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再会した彼は予想外のポジションへ登りつめていた③

3 転機と城での仕事

 早いもので国立学園に入学して、丸5年が経つ。
 今晩は、恒例の新入生の歓迎パーティだ。
 学園生活も残すところあと1年。卒業後の生き方をそろそろ決めねばならない。

 この5年間で、学園の変革はだいぶ進んだ。
 平民生徒数は1割を占め、今では貴族生徒との大きな軋轢もなく、皆わりと平和に学んでいる。

 私以外にも、各学年毎に貴族籍の生徒が数名、平民生徒のお世話係に任命されている。お世話係は定期的に集まり、お悩み相談や情報交換を行っている。
 私が卒業した後も、この形が引き継がれていくだろう。

 アドラー王とは、年に2回、新入生歓迎パーティと王城へ出向いての報告時に会っている。
 二人きりで会う事など勿論ない。常に誰かと一緒で、しかも短時間だ。
 なので、結局アドラー王がアルなのかどうかは、未だに確認出来ずにいる。

 彼はまだ結婚どころか、婚約者も決めておらず、その為定期的に噂が流れる。
 どこそこ家の令嬢が有力だとか、ついに王がお心を決めたらしいだとか。私もあれからも何度か、有力婚約者候補だと噂された。
 時に、別の話も聞こえてくる。
 王は女性がお嫌いだとか、男性がお好きだとか、実は鷲の盾のなかに、愛するお相手がいるだとか。

 王家の血筋を残すのは、王族の義務とされている。 
 そんななか、アドラー王は我関せずと涼しい顔で、様々な誘いや早く結婚すべきだという進言ををかわしている。

 正直、彼が結婚しないでいる事に、私はホッとしている。
 特に、恋愛感情を抱いているわけではない。しかし、彼はアルかもしれないのだ。
 あの私の天使が、アドラー王なのかどうかをはっきりするまでは、このまま一人でいてほしいと願ってしまう。

 そして、結婚・婚約問題は、他人事ではない。
 私は子供の頃に、自身の結婚の権利を父から手に入れていたので良かったが、あれがなければ、とっくに誰かと婚約されられていただろう。
 実際、学園の貴族の学友達は、ほとんどが婚約済みだ。

 例の契約書があるので、父は直接は何も言ってこない。だか、バアヤをはじめ親族やめったにでない夜会で会うお世話好きな御婦人方の、早く婚約者を決めろという圧は、ものすごく強い。
 私にサラディナーサの記憶がなければ、その圧に押し潰され、とっくにすすめられた誰かと婚約しているだろう。

「準備はできたのかい?」
「はい、お父様。いかがでしょうか?」
「今日は、いつも以上に輝いているよ。本当に美しい。でも、今日も青系のドレスなんだね」
「有難うございます、お父様。青はわたくしのお気に入りの色ですもの」
「一度くらい華やかな色のドレス姿の君を見たかったな」
「本当にもったいのうございます。ルイーサ様は赤やピンク、黄色等の艶やかなドレスを着れば、そのお美しさがより引き立つでしょうに。どんな殿方でも、すぐに」
「バアヤ、何度も言うけれど、わたくしは青が好きなの。落ち着くのよ」
「ああ、もったい、もったいない」

 バアヤの嘆きを背中で聞きながら、屋敷を後にした。
 学園での最後の新入生歓迎パーティだと思うと、感慨深い。

 何だかんだと、この学舎で多くの事を学び、良き仲間を得ることが出来た。

ーーーー後は、身の振り方を考えないとね。女性でも働ける方法を探さなくては。

「ルイーサ様、お待ちしておりましたわ」
「ルイーサ様、今日のドレスも素敵ですわね」
「実は、わたくしもルイーサ様の真似をして、青系のドレスを新調しましたの」

 会場につくと、友人達が話しかけてきた。その内のひとりは、確かに淡い水色のドレスを着ていた。

「……驚きましたわ……。アリアンヌ様……とても、良くお似合いですわ」
「本当に? ルイーサ様にそうおっしゃって頂き、わたくし、とても嬉しゅうございます」

 淡い色とはいえ、青系のドレスをつくるのは、勇気がいっただろう。保守的な家門であれば、あちこちから、女性らしくピンクや赤とドレスを着るべきだと非難がとんでくる筈だ。
 彼女は、自身の意思を周りに示し、それを押し通す力を身につけた。

