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かすめとる

消費税が増税してしばらく経った。ふだんは増税したことを忘れているが、たまに思い出しては、冷静に10%って高すぎでは……と戦慄する。自分の支払う金額の1割。税金だから仕方がないとはいえ、経済活動の1割を持って行かれている、というのはなかなかすごいことだ。そして、今回は8%から10%に上がっただけなので気づきにくいのだが、もっと前は5%だったし、その前は3%とかだった。あらためてすげぇな。
 
ただ、税金の取り方としてはうまい方法と思う。だって、税金を払っているという自覚がない。すべての経済活動に税金が上乗せされているから、確かに今回のように増税時には「うっ」となるが、基本的に慣れてしまえば気にならない。特に最近は、税込価格で表記されてるのが基本だし。うまいことやるな、と思う。
 
もし年に1回、年末とかに税務署の人がやってきて、今年消費した金額の1割をいますぐ払えと言ってきたら、かなり払いたくないと思う。大体いくらだよ。江戸時代の役人はこんな感じだったのだろうか。

お金って、何かが動くときにかすめとるのがいいんだな、と思う。消費税は、要するに「何かを買うぞ」というときに、財布の紐がゆるみ、お金を支払った瞬間に一部をかすめとっているから気づきにくい。そのかすめ取り方がすごい。
 
自分の兄、姉の結婚式に参加したことがあるのだが、結婚式場の料金システムというのはすごいと思った。何かのオプションをつけるときに、尋常じゃない額の費用をとる。提案している式場の人はニコニコして、「記念ですから」「一生に一度ですから」とかなんとか言っている。結婚する当人は、そもそも大きなお金を動かしているので、微々たる金額に見えるかもしれないが、控え室できわめて冷静にしている僕からしたら、あまりにも金銭感覚が麻痺しているので、常軌を逸している……と怯えることになる。これも「かすめとり」の一例のような気がする。

もっとも、自分だってこういう手はよく使う。仕事で何かを購入しなければならないとき、普通だったら稟議が通らないので、時期を待って、何か別の大事なものを買わなければならないときに、ついでに申請する。すると、普段だと説明が必要なものでも、なんか知らないがどさくさにまぎれてあっさり買えたりする。旅行先でどうでもいいものを買ってしまうのも、だいたいこれに似た心理だと思う。
 
商売をやっている人は、たぶんこういうのがうまいんだろうな。それ単体でお金を使わせようとしても、なかなかうまくいかない。お金が動くタイミングで、横からサッとそれをかすめとる。これがうまい商売のやり方。
 
……まあ、ものには限度というものがあるけれど。これは商売の基本なんですかね。(執筆時間11分44秒)

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