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【ほんねはなインタビュー】「都会で腐ってる自分が嫌だったから、己を田舎に放り込んだ感じです。」

インタビュー企画「街場のクリエイターたち。」のお時間です。第5回のクリエイターさんは、「ほんねはな」さんです。

クリエイター:"農家" ほんねはな

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noteで知り合ったnoterさんです。就農関連のnoteを更新されており、限界集落に近い場所での「田舎暮らし」や、そこでの生き方などについて綴られております。

田舎暮らしのリアルなお話や、就農に関わるかなりディープな話を聞くことができました。

(インタビューは、4月上旬、オンラインで行われました)

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限界集落に行く人は、なかなかいない。

はな:おはようございます、ほんねはなです。

やひろ:おはようございます、やひろです。今回は、インタビューのご承諾いただきありがとうございました。

はな:いえいえ、とんでもないです。こちらこそ、私みたいなのでいいのかな、という気持ちなんですけど。

やひろ:僕の知り合いには音楽作ってる人とか、絵を書いてる人みたいなクリエイターさん多いんですけど、クリエイティブのエッセンスのある人って世の中にもっといるよなと思っていて。ほんねはなさんがされているような農業なんか、クリエイティブそのものですよね。
 
はな:一次産業ですからね(笑)。かなり、なんというか、根本的な。
 
やひろ:農業の話もそうなんですけど、田舎で暮らすこと自体も、一筋縄ではいかないというか、色々と試行錯誤されているのをnoteでも拝見させて頂いてます。なんか、「生活」というか、生きていくことに関して、切り開いていっている感がすごいので、これはクリエイティブだなと。
 
はな:それ、コメントとかでもよくいただくんですよね。「切り開いていっている感」がすごい、っていうのはみなさんに思われてるみたいです。
 
やひろ:たとえば、田舎で暮らしたいって思った時に、田舎暮らしのいいことだけが書いてある本って多いじゃないですか。だから、基本的にはそういうものを見て「田舎」というのに憧れると思うんですよね。リアルな情報を得たいと思っても、別に誰か知り合いがいるわけでもないし……。
 
はな:そうですよね。

やひろ:実際に、すでに田舎に住んでいる人に話を聞いたら、否定的な人もきっと多いと思うんですよ。変な話、全肯定か全否定のどっちかかなって思ってて(笑)。

ほんねはなさんはこれからやろうとしているというか、既にやってはいるんだけどもっと本格的にされようとしているから、内容が濃いというか、まさに切り開いていっている感がすごいんですよね。きっと、書かれている記事を参考にしている人はけっこういるんじゃないかと思います。

はな:そうですよね。特攻隊長というか……(笑)。切り開いていっている感は、正直、あります。いつもギリギリ感があるっていうか……。大抵、あんまりわかんないうちに、やらざるを得ない感じになってやってる感じですね。
 
やひろ:そう、やらざるを得ない。それってすごく大事だと思います。

僕、よく引きこもりを部屋の中から出すにはどうしたらいいかって頭の中でシミュレーションするんですけど、ひとつ、簡単な解決方法があります。外から、石かなんかを投げて、窓ガラス割ってやればいいですよ。
 
はな:物理的に(笑)。
 
やひろ:窓が割れたらなんとかするでしょ、人は。親を呼ぶのか、ガムテープで補修するのか。なんらかのアクション起こすじゃないですか。自分に降り注ぐイベントが何も起きないと、たぶん誰だって動かないと思うんですよね。もちろん、あんまりひどいことをすると大変なことになっちゃう人もいるので、あくまで極論ですけどね。

でも、自分に置き換えて考えてみても、わりと理不尽の状況に追い込まれたほうが真価を発揮できる、っていうことはよくあります。たとえば、僕は仕事で海外とかよく行くんですけど、バングラデシュの田舎のほうで会社の人とはぐれちゃったりするとどうしようもないんですよ。
 
はな:想像がつかないですね……。

やひろ:でも、なんとかするじゃないですか。
 
はな:まあ、しますよね。そういう状況になっちゃったら。
 
やひろ:だから、ほんねはなさんも、とりあえず田舎に行っちゃってるから、現実問題として、目の前のことに対応しなきゃいけないっていうのが原動力なんじゃないかなと。そもそも、限界集落レベルの田舎に行くこと自体が、相当決心がいることじゃないですか。
 
はな:そうですよね。なかなかそれができないから、みんな情報集めたりするわけですもんね。


都会に出たいと思いますか?