 彼女が自立した女性を目指しているのかどうかは、わからない。ただ、私は仲間を得たように嬉しく感じた。

「アリアンヌ様は、お強いのですね。わたくし、アリアンヌ様を尊敬いたしますわ」
「いえ、ルイーサ様のお陰です。わたくし、昔から青色への憧れがありましたが、青は男性の色だと言われて言い出せませんでしたの。ルイーサ様がいつも青色のドレスをお召しになっているのを拝見し、勇気をいただいたのですわ。有難うございます」
「アリアンヌ様もルイーサ様も素敵ですわ」
「本当に! わたくしも見習いたいと思いますわ」
「ええ、わたくしも」

 そこへ、王の来場を知らせる声が響いた。

「アドラー王のご入場、アドラー王のご入場」

 シーンとした広間に、カツカツカツと勢いのよい靴の音が響く。

「皆、顔を上げてくれ。新入生の諸君、入学を心から祝う。私は国王のアドラーだ。一言祝いの言葉を述べさせてくれ。この学びの場は、誰もが平等切磋琢磨し学ぶ為の場だ。貴族や平民という身分にとらわれず、各自誇りと思いやりを持ち、助け合いながら成長するよう願っている。また、まだまだ不安を感じる平民の生徒もいるだろう。世話係が君たちの相談にのるので、安心してくれ。そして、この場で発表する事がある」

 ますます貫禄がでてきたようにみえるアドラー王を、皆が注視する。と、彼がこちらを見た。
 目があったまま、彼はこう続ける。

「私の代では、王城には武人しか働く事を認めていなかった。そこで、あらたに文官を募集する事にした。こちらが用意する試験を受け、合格した者を雇う。身分、性別は問わない。希望者は申し出てくれ。能力、やる気がある女性も歓迎する」

 この衝撃的な発言に、保護者達から悲鳴があがった。

「身分をとわない、つまり平民を王城で雇うというのか?」
「まさか! 貴族と平民が同じ試験を受けるのか?」
「女性も歓迎とおっしゃったぞ」
「貴族の子息が、平民の女と同じ条件で競うなどと、そんな馬鹿げたことがあってよいのかしら」

 聞こえてくるのは、貴族からの非難と戸惑いの声。この学園に通う貴族は、比較的柔軟な思考の持主が多い。それでも、だ。 
 それでも、身分の違う平民と自分たちの息子が、同じ土俵でふるいにかけられるのは、到底受け入れられるものではない。

 しかも、アドラー王は、能力とやる気があれば、女性でも歓迎すると言ったのだ。

 それを聞き、私の身体は震えた。心の奥底から湧き上がるような、喜び、恐れ、興奮が、エネルギーとなり、私の全身を駆け巡るかのような、感動。

 王城での公職に、女性でも就くことができる、夢のような道が開かれた。
 その事実に、私は叫びだしたい位のショックを受けた。
 気がつけば、私はアドラー王の前まで足を進め、礼をとっていた。

「アドラー国王様。わたくし、ドゥルメール侯爵の娘、ルイーサ・ドゥル・ディノス・マリアン・ドゥルメールは、その文官試験を受けたく存じます。お許しいただけますか?」
「おお、ルイーサ嬢。許す。ぜひ、試験を受けにきてくれ」
「有り難く存じます」

 先手必勝。周囲から反対される前に、皆の前でアドラー王から許しを得れば、誰も文句は言えまい。
 私は、頬が緩むのを堪えられなかった。

 ザワザワと周囲の戸惑いの声が大きくなる。
 父も、きっと私の行動に呆然としているだろう。

 ふと、横に級友のローレライが並んだ。緊張した面持ちで私の顔を見て、それから王へ頭を下げた。

「アドラー国王様。ローレライ・アイシャ・タンです。平民ですが、私も文官試験を受ける事ができますか?」
「勿論だ、ローレライ嬢。ぜひ試験を受けてくれ。言ったように、身分、性別はとわない。他にも城での勤務を希望するものは、学園長まで申し出てくれ。新しい時代を担う新しい人材が集まることを、楽しみにまっている。話は以上だ。皆、この後はパーティを楽しんでくれ」

