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【読書】 経営戦略全史

 この本では、2つのことが学べます。「当時の社会やビジネス状況の解決策としての経営戦略論」と、「現代のイノベーション論の構造」です。特に前者は、これまで経営学を学んできた皆さんにとって、最高の復習になるでしょう。また後者は、これからビジネスに立ち向かおうとするみなさんにとって、よい指南書となることでしょう。
 この本は、学術書でもコンサルタントのビジネス書でもありません。テイラーとメイヨーらに始まるこの100年の経営戦略論の流れを描いた、400ページあまりの「ストーリー」です。学術、コンサルティング、企業のどれにも偏ることのない。
 経営戦略を学ぶ、入門もしくは仕上げに、この一冊をどうぞ。

経営戦略全史

第1章 近代マネジメントの3つの潮流(1910〜30年代)

  1. 「巨人たちの午後」1 科学的管理の父テイラーと人間関係論の始祖メイヨー

  2. テイラーが怠業と不審、恐怖が支配する19世紀の工場に「科学的管理法」を導入した

  3. フォードがつくった科学的な大量生産システムが「大衆社会」を生み出した

  4. メイヨーが「社会的存在としての人間」を見い出した

  5. コラム マズローの夢、釈迦の諦念

  6. フェイヨルが「企業活動」を定義し全社的「統治プロセス」をつくった

第2章 近代マネジメントの創生(1930〜60年代)

  1. 「巨人たちの午後」2 経営戦略の真の父アンゾフと最初の経営史家チャンドラー

  2. バーナードは世界恐慌で苦しむトップたちを「経営者の役割」で鼓舞した

  3. ドラッガーは「マネジメント」の有用性を世に広めた”伝道師”

  4. アンゾフは「市場における競争」の概念を持ち込んだ「経営戦略」の真の父

  5. チャンドラーは本当に「組織は戦略に従う」と言ったのか?

  6. バウアーはマッキンゼーをつくり「組織戦略」を推し進めた

  7. 「巨人たちの午後」3 戦略プランニングの父アンドルーズとポジショニング派のチャンピオン・ポーター

  8. アンドルーズは「戦略プランニング手法」を広めたが戦略自体はアートだと信じた

  9. コラム SWOT 分析の真実

  10. コトラーはマーケティング界のドラッカー

  11. コラム PLC (プロダクト・ライフサイクル)戦略の衝撃「マーケティングは死んだ」

第3章 ポジショニング派の大発展(1960〜80年代)

  1. 「巨人たちの午後」4 マッキンゼーの構築者バウアーと BCG 創業者ヘンダーソン

  2. ヘンダーソンによる BCG の誕生と4つの飛躍「時代」「競争」「資源配分」

  3. コラム「成長・シェアマトリクス」は外部環境と競争の組み合わせ

  4. グラックによるマッキンゼーの逆襲

第4章 ケイパビリティ派の群雄割拠(1980〜90年代)

  1. キャノンとホンダ 無鉄砲な日本企業たちの躍進

  2. コラム トヨタ生産システム。在庫は悪だ!

  3. 「巨人たちの午後」5 『エクセレント・カンパニー』のピーターズと『タイムベース競争戦略』のストーク

  4. ピーターズらが放った反ポジショニング的ヒット作『エクセレント・カンパニー』

  5. ベンチマーキングで復活したゼロックス・サウスウエスト航空・フォード

  6. ストークが東京から放った「タイムベース戦略」

  7. ハマーの破壊的リエンジニアリングは自分自身も壊してしまった

  8. ハメルとプラハラードの未来に向けた成長戦略『コア・コンピタンス』

  9. コラム 味の素のコア・コンピタンス経営

  10. フォスターがリードしたマッキンゼーの「イノベーション戦略」

  11. ターマンが生んだシリコンバレーからイノベーターたちがやってきた

  12. センゲと野中の組織ラーニング

  13. バーニーは「資源ベースの戦略論」で資源優位を問いた、が…

第5章 ポジショニングとケイパビリティの統合と整合(1990年代〜)

  1. 「巨人たちの午後」6 帰ってきたチャンピオン・ポーターとケイパビリティ派の学級委員長・バーニー

  2. ポーターが世紀末に放った反撃の一打「戦略とは何か」

  3. キャプランとノートンが提唱した管理手法 バランスト・スコアカード

  4. キムとモボルニュはポジショニングとケイパビリティを融合した

  5. ベゾスは新しいポジショニングを新しいケイパビリティで実現した

  6. コラム 恐竜はなぜ「大絶滅」したのか?

