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「車輪の再発明」をさせること

新人がたくさん入社してきた。社の方針で、少し多めに新人を採用することになり、今月からわらわらと入社してきた。もともと小さい会社なので、新人が増えたことにより、若干の手狭さを感じるほどになった。しかしオフィスには新しい風が吹き、確実に雰囲気は変わった。プラスの影響だ。
 
うちの会社は新卒の採用はやっていないのだが、今回の採用は第二新卒というか、あまりカッチリしたキャリアをもっていない、二十代前半の若手を積極採用した。教育が大変になるぞ、と入社前は少し身構える思いだった。
 
僕自身の仕事は、基本的には会社がやっている既存事業というものはやらず、新規事業を手がけるようなポジションにいる。なので、OJTで新人がついても、教えてあげられることが少ない。毎日やっているルーティンのようなものが何もないからだ。だから、出張に連れていったり、営業先に連れていったりして、少しずつ勉強させている。

かなり活きの良い女の子がいて、生意気なことをガンガン言ってくる。言葉遣いも学生っぽいというか、いわゆる若者言葉。「提案」と称して、あらゆることをまくしたてる。
 
僕はこういうタイプの子が基本的に好きだ。たぶん自分が似ているからだろう、と分析している。とにかく、自分が「良い」と思ったことは提案せずにいられない。でも、最近ではわりと珍しいタイプなのかもな、と思った。
 
それで、肝心の提案内容なのだが、これがやはり学生感溢れる初々しいもので、SNSの活用とか、そういったものが多い。正直なところ、提案される内容のほとんどは以前にチームでも議論したし、自分でも検討済みなものばかりなのだが、ゼロベースでそれを再考するいい機会になっている。「頭の体操」というか。
 
「過去の経験上、それではダメだということはわかっている」のだが、ロジックもなしに否定してはならない。ちゃんとゼロベースでこちらもロジックを構築し、それで議論をしよう、というのを心がけている。
 
まだ学生あがりに近いので、会社の提案書や企画書の類は、もちろん書いたこともないし、見たこともない。だから、教えている。何か提案をするときには、問題提起をして、解決法を提示し、費用を算出して、効果を予測するのだ、と。そのうえで、本当に企画を通したいのなら、誰を説得して味方につけたら通りやすいかを考えて根回ししろ、とか(笑)。根回しというのは必須の能力で、根回しの過程で貴重なアドバイスをもらえることもある。若いので、あらゆることをどんどん吸収している。
 
人は誰しも凡庸だ。斬新なアイデアなど、誰も持っていない。ほとんどすべてのアイデアは二番煎じどころか、100とか、1000とか、そういう単位で先例がある。それでも前例のないものは、困難すぎて競合他社が撤退した荒野となっているから、だったりする。
 
しかし、「企画を立てて」「実行して」「改善する」プロセスは、磨き上げることができる。アイデアが凡庸でも、実行力と改善力を磨き、そこから少しの「発想」を付加することができれば、大きな事業に化ける可能性はある。アイデアは凡庸であると割り切って、それひとつで勝負するのではなく、ビジネスパーソンとしての「スキル」で勝負すればいいのだ。

「車輪の再発明」という言葉がある。「車輪」というのはすごくイノベーティブな発明だが、「車輪」を知らなければ、ゼロベースで苦労してそれを再発明してしまうかもしれない。すでに先例があるので学べばいいので、それは無駄な努力となる。

しかし、無駄だとわかっていることでも、教育目的であえて「車輪の再発明をさせる」という教育方法はある。というか、教育の本質はそれだったりする。いま僕がやっているのはまさにそういうことだ。ここで練習して、いずれは戦力になってくれることを願う。
 
なんかこういうことを書くと自分も年をとってきたもんだな、と感じる(笑)。いずれ、チーム全員が幸せになるといいな、と願っている。(執筆時間15分29秒)

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