 アドラー王はそう言って、サッと広間を後にした。
 私とローレライは、しばらく王の背中を目で追い、そしてお互に顔を見合わせた。

「……ルイーサ様……、私。平民の私が、王城で働くチャンスを頂けるなんて、夢みたいです」
「ローレライ、わたくしも同じ気持ちよ。貴族の娘の仕事は、政略結婚の道具になること。それ以外に、女性が自分の意志で仕事を選ぶ道はなかった。わたくしは絶対に文官になるわ」
「わ、私もです! どんな難問でも、頑張って必ず試験に合格します!」

 勇気がある、すごい挑戦ですねという感嘆から、貴族令嬢が働くなどととんでもない、辞退なされよ、家門の恥になる、等の非難と脅しらしきものまで、様々な人間の色々声がきこえてきたが、全く気にはならなかった。

 なぜなら、私は国王の許しを得ているのだから。

 父侯爵は困った顔で、ルイーサは働く必要はないんだけどな、と弱々しく伝えてきた。

「お父様、わたくしは働きたいのです。自分の能力を活かし、自分でお金を稼ぎ、男性に依存せずとも生きていける道をつくりたい。そして、その道を他の女性と共に、大きく広げていく。女性が男性の付属品でなく、自立して生きる術を、確立していきたいのです。その為に、この絶好の機会を逃すわけにはまいりません! 幸い、アドラー王の許しは頂きました。何ら問題はございませんわ。お父様、わたくしは必ずや試験に合格し、王城の文官になります。この国の為に、民の為に、お役に立てるよう精一杯努力いたします」

 私は父に対し、これでもかという程、堂々と大きな声で力強く話した。
 何人たりとも、私を止められる者はいないとの強い思いを込めながら。

 父だけでなく、周りのご令嬢や保護者達にも、私の覚悟は伝わったようだ。これ以降、私にとやかく言う人はいなくなった。

 結局、学園生徒を含め、多くの貴族や平民が登用試験を受けた。
 読み書き、算術、地理、歴史、弁論、哲学等の筆記試験で、200人の希望者が三分の一まで絞られた。
 そこから、身体能力検査と特技のアピール面談を経て、最終的に35名の文官が誕生した。

 6年間の学園生活を終えてすぐに、私とローレライは王城で働きはじめた。
 三月の研修期間を経た今日、配属先が発表される。

「ルイーサ様、さすがルイーサ様は城内護衛隊ですね。私は図書教育隊でした」
「図書教育隊でも、休憩所は一緒よね。ローレライ、これからも、色々と情報交換しましょう」
「はい、よろしくお願いします」

 城内護衛隊は、いわば国王直属の部隊だ。知識だけでなく、いざという時の王の盾となる為、武の心得が必要とされる。
 私は馬術、剣術を嗜んでいたので、唯一女性で護衛隊への配属となった。

 他には、図書教育隊、外交経済隊、城外警防隊、食料隊にわかれて仕事をするらしい。

 それぞれの隊をおさめるのは、アドラー王の5人の側近、『鷲の目』のメンバーだ。
 学生時代に何度か会った事のある、シュナイゼルは外交担当者だった筈だ。ということは、彼は外交経済隊の隊長なのだろう。

 私は、アドラー王と接点が持てることを嬉しく思った。
 王の側で務めていれば、彼があのアルなのかどうかを見極めることができるだろう。

 新人がそれぞれの隊に集められた。

「城内護衛隊の隊長、ギルティアスだ。君たち6人はアドラー王直属の護衛隊の一員となった。この隊の任務は、単なる仕事ではない。王の為に命を捧げる忠誠と勇気と知恵がないと、務まらない。無理だと思ったら、別の隊へ移転もあり得る。心して、任務にあたれ」