やひろ:ちょっと最近、インタビューに先立って復習をしようと思って、ほんねはなさんのnoteを読み返してました。それで、あらためて時系列を整理してたんですけど、いまお住まいの地域に行かれたのって比較的最近ですよね?

はな:2019年のはじめですね。なのでまだ、丸2年とちょっと、ってところです。

やひろ:やっと慣れてきたかな、ぐらいの感じですかね。 

はな:そうですね。最初の1年目は、精神的にも環境的にも、ちょっと調子が悪くなっちゃうぐらいめちゃめちゃだったんですけど、2年目に入ってからなんとなく落ち着いてきたって感じですかね。

やひろ:それまではどういうところにいらっしゃったんですか?
 
はな:移住してくる前は、地方都市にいました。地方都市といっても、人口数万人レベルの「市」です。
 
やひろ:それまでも、大都会にいた、というわけではなく。
 
はな:はい、そこも田舎寄りの場所ではあります。でも、東京まで1時間ちょっとで行けるぐらいロケーションですね。
 
やひろ:東京まで1時間だったら、わりとアクセス良いですね。僕、ちょっと前に住んでた東京の家でも、新宿とか行くと1時間ぐらいかかりましたよ。
 
はな:そうですね。高速バスで、1500円ぐらいで行けちゃうような感じです。交通の便のよい田舎です(笑)。
 
やひろ:なるほど。でも、意外と交通の便がいい田舎ってありますよね。ちょっと前に静岡に奥さんと旅行に行ったんですけど、泊まった温泉が結構な田舎で。静岡市から車で1時間ぐらいで行けるところなんですけど、川と山以外、周囲に何にもない。

19時半ぐらいに夕飯を静岡市で食べてから行ったんですけど、残り1キロになっても民家が見えないんですよ(笑)。残り500メートルになっても出てこない。道がくねくねしてるんで、200メートルぐらいしたらなんか人がいる気配がするっていう感じになってきて。最終的には問題なく着いたんですが、周囲に5軒ぐらい温泉宿があるだけで、それ以外にはなんもない、なかなか秘境感のあるところでした。

でも、何よりびっくりしたのは、そういうところまで、県庁からでもたった1時間で行ける、っていうところです。
 
はな:田舎って、距離的に離れていそうで、意外とすぐ行けちゃうところもけっこうありますからね。
 
やひろ:交通の便が良すぎて、逆に出ていっちゃうんですかね、人が。
 
はな:田舎だとなかなか稼げる仕事がないから、都会の大学に行けるように勉強しろって親が教育しているパターンがあります。たとえば、自分たちは田舎で暮らしてきたんだけど、決して安定した生活じゃないから、子どもを都会に送り出しちゃう、っていうケースですね。
 
やひろ:それは、親は子どもに出ていって欲しい、ってことですか?
 
はな:一概には言えませんけど、それが子どもにとって良いと思っている、っていうことですね。考え方としては「都会に出てけ派」と「田舎に留まってくれ派」に二分してる感じです。残ってほしい親は親で、「この土地はいいところだから、ずっといなさい」っていう教育を施してたりして。

やひろ:でもやっぱり、自分が商売してたり、農家だったりすると、継いでほしいパターンの人は多いんじゃないですか?
 
はな:それも人によって方針が違います。自分がやっててしんどいから、子どもにはやらせたくない、みたいな人もいるんですよね。
 
やひろ:いるんだ。
 
はな:いますいます。見てると、けっこう複雑な心理が働いてる感じですね。
 
やひろ:でも、ほんねはなさんは外部の人間だったのに、自らそこに突っ込んでいったわけじゃないですか。流れに逆らって(笑)。自ら入ってくる、っていうケースが第3の勢力としてある、っていう感じですかね。ケースとしてはやはりけっこう珍しいんでしょうか?
 
はな:うちの町だと、いるにはいるんですけど、あんまり多くはないですね。あとは、せっかく来ても帰っちゃうパターンもあります。来たはいいものの、定着しないで帰っちゃう、っていう人は結構多いです。

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田舎の人間関係って、どうですか?

やひろ:問題は、やっぱり仕事がない、みたいなところだったりするんですかね?
 