第6章 21世紀の経営環境と戦略諸論(2000年代〜)

  1. 「巨人たちの午後」7 若き天才・シュンペーターと「破壊的イノベーション」のクリステンセン

  2. 企業が消えていく 世界環境の不安定化と不確実性

  3. 世界の急膨張! 「新興国の台頭」「複雑化」

  4. 境界の崩壊 産業・企業・機能の融合と再編

  5. 世界が注視する経営テーマ「イノベーション」「リーダーシップ」「ラーニング」「ネット」「ソーシャル」「グローバル化」

  6. クリステンセンがリードする「破壊的イノベーション」を生む「リーダーシップ」

  7. BOP・新中間層とゴビンダラジャンの「リバース・イノベーション」

  8. エヴァンスが見抜いた「ネット」の本質

  9. コラム 「ハカる力」が経営を変える

  10. ラーニングの新しい動き フューチャーセンター、知財戦略、ワーク・シフト

  11. 「巨人たちの午後」8 競争から強調へのグラットンと競争しないブルー・オーシャン戦略のモボルニュ

  12. 「ソーシャル」が世界の偉才を惹きつける

第7章 最後の答え「アダプティブ戦略」(2010年代〜)

  1. ワッツの一撃。歴史に学ばず、衆知と対照実験に学べ

    1. ヒトは後付け解釈が得意である

    2. 歴史から「答え」は学べない

    3. ハロー効果 - ヒトは結果に目が眩む

    4. 自己奉仕バイアス - ヒトは自分に甘い

    5. どうすれば大失敗を回避できるのか

    6. 闇夜のドライビング戦略

  2. シュミットとペイジがリードするグーグルの超・試行錯誤型経営

    1. 大統領選でオバマ陣営を支えたグーグルの「A / B テスト」

    2. 年間7,000回の試行錯誤がグーグルを改善する

    3. グーグルの壮大な「試行錯誤型」経営

    4. 成長の原動力は小規模ベンチャーのイノベーションから

    5. やってみて結果で決める「データ民主主義」

  3. ハートフォードが「アダプト思考」で指摘した理想の組織の落とし穴

    1. アメリカ軍が自らつくってきた IT による「現代戦」

    2. ラムズフェルドの「夢」。理想の組織

    3. 「理想の組織」は、市街戦にも治安維持にも敗北した

    4. 「理想の組織」は、ボトムアップや試行錯誤を許さない

    5. それでも現場では、試行錯誤やボトムアップが行われた!

    6. 「交番システム」で住民を守る!

    7. 命令でなく作戦マニュアルで行動を変える!

    8. 異質による試行錯誤とボトムアップが、現代戦を変える

    9. 「理想の戦略」は、ない

  4. コラム 日本軍失敗の本質とアメリカ軍失敗の本質

    1. 日本軍失敗の本質

    2. 「優秀な指揮官」のもと、アメリカ軍も同じ罠にはまった

  5. IDEO ブラウンのデザイン思考。素早く、軽く、実際に試してみる

    1. 「デザイン思考」とは

    2. 「観察」による理解・共感が最初の一歩

    3. 「試作」のハードルを下げる

    4. 「テスト」を実地に対照実験で行う

    5. d.school が拓く未来

  6. コラム 流行を先読みしないアパレルブランド ZARA

    1. ファッション業界の長大な産業バリューチェーンの問題点

    2. GAP は規模の力でファッション品を安くした

    3. ZARA は商品開発スピードでファッション性を高めた

    4. 流行の最先端を追うことで実現する試行錯誤型経営

  7. 経営戦略という名の登山 - ここまでのまとめ -

    1. 経営という ”山” をつくった人々

    2. 「登りやすい道を探せ」とポジショニング派は言った

    3. 「登りやすい方法で登れ」とケイパビリティ派は言った

    4. 「手を携えて一緒にやれば」とコンフィグレーション

    5. そんなことよりイノベーション

    6. やってみなくちゃ、わからない。「試行錯誤型」経営が最後の答え

  8. ブランクとリースが実践から作り出した「リーン・スタートアップ」

    1. スタートアップ成功の極意は「顧客開発」にある

    2. スタートアップの「ムダ」を取り除け!

    3. MVP がスタートアップを救う

    4. ピボット!少しずつ、でも確実に修正せよ

  9. BCG リーヴスはアダプティブ戦略を唱える

    1. 事業環境の5分類

    2. 戦略策定を「実験」の中で行う

    3. 失敗をどう活かすのかが「実験する能力」を決める

補章 全体俯瞰のための B3C フレームワーク(1996年代)

  1. 「巨人たちの午後」(番外編)ドラッカーと私

  2. 巨像を動かすための B3C フレームワーク

    1. ポーターですら「巨像」を把握していない?

    2. 全体を見るための SWOT ・ TOWS と 3C モデル

    3. 戦場を規定し全体を見る

    4. 土俵 (Battle Circle)

    5. 競合 (Competitor)

    6. 自社 (Company)

  3. B3C フレームワークで戦場を定義せよ

    1. 上段で「事業へのスタンス」、下段で「勝ち方」を決める

    2. 土俵は「市場の魅力度」と「事業特性」で見る

    3. 「アドバンテージ・マトリクス」で事業特性を理解する

    4. どこからスタートしても構わない。ただし必ず土俵に戻る

    5. 市場の定義に始まり、市場の定義に終わる

  4. 土俵戦略でジャンプせよ

    1. 自分でなく、土俵自体を変革する

    2. 小企業なら土俵を選ぶ、ベンチャーなら土俵を創る


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