 中央に座るアドラー王の右に立つ、見覚えのある男がそう告げる。
 そうだ、はじめて王にであった学園の入学パーティーで、一度会った男だ。

 目の前には、他にも既存の国王直属の剣士達が30人程並んでいる。皆、一癖も二癖もありそうな、尋常でない雰囲気の者ばかり。
 アドラー王の鷲の盾の名は、伊達ではないようだ。

 新人達が、彼らの放つ空気に押されているのがわかる。

「今後、アドラー国王様のことは王、と呼ぶように。我々の王はアドラー国王のみ。王といえばアドラー王の事をさす。覚えておけ。では、自己紹介を。家名、苗字は不要だ。名と得意な事をのべよ。その右の者、君からだ」
「は、はいっ……っ!! ぼく、いえ、私はオリバーです。と、得意なことは、その、気配を消して人の後をつけることです!」
「ゴドゥインと申します。剣術、史実、政などひと通り身につけております。王に忠誠を誓います。どうぞお見知りおきを」
「フランシスです。力では誰にも負けません。王のお役に立てるよう努めます」
「シルバーです。人たらしだと言われております。交渉事に向いているかと」
「ラディストテレスです。味覚、嗅覚には自信があります」

 何を言うべきか考えていたが、何も思い浮かばず、私は諦めて率直な思いを述べることにした。

「ルイーサ、いえ、ルイとお呼びください。私の特技は、女性であるという事です」

 横からククッという含み笑いと、これだから女はという囁きが聞こえたが、向かいのアドラー王はじめ、鷲の盾達は無表情で私を見つめた。

「ルイーサ嬢、いや、ルイか。今の言葉の説明を」

 アドラーが私に問う。

「はい、王。ご覧のとおり、女性は女性であるだけで、嘲りを受け、格下だとみられます。知力、腕力のない弱い存在として、ほとんどの男性は、私に油断してくれます。それが今の私の最大の強みとなるかと」
「では、女性を対等にみる男に対してなら、君の強みはなんと答える?」
「さようでございますね、そのような方へは………」

 私はアドラーを真っ直ぐに見返しながら、言葉を選ぶ。

「とりあえず、しぶとさ、とでも申し上げましょう。生まれながらに、人として下にみられる積年の恨みつらみからなる、しぶとさ。一度決めた目標に突き進む頑固さ。それが私の強みです」
「なるほど、貴族令嬢からでる言葉としては興味深い」
「何事も、表面的にみえるものと、本質とは違うもの。私は貴族令嬢ではなく、いち人間として、王の盾となる為にこの場に立っております」
「いいだろう、ルイ。早くオレの盾となれるよう、励め。皆も、性別や身分に惑わされるな。どんな相手にも、平等で冷静な目を向けるよう気をつけよ。ギルティアス、後は頼む」
「はっ、かしこまりました」

 アドラー王は数名を従え、部屋を後にした。
 ギルティアスが続ける。

「では、それぞれの新人に指導員をつける。しばらくの間は、指導員と行動を共にし、城内の地理と仕事内容を覚えてくれ。試験時にも伝えてあるが、城内での仕事にかかわる事は、一切他言無用だ。家族、友人にも、ペラペラと話さないよう、心得よ」

 新人6名の前に、6名の剣士が並んだ。
 驚いた事に、ギルティアスが私の目の前に立った。

「あらためて、指導員のギルティアスだ。ルイ、宜しく頼む」
「ギルティアス様、宜しくお願いいたします」

 私は毎日ギルティアスについてまわった。
 彼がアドラー王の従者として過ごす時、城内護衛隊の隊長として務める時、他の隊長との会議や、城内の見廻り、城外の様子みまで、あらゆる場所に同行を許された。