はな:仕事もそうですけど、一番は人間関係ですね。「集落に合わない」とかの理由で帰っちゃう人が多いみたいですね。もちろん、仕事もないのも理由に含まれます。人間関係がうまくいかないわ、仕事がないわのダブルコンボで帰っちゃう、みたいな感じでしょうか。

やひろ:そこがすごく不思議なポイントなんですよ。ほんねはなさんって、もともとあまり人付きあいがあまり得意じゃない、みたいなことをnoteの記事で書かれてるじゃないですか。そんな人が、人付き合いが濃くて、難易度の高い田舎に行ったのはなんでなんだろう。

はな:なんか私、都会が合わないみたいなんですよね。「都会の人間関係」のほうに違和感があるというか。私がいま住んでるところは、田舎は田舎なんですけど、もともと母の実家なので、馴染みもあるし、もともと好きな土地だった、っていうのはあります。

実際に住んでみてあらためて思ったんですけど、人間関係は都会よりもこっちのほうが楽です。なんだろう、高齢者が多いからかな? 私、若い人苦手なんです。

やひろ:あー、わかる。

はな:同年代が苦手なんですよね。こっちは、周囲が自分の親世代ばっかりなんですよ。合っているっていうか、楽なんですよね。

やひろ:そうか、都会の人間関係って確かに同世代の付き合いが多いかも。

はな:そうなんですよ。私、都会は「比較する社会」だと思ってます。互いに無関心なくせに、妙に比較する傾向にあるというか。

やひろ:確かに。

はな:みんな、本質的に他人と関わらないのに、関心だけはあるから、他人と自分を比較して、評価するみたいな。その「比較の文化」が嫌なんですよね。表面的な部分を比較するぐらいなら、もっと互いにコミュニケーションとって、直接話したらいいのに、みたいな。

田舎の人って、土足でガンガン踏み込んでくるんで、垣根がなくなってくるんですけど、都会の人は妙に他人と距離感がある。距離をとりながら、本質的じゃないどうでもいいところでマウントを取り合ってるっていう感じですかね。

今までの私の人間関係のパターン見てると、そういうことが結構あったんですよね。それが嫌で。

やひろ:まあ、都会って、定義的にも「人がいっぱいいる」ので。その集団の中で、なにかしら「比較」する必要があるんでしょうね。マウントをとらないと、存在感を示せないというか。

はな:それが合わないんです。もちろん、田舎にも、上下関係とかやっかみとかもあるんですけど、ちょっと質が違う感じなんですよね。

やひろ:なるほど。僕も共感できる部分があります。僕は、そういう比較したりされたりっていうのが嫌なので、そもそも競争に加わらないようにするんですよ。

なんかね、人が一生懸命競争してたら、それに加わらないで、一人でできる遊びを勝手に始めて、そこに人を寄せようとすることが多いというか(笑)。

はな:自分の遊びに、仲間をちょっとずつ集めていく、みたいな感じですか。

やひろ:中学生ぐらいの頃って、「みんなが聴いてる音楽」とかあるじゃないですか。それ聴いてないと話題に加われないとか。そういうものに加わりたくないから、あえてそこから外れて、北欧のデスメタルみたいなやつを聞いて、それを友達に聞かせて、自分の勢力を拡大していくみたいなことをやってました。

はな:デスメタル勢力を(笑)。

やひろ:そう。それをお昼休みに教室でかけたりとかしてね、少しずつ勢力を伸ばすっていう(笑)。競争に加わらない生き方をしてきたから、そんなにしんどくなかった、っていうのはあるかもしれません。

はな:私も、「みんなが好きなもの」に追従するタイプではなかったです。つい、マイナーなほうに深堀りしていっちゃうタイプで。流行ってるときに流行ってるものを見たくない、みたいなことはけっこうありますね。

やひろ:だから、そういう部分はお互いけっこう似てるんじゃないかな、と。なんにせよ、田舎の人間関係の疑問点は解消されました。

はな:能動的に動いたというよりも、自分が適しているものを見極めた結果がそうだった、っていうだけかもしれません。なんか、同世代の人と接してもあまりうまくいかず、向こうも向こうで、訝しげに私のことを見るんです。

もちろん、付き合うこともできるんですけど、互いにちょっとぎくしゃくしてるところがあって。一方で、おじいちゃんおばあちゃん世代に対しては、無条件に気に入られて、可愛がられるところがあったんです。

だから、自分はきっと年上の人たちのあいだのほうが自分らしくいられるんだ、っていう結論に至ったというか。


家賃って、いくらぐらいですか?

