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話題の「サードドア(第三のドア)」を読んだ

アレックス・バナヤン著の「サードドア」を読んだ。


最近ちょっと話題になっていたので、どんなものかと思って読んでみた。タイトルの「サードドア」とは造語で、「正面玄関ではなく(第一のドア)、かといって裏口でもなく(第二のドア)、別の入り口であるサードドア(第三のドア)」の意味。要するに、なにか事を成し遂げるときに、正面玄関から突破する正攻法や、コネを使っての裏口のふたつしかないと思われがちだけれど、それ以外にもやり方はあるんじゃないか、ということ。
 
具体的には、著者のアレックスが、著名人に「成功の秘訣」をインタビューしに行く、というもの。その著名人というのも半端な著名人ではなく、ビル・ゲイツ、スピルバーグ、ウォーレン・バフェットなど、誰もが名前を知る人物に直接アポイントをとる、というプロジェクト。それを、なんのコネもないただの大学生であるアレックスが単独で挑戦する。
 
そもそもの動機としては、コネもカネもなかった若き日のビル・ゲイツが、どうやってマイクロソフト社を立ち上げたのか? という部分について、その最初の成功譚というか、きっかけのようなものが伝記に書かれていないのではないか、ということで、そこには何か秘訣があるんじゃないかと考えて実行に移したらしい。しかし、結果的にはインタビューの内容そのものよりも、「どうやってただの大学生である著者(アレックス)が、ビル・ゲイツにアポイントをとることができたのか?」という部分が物語としてのキモになっている。入れ子構造というか、本を出版するためのエピソードそのもの出版してしまうという(笑)。まあ、これでも十分楽しいものにはなってるんだけど、意図的に手段を目的化しているような内容で、ちょっと反則めいたものを感じる。まるで、小説家のデビュー作品が、どうやってデビュー作品を書いたかという内容になっているみたいな。まあ、面白いから別にいいんだけど。


しかしそのへんの自己啓発本やビジネス本よりもずっと得られるものは大きく、これを読むとふだんやっている仕事なんかはずっと単純な作業を繰り返してるだけなんだな、と思える。ほぼすべてが失敗に終わるなか、トライし続けるというのはとても大変なことなので、大抵の人はすぐにあきらめてしまう。これはよく思うことなのだけれど、確実に成功するとわかっている努力は簡単にできるけれど、成功するかどうかもわからない、むしろ失敗する確率が圧倒的に高いとわかっているときに、努力するというのは本当にしんどい。でも、著者によれば、「第三のドア」はそうでもしないと開けられない、とのこと。まあ、確かに著者は著名人へのインタビューは失敗続きながらも、ウォーレンバフェットやビル・ゲイツへのインタビューは成功させているし、完璧とはいえないまでも、ある程度の成功は収めているといえる。


アマゾンのレビューを見てみると、ただ手放しに絶賛しているレビューと、「こんなのは日本社会では参考にならない」みたいに酷評しているレビューに分かれていて、みんなちゃんと読んでるのかな、と思った。逆にいうと、大半の人間が「参考にならない」と思ってくれないと、「第三のドア」にはならないだろう。
 
勇気をもらうのも、バカにするのもその人次第だけれど、行動していればなにがしかの結果はついてくる。そういった当たり前のことを確認できる本だと思う。

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