 ローレライ以外の友人は、未だにいない。

「ルイーサ様、新人の皆から相当嫉妬されてますね」
「そのようね」

 休憩場で、二人きりの時に、ローレライは他の新人達の現状を知らせてくれた。

「特に、護衛隊の他の男性達。大声でよく文句言ってるんです。直接、悪さされたりしてません? 大丈夫ですか?」
「今のところ、無視や悪口くらいかしら。私を傷つけたりすれば、城内の仕事をクビになる。さすがにそんなバカな事はしないでしょう」
「それならいいのですが。私や、あと3人いる女性の新人は、それなりに丁寧に接してもらってるので問題ありません。まあ、女だし仕方ないな、みたいな多少の侮蔑はつきものですけど。でも、ルイーサ様は、皆の憧れの城内護衛隊に配属、しかも指導員がギルティアス様で、えこひいきじゃないかと、うちの隊の男達までボヤいてて。皆、ルイーサ様の実力を知らないんです! どれだけ努力されているかを全然わかってない」

 私の為に怒ってくれるローレライの姿に、思わず胸が熱くなる。

「ローレライがいてくれて、嬉しいわ。他の皆さんも、そのうち理解してくれるでしょう。とにかく、わたくし達が今なすべきことは、しっかりと任務を覚えて、王の役に立つ人材となること。それ以外の事は、考えないでおくわ」
「ルイーサ様、おっしゃる通りです。私もがんばります」

 実際、覚える事が多く、余計な事に気を取られる余裕もない。 
 仕事をすればするほど、鷲の盾の方々の凄さ、能力の高さがわかってくる。
 そして、彼らを率いて、まだ少年だったアドラー王が、王座を得るために戦い、勝利した事実に、鳥肌がたつ。

 現在の平和な城下をみれば、為政者の手腕がかわる。
 アドラー王は戦いにおいても、平時の政においても、非凡な才能をもっているのだ。

 彼がアルかどうかを別にしても、彼の側でこの新しい時代の為に働ける事は、思った以上の喜びだ。
 平民と貴族の差が縮まり、女性が一人の人間と認められ、尊重される世界を目指す。
 まさに私が望む社会を、権力者である王がつくろうとしている。

 だが、弱者にとって歓迎すべきその考えは、貴族や男性からすれば、決して喜ばしいものではない。

「……必ず反対勢力がでてくる。……暗闇から」

 休憩から隊の詰所へ戻る道すがら、つい口をついてでた言葉に、ヒヤリとする。

「ルイ、ここにいたのだな」

 ふいに後ろから、聞き慣れた声がした。 
 膝をつき、礼をとる。

「王、ルイがご挨拶申し上げます」

 王の後ろにはギルティアスと、護衛隊新人の5人が連なっている。

「うむ。これから皆で剣の稽古をしにいくところだ。ところで、反体勢力とは何の事だ?」
「王の築く新しい時代を歓迎する者もいれば、それを良しとしない者もおります。表立って動けない者達は、闇で動く。どのような者が、どこで、いつ、どう動くのだろうかと考えておりました」
「お前! 王に向かって失礼な事を言うな!」
「そうだ、女の癖に、何を言うんだ! 王の統治に異を唱える者などいないぞ」

 今のは、貴族子息のゴドゥインと、用心棒家業の一家出身のフランシスか。私に文句を言いたくて仕方がないらしい。
 げんなりして王の顔をみると、ニヤリと嬉しそうな表情をしている。

 私は、嫌われ者になる覚悟を決めた。

「失礼な事ではなく、事実を言ったまで。希望的観測ではなく、いざという時に備えるのが我々の役目かと思います。また、王が私に問われている最中に、割って入り、しかも女の癖になどと暴言を吐くとは、あなた方の方がよほど失礼ではありませんか?」
「な…っ!」
「そ、そんな……」

 淡々とそう述べる私に、二人は血相をかえた。
 憎々しげな視線を、真っ向から受け止める。
 負けるつもりはない。

「王よ、あまり焚きつけないで頂きたい」
「ギルティアス、どちらにせよ、一度はしっかり燃えないと、この火種はおさまるまい」
「どうなさいますか?」
「こんな時は、あれしかあるまい」
「本気でいつものあれを?」

 王は楽しそうにギルティアスと話し、そしてこう言った。

「いい機会だ。皆の実力をオレにみせろ」

~続く~

お読みいただき、おおきにです(^人^)
イラストはAIで生成したものを使っています。

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