やひろ:とはいえ、人口そのものが少ないわけですよね。いま住んでいる地区にはほんの数人しかいない、という記事を読んだんですけど、本当ですか?

はな:地域としては、「町」に所属してるんですけど、「町」そのものがすごく広いので、その中に「集落」が点在してる感じですかね。私のいる地域は、数ある「集落」の中でもさらに山奥で、うち入れて7軒、ちゃんと住んでる人で6軒です。

やひろ:みなさん農業をされてるんでしょうか?

はな:この集落は専業農家が多くて、2軒がそうです。あとの方は、外に勤めに出ていますね。

やひろ:勤め先も、一応あるんですね。

はな:職種は限られますけど、あります。インフラ関係っていうんですかね、公務員、農協、運送業、郵便局とかそういうのです。あと、介護。高齢者が多いわりに、介護する人がいないんです。賃金は、都会に比べたらかなり安いですね。

やひろ:僕は東京に住んでるんですけど、以前は愛知に住んでいて、引っ越したときに一番インパクトが大きかったのが、「車を手放した」ことなんですよね。

車って、ガソリンはもちろん、維持費とかもかなりかかるので、車がなくても暮らせる、っていうのは大きいです。電車でどこでも行けるし、徒歩圏内にもいろいろお店とかあるので、便利なんですよ。

だから、東京に来てむしろ生活コスト下がったな、って思ってて。

はな:へえ、そうなんですね。家賃ぐらいですかね、高いのって。

やひろ:家賃は、もちろん他の地域と比較したら高いとは思います。でも、うちは奥さんと二人で暮らしてて、10万円前後ぐらいですね。

はな:うち、一軒家で1万円ですよ(笑)。

やひろ:やばすぎる(笑)。

はな:広さもすごいですからね。3ヘクタールを家主さんが持ってるんですけど、家の敷地だけで一反(約300坪)ぐらいあって、1万円です。畑も入れると二反ぐらいあります。

やひろ:その規模になると、もはやなんの1万円かわからないですよね(笑)。

はな:本当はタダでいいって言われたんですけど、形式上取っておいたほうがいいんじゃないのって周りの人に言われて、1万円、みたいな感じで。家賃なのに、しぶしぶ取ってくれた、みたいになってます(笑)。

やひろ:タダだったら、それはそれで別の問題に発展しそうですよね。

はな:それもあるし、そもそも申し訳ない、というのもあるんで。だから取ってください、って言って、そうなりました。

やひろ:でも、家の修繕とか、土地の手入れとかいろいろあるだろうから、コストはなんだかんだかかりますよね。

はな:かかりますね。トータルで見たら、車もそうですし、田舎のほうがかかるコストは多いぐらいかもしれません。

やひろ:そうそう。だから、家賃の低さよりも、そもそも「住める状態」に持っていく費用と労力がすごいな、と思っていて。それを考えたら、全然安くはないですよ。

はな:大変でした。よくやった、っていろんな人に言われました(笑)。

やひろ:でも、それだけ使われずに放置されてるリソースが日本にはたくさんある、ってことなんだから。空き家を再生させる「ほんねはなメソッド」は、全若者が目を通すべきコンテンツなんじゃないですか(笑)。

はな:まあ、田舎で暮らしはじめたい人の相談には乗れると思います。


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田舎暮らしって、どうですか?

やひろ:僕は年明けに転職したんですけど、いま、コロナの影響で出社が原則禁止されてるんですよ。

はな:完全にテレワークですか?

やひろ:基本的にはそうですね。緊急事態宣言中は原則出社禁止で、それ以外の期間は、必要なら申請あげてください、って感じです。だから、僕また入社してから三回しか出社してないんですよ。

はな:だいぶ徹底してますね……。

やひろ:でも、驚くべきことに、それでも仕事ってできるんですよね。できちゃうので、むしろ東京にいる意味あるのかな? って思います。

はな:私の住んでいる地域にも、テレワークされてる方、いますよ。

やひろ:要するに、ネットが使えればいけるんですよ。そちらのネット環境はどんな感じですか?

