは静かに思い出す。
湖を臨むその古城がまだ古城でなかった時代のことだ。

「我はロックス。城下を騒がす怪物の正体は貴様であろう化蟹よ。この私が討ち取ってくれよう。覚悟せよ」
その男は、武勲を立てることで騎士になるべくあらゆる機会を探し求めて生きてきたのだが、
「貴様のような男な
「ぬっなっ蟹が喋ったうわああああ!!」
「おい待て」
なんだこいつは、とザムザは思った。

それからも幾度となく男は現れた。大きな鋏で脅かしてやると男はすぐにいなくなった。そして性懲りもなくまた現れるのであった。

「いい加減にしろ」
「黙れ化蟹め!必ず!必ず貴様を成敗してくれる!」
「やってみろ。ほれ!ほれ!」
「うああああああ」

こんなどうしようもない男のために、どうしてザムザはあんなことをしようと思い立ったのか。それを確かめるために今日も続きを思い出そうとする。

【続く】

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