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情報の賞味期限と味と食べ方と価値と胃もたれについて

とある漫画家の方が描いたnoteを読んでいた。内容は、「いまの時代、漫画家として食べていくにはどうしたらいいのか」。最近、よくあるといえばよくある話題。しかし、漫画家志望者はもちろんのこと、僕みたいに、とくに漫画家になる予定が今後100年ぐらいないような人でも、とりあえず読んでみようかな、と思わせるだけの話題性がある。
 
いまの時代、漫画家がツイッターで自分の作品を宣伝したり、一部を公開したりすることは当たり前になりつつある。なにげなくタイムラインをなぞっているだけで、それらのツイートは目に飛び込んでくる。
 
日常の中で、「あるある」と感じる漫画、いわゆる「共感系」と言われるジャンルの短い漫画は、たくさん「いいね」がつき、リツイートもされる傾向にある。僕も、そういったものが目にはいれば、とりあえず読んで、「あるある~!」と感じたら、いいねをつけてリツイートする。そして、1秒後には、作者はもちろん、内容すらも忘却している。1時間後には、そういうものを読んだことさえ忘れてしまうかもしれない。もちろん、その作者をフォローすることもない。
 
実際に、ツイッターで「共感系」の漫画を描いて、商業誌で出版すると、なかなか売れないらしい。ツイッターのフォロワーの質・数にも左右されると思うが。「共感系」は、ツイッターのタイムライン上では「あるある」と共感されるかもしれないが、なかなかそれを買うには至らないようだ。「わざわざ紙の単行本を買う」という性質のものではないのだろう。

一方、ツイッターで、小説家の人のアカウントを目にすることがある。大人気作家だったら何十万人もフォロワーがいることもあるが、僕の見立てでは、たいていは1000人前後だ。ツイッターのフォロワーが作品の売り上げに連動しているならば、それでやっていけるのかと心配になってしまうが、前述のとおり、ツイッターのフォロワーや「いいね」の数と、作品の売り上げは必ずしも連動しないようだ。情報には、価値や食べ方、賞味期限が異なるのである。
 
僕はnoteに小説作品を投稿している。長編の作品を、毎日1200字前後で、4ヶ月ぐらいかけて投稿する予定だ。いま書いている、この文章は「エッセイ」としてカテゴライズして投稿いるのだが、「いいね(noteでは「スキ」)」のつき方が顕著に違う。「エッセイ」ではだいたい30~50ぐらいなのだが、「小説」だと10前後しかない。しかし、「小説」は「いいね」はそんなにつかなくても、息が長い。新しくそれを目にして、気に入ってくれた人は、最初から読んでくれていたりする。閲覧数の推移を見ていると、投稿の時期に関係なく、多少時間が経っても読んでもらえているようだ。
 
「エッセイ」は最初にパッと見てもらいやすいが、賞味期限が短い。最初の1、2日は顕著に伸びるが、その後はパタッと止まる。小説は、架空の世界の話だし、特に現実世界の出来事と連動しているわけではないので、10年後、100年後でも読まれるだろう。息が長いのだ。

パッと最初に読まれるものがいいか。それとも、じわじわと時間をかけて読まれるものがいいか。それぞれの味、価値は異なる。賞味期限切れの情報もある。また、いくら美味しいからといって、同じものを食べていては、そのうち胃もたれしてしまう。
 
甘いものもあれば辛いものもあり、毎日食べても飽きない味もある。文章を書き、情報を提供する側も、自分の特性を理解して、価値ある情報を提供できれば、それでいい。(執筆時間16分48秒)

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