はな:山奥で圏外になるところとかはありますけど、いま私が住んでるところも、光回線がきてます。ネットが使えるので、買い物なんかも、時間がかかったり、実物が見られないという問題はありますけど、そこまで不便は感じないですね。「購入」という点では、田舎と都会の差はあんまりないのかな、と。

やひろ:山奥だけど、ニンテンドースイッチやってるぜ、みたいな。ネットフリックスも見れるし。

はな:若い方はそんな感じです。

やひろ:僕も東京にいますけど、自分の生活を振り返ってみると、あんまり東京いる意味ってないんですよね。

はな:恩恵があるとしたら、お店がいっぱいあるとか、そういう部分でしょうか?

やひろ:うち、夫婦揃ってあんまり繁華街とかに行く習慣がないので、新宿とかはわりとすぐ行けるんですけど、月一回も行かないですね。行った時は、買い物したりするんですけど、必要性に迫られて、というよりは「買い物」というイベントを楽しみに行く、って感じかな。

はな:それ、わかります。うちも、30キロぐらい行かないと、繁華街っぽいところに行けないんですよね。山を超えていかないといけないので、ちょっとしたイベント感覚です。

まあ、信号がないので1時間かからないぐらいで行けちゃうんですけど、なんせ遠いし、山越えの必要があるので、それなりに気合が必要です。

やひろ:でも、たまに出かけたくなりますよね。買い物ってだけでも、イベント感覚なら、リフレッシュにはなりますよね。

はな:自分の住んでる地域だと、行くお店も固定されてるんで、たまに違うお店に行きたくなるんです。田舎だからか、新商品とかもあんまり入荷されないので(笑)。ちょっと刺激が欲しいとき、変わったものが欲しいときに、30キロぐらい離れた場所に行く、って感じです。

でも、慣れたら思ったより暮らしやすい場所だな、って思うようになりました。私、最初は茨城にいたんですが、茨城って関東圏なんでけっこうお店っていっぱいあったんですよね。東北に来て一番感じたのが、そもそもお店の種類が少ないんです。なんか、ローカルの独自のチェーンなんかが多くて(笑)、関東と同じチェーンがあんまりないんです。

最初、こんなにお店が少なくて大丈夫かな? って思ってたんですけど、わりとすぐに慣れました。今は、ガストとかなくても大丈夫です(笑)。たまに行きたくなるんですけどね、ジャンクなところに。

やひろ:体にいいものばかり食べてても、逆にだめですからね、人間は(笑)。

はな:そう、いまでは「悪いこと=ジャンクフード」みたいな。健全ですよね。すごく健全。

やひろ:田舎については、ガッツリそこに定住するというのももちろんアリですけど、もっとライトに、「行き来する」みたいなライフスタイルが広まってもいいのかな、と思います。

僕だって、週に一度しか会社に行かないわけだから、あとの6日間、東京にいる必要性は全くないですからね。

はな:うちみたいに1万円とか、そういう安い家賃で借りられるところもあるので、そういうところを本拠地とは別で持っておくのも選択肢のひとつかもしれませんね。

こっちだと、土地付きで300万円とかで買えますから(笑)。たまに、テレワークでこっちに来る、というのもありなんじゃないか、とは思います。

やひろ:都会と田舎の定義の話でいくと、人が勝手に集まってるのが都会で、いないのが田舎、ってだけなんですよね。本来、土地って平等にあるものなんだけど、人の分布の度合いによって都会・田舎が決まっているというか。

都会に住む必然性がないんだったら、もっと散らばってもいいんじゃないかと思うんですよね。

はな:あとは、自然環境ですかね。暑さ、寒さにどれだけ対応できるか。私、よく友人に「よく雪国に住めるね」って言われたりするんですよ。遊びに行くのはいいけど、寒いと住むのはちょっと……、みたいな。

