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日本人的、なるもの

海外から戻ると、かならず思うことがある。日本人って、一体なんなんだろうな、と。
 
僕は、仕事で自分から会いに行く場合を除いて、海外で日本人と会うと嫌な気持ちになる。旅先で日本語が聞こえてくると、ああ、日本人か、と思ってしまう。そして、外国人にはどう見られても平気なのに、日本人に見られると、ちょっと緊張してしまう。もしかしたら、向こうも似たようなことを思っているかもしれない。相手が日本人だとわかると、それはもう、どうしようもないぐらい、日本人、なのだ。旅先のムードが一気に壊れてしまう。だから嫌なんだろう。

自分が日本で生まれて、人生の大半を日本で過ごしているので、あまりわからないだけかもしれないが、日本人っていうのは相当変わってるんだろうな、と思う。ナイキの創業者の、フィル・ナイトが書いた伝記で、日本のことが出てくる。ナイキは、ナイキになる前は、日本のスポーツシューズメーカーのオニツカタイガーの代理店をやっていたのだが、そのときの交渉の様子で、日本人のことが出てくる。
 
曰く、日本人は、いつもニコニコしていて礼儀正しい。だから、商談の席で、にこやかに商談が終わって、首尾よく事が進んだとほっとしていたら、実は破談していた、なんていうことがよくある。なんとも、おばけ屋敷みたいな人たちだ、と。
 
まあ確かに、そういうところはあるよな、日本人。逆に、欧米の企業とかだと、歯に衣着せぬ感じで、お世辞とかもあんまり言わないから、かなりストレート。でも、そっちのほうが無駄が少ないよな、なんてことも思ったり。
 
違いを知るには、自分以外のたくさんのことを知っていたほうがいい。実際、タイ人などのアジア人は、アメリカ人とは違って「空気を読む」が、それでもやっぱり日本の読み方とは違う。日本はかなり独特だと思う。その違いを知るには、タイ人、ミャンマー人と、アジア人どうしで比較してみるとけっこうわかりやすいかも。

面白いのは、日本に住んでいると、外国人もだんだん日本人になっていく、ということだ。外国で日本語を勉強して、日本語がやたらとうまい人がいるが、そういう人はあまり日本人ぽくない。逆に、日本語のイントネーションや言葉遣いが変でも、日本に長く住んでいる人は、どんどん日本的になっていく。
 
正々堂々と勝負する、という武士道みたいなのが日本的だ、というひともいるけれど、それは少し違う気がする。「古事記」なんかを読むとわかるのだが、古代の日本はだまし討ちが多い。ヤマトタケルの物語なんか、卑怯な技、だまし討ちのオンパレードだ。でも、当時がそういったものが礼賛されていて、それの反動で、武士道みたいなものができたのだろう。日本人は、けっこう狡猾だ。少なくとも、ただのお人好し集団ではない。

礼儀正しくて、マメで、親切で、狡猾で、排他的で、二面性のある、そんな矛盾しまくった国民性が日本人だ。僕もそのひとりだし、これを日本語で読んでいるあなたも、その一人なのだろう。
 
……日本人的なるもの、説明ができますか?(執筆時間16分31秒)

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