やひろ:寒さって、実際かなり厳しいんですか? 雪国だから、逆に対策がしっかりしてるとか。

はな:いや、ここはそんなにばっちりなほうじゃないと思います。家が古いんで、全然断熱材とかが入ってないんですよね。だからほぼ掘立小屋みたいな感じです。

やひろ:掘立小屋(笑)。昔の家って、基本設計として、風通しがいいですもんね。

はな:そうなんですよ。屋根も、トタンに木で下地が打ってあって終わり、とか。その下が、もう天井ですからね。ほんと、コテージみたいな感じです(笑)。

やひろ:コテージ(笑)。いまは越冬して、とりあえず一区切りって感じですかね。

はな:はい。でも、同じ町内の人からも、雪が多い地区だってことが知れ渡っているので、「あそこに住んでるの? 大丈夫?」みたいなことはよく言われます。「なんでわざわざ選んだの?」「人が住む場所じゃないよね」とまで言われたり(笑)。

でも、住んでみたらなんとかなりました。人が住む場所じゃねえとか言われても、工夫で乗り切りました。

やひろ:寒さが苦手な人には地獄ですね。あと、雪対策とかも。

はな:雪かきも、機械とかがないと正直きついですね。私、今年は手動で雪かきしたんですが、近所の人が週一ぐらいで除雪機を使って雪を飛ばしにきてくれました。あと、トラクターで雪を押してくれたり。放っておくと、家のまわりにどんどん雪が溜まっていって、家が見えなくなっちゃうんですよ(笑)。

やひろ:そういうところも、互助関係というか、ご近所さんの関係性が大事ですね。

はな:本当に。周囲の人たちとの関係性は死活的に重要です。

やひろ:人間関係って、集団だったらどこでも重要だと思うんですよ。普通のサラリーマンとかでも、「貸し借り」というか、「仕事お願いねー」とか「これやっといたよ」とか、お金の介在しないやりとりって存在するんですよ。

ただ、そういうことを軽視しても一応生きられるのが都会なんですけど、かなり重要な問題に発展するのが田舎なんですよね。

はな:田舎でも、特に山奥だと誰も助けに来てくれないので、集落の中で助け合わないと死んでしまうかもしれない、っていう恐怖は常にあります。また、予防的な行動として、定期的に周囲の人と定期的にコミュニケーションをとっておく、っていうのも重要です。高齢者が多いので、「あの人最近見ないよね」みたいなのがあると、大変なことになるので。

そういう、地域のネットワークを自分たちで作っておかないと、自治体もお金がないし、人もいないので、そこまで面倒見られないんですよね。

「ぽつんと一軒家」とかも、最近流行ってますけど、現実的に生活は厳しいと思いますよ。憧れる気持ちはわかりますけども。

やひろ:やたら美化された田舎暮らし、っていうのは確かにあるかもしれないですね。

はな:生活に命がかかってるので。現実的に厳しいところを、移住前に伝えていかないと、ギャップに苦しんで、最終的に去っていっちゃうこともあるんですよね。

やひろ:でも、帰っちゃう人たちがいたとしても、ほんねはなさんみたいに適合できた人たちもいるわけだから、選択肢のひとつとして「アリ」なんだと思うし、適合できたらそれはそれでハッピーなことですよね。

はな:そうですね。だから間口を広くとるというか、潜在的な希望者をたくさんとっておかないと、実際に定住される方が増えるまでには至らないのかな、って。

大半の人は、希望があっても憧れで終わっちゃいます。実際に行動に移す人は少数派ですね。

やひろ:行動は、何かを捨てないとできないですからね。「何も持ってない人」は、そういう意味では強いですけど。

はな:一番それが身軽ですからね。


就農って、どうですか?

やひろ:もうひとつ聞いてみたいのが、農業に関してです。農地を取得しようとされてると思うんですが、いまはどういう状況ですか?

はな:いろんなしがらみがあって、まだ最終決定には至っていない状況です。新規就農は、まず農地を探すところからスタートするんですが、なんのコネもなかったので、近所の人とかから情報収集をはじめて。

で、最終的にいくつか絞り込んだんですが、いまは上の人の判断を待っている感じです。

やひろ:そこのハードルってなんかいきなり高いですよね。そもそも、まだはじまってすらいないじゃないですか、それって。

はな:私、いま地域おこし協力隊をやってるんですけど、私の地域で地域おこし協力隊やってる人が少ないので、いろんな人の期待もかかってたりします。

でも、努力の甲斐あって、前進はしていると思います。農作業の手伝いをはじめた一年目は、そもそも身体がついてこなくて、大変でした。熱中症みたいなのに何度かなりかけて、右目が眼底出血して欠けちゃったり。身体がボロボロになっちゃったので、何ヶ月か農業禁止って言われて、役場に缶詰になってた時期があったり。

一年目の終わりぐらいに、もう限界になって、「私には就農は無理です」って行政の方に言ったんですけど、「自分が就農しなくても、就農したい人にPRするのも仕事だから」みたいなことになったりして。

一方で、2年目に入ったら農作業も慣れてきて、やれるかもしれない、と思い始めました。いろいろ考えたうえで、やっと就農のほうに気持ちが動いていった、って感じですね。

やひろ:でも、農作業やったことない人がいきなりはじめようとしても、身体がついてこないのは当然のことじゃないですか? ストップかけてくれる人が周囲にいなくて、無理しちゃったみたいなところもあったとか。

はな:そうですね。私がなかなか言い出せなかった、というのはあるんですけど。研修させていただいている手前、トイレ行きたいですとかもなかなか言えないんですよ。トイレも、その農家の家のものなので。

休憩時間とかはあるんですけど、手伝いにきる分際で勝手に休憩したり水飲んでたりしたら感じ悪いよな、という気持ちもあって、けっこう我慢しちゃったんですよね。女性が就農する、という点でも、そこはひとつのハードルなんじゃないかなと思います。

やひろ:農業自体は昔から関心あったんですか?

はな:そうですね。30歳ぐらいのときに日本茶アドバイザーっていう日本茶の資格をとったんですが、その中にお茶の栽培みたいなことも内容に含まれていたんですね。そのときに、お茶の農家さんに見学に行ったりして、製造過程とかを見せてもらったときに、就農もいいな、って思ったことがあります。

ただ、うち、実家が普通に会社員で、全然農業と関係ないんですよ。農地とか機械のことを考えると、お金もすごくかかるし、コネも知識もない状態から就農するのはハードルが高すぎるな、って思って。そのぐらいのときに、鬱で入院しちゃって、身体も精神もめちゃめちゃになっちゃって。

やひろ:壮絶ですね、なんか……。

はな:本当に、山あり谷ありすぎて自分の人生、みたいな。

やひろ:いまは、これまでの人生を振り返ったら、いい感じですか?

はな:そうですね。いまは全然元気です。

やひろ:本当に、就農に関しては、スタート地点に立つまでがすごく大変だなと思いました。いまちょっと話聞いただけでも改善できる部分というか、自治体以上の組織がなんとかするべき問題がいくつか見えてきましたね。

はな:いや、ほんとに。農業に関することだけじゃなくて、家とかも同時に探さないといけないですしね。農業やるんだったら家も必要だし、農地も必要だし、小屋とか、農業資材、機械、それだけでも何千万円レベルです。

やひろ:覚悟としたら起業レベルっていうか、起業以上に必要かもしれないですね。

はな:完全に起業ですね。農業はほんと、初期コストの高さがみんな尻込みする一番の要因だと思います。

やひろ:でも、そういう苦労を経て農地を取得した暁には、そこが自分の領土というか、戦場になるわけですね。

はな:そうですね。きっと家に帰ってこられなくなるでしょうね(笑)。

やひろ:候補の農地は、距離的には遠かったりするんですか?

はな:近いです。一キロちょっとぐらいですかね。

やひろ:軽トラで行くわけですね、そこまで。

はな:そう、軽トラ。ただ、マニュアル車なんですよね。しばらく運転してないんで、練習しないとやばいですね。オートマの軽トラもあるんですけど、玉数が少ないからどうしても高くなっちゃうっていうのもあるし、周囲の農家の方のトラックはたいていマニュアルなんで、動かす機会もあるだろうし、慣れておくに越したことはないな、って。自分を追い込む作戦です。


地域おこし協力隊って、なんですか?

やひろ:この一連のことに関して、ご主人はどんな反応なんですか?

はな:好きにやったら、って感じです。あんまり、ここに関与はしてこないですね。

やひろ:でも、ここで一緒に暮らそう、って言って一緒に来たわけですよね。

はな:もともと、田舎暮らしに憧れてたのは旦那さんで、地域おこし協力隊も、最初は旦那さんがやりたがってたんですよね。たぶん仕事が嫌で、っていう典型的なダメ移住パターンです。

結婚してから、どんどん仕事が忙しくなっちゃって、激務すぎて、自分の時間が全然なくて、現実逃避みたいな感じなっちゃったんです。田舎で転職だ、ってなったときに、地域おこし協力隊っていうのがあるらしい、っていうのを見つけてきて。最初、何ヶ所か応募したんですけど通らず、結局、なぜか私も応募することに。

応募するときに、自分が協力隊に応募するんだったら何がやりたいかなって考えたら、一回諦めた農業がやってみたいな、と。で、場所は母の実家近くで、行ったことのある市町村がいいと思って。それで、応募したら通っちゃったんですよ。

やひろ:ちょっと僕、基礎知識が足りないんですけど、地域おこし協力隊っていうのはどういう組織なんですか?

はな:総務省管轄の、国の施策ですね。特別交付税っていう、国から地方に落ちてる予算を使って、都会から過疎地域に移住してもらって、定住を促す制度です。

年齢制限がない自治体もあるんですけど、基本的には若者で、一年以上三年未満の期限で地域おこし活動をしてもらって、最終的には定住してもらう、っていう。

やひろ:給与というか、報酬はどうなってるんですか?

はな:報酬は月額固定です。自治体によって異なるんですけど、基準の金額が決まっていて、それに自治体からちょっと上乗せして、っていう形が多いです。ただ、規定通りの金額で、上乗せをしていないところもありますね。基準の金額は、活動費が200万円、給与200万円です。

やひろ:でも、応募してもなかなか通らないんですよね?

はな:そうですね。マッチングがうまくいかないとなかなか通らない、ということはあります。現役で5500人ぐらいいる規模感ですね。うちの町の場合は、募集かけてもなかなか人が集まらなかったのか、私が第一号です。

やひろ:協力隊同士、横の繋がりとかもあるんですか?

はな:あります。私のいる県の中で、定期的に勉強会、研修、意見交換会みたいなことはやってます。東京で、二泊三日、カンヅメで研修する、っていうイベントもありました。

でも、協力隊の人たちとは、特定の人たちと関わりを持ってるだけで、そんなに横のつながりがあるわけじゃないです。ちょっとテンション的に合わないな、って感じる人もいたりして。

やひろ:みなさん農業をされてるんですか?

はな:いや、「地域おこし」全般がテーマなんで、けっこう幅広いんですよね。中には、「場づくり」とか、イベント企画とかをやっている人もいます。

やひろ:そういう意味でいうと、農業ってけっこう渋いというか、なかなかハードな部類ですよね。人気はあんまりなかったりするんでしょうか。

はな:もともと地域おこし協力隊の前身が農業主体だったというのもあって、初期は農業に課題意識をもってる人たちが多かったみたいです。いまはあんまり人気がないというか、観光振興とかそっちのほうが人気がありますね。

ただ、一番私が思ってるのは、協力隊と就農ってとても相性がいいんです。農家としての収入が得られない研修期間とか、もちろん地域おこし活動は必要なんですけど、農家さんの手伝いを通じて自分の知識とか技術を身につけるのって、田舎暮らしに馴染むという観点からも本当に有効で。

だからこそ、この制度をうまく利用して就農に漕ぎ着けてほしいな、って思います。他にもこのことについて言及されてる協力隊のOB/OGの方はいらっしゃるんですけど、私も自分の活動の中で強調したい部分ではありますね。

やひろ:なるほど。協力隊の期間は上限があるから、もうそのうち終わっちゃうんでしょうか?

はな:はい、あと10ヶ月ですね。

やひろ:あと一年未満で、ってことですね。でも、農業の道に着地するための準備期間として有効に活用できたって感じですかね。

はな:そうですね。私の場合、最初一年フワフワしちゃったんでそこがアレだったんですけど、就農する気持ちが固まってからは全力でやれたので、そこはよかったですね。葛藤する期間が長すぎたかもしれませんけど。


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何を栽培するんですか?

やひろ:栽培の品目としては、何をされるんですか?

はな:アスパラです。一応、私のいる地域の隣町で、地域商標みたいなのをとってるんですよね。

農家が高齢化していっているっていう事情もあるんですが、アスパラに決めた一番の理由は、これまでいろんな農家さんのところでいろんな品目のお手伝いをやったんですけど、その中で一番「違和感がなかった」のが大きいです。自分の中で、「嫌な部分」が少なかった品目だから、アスパラに決めました。

やひろ:でもそれ、リアリティあっていいですね。僕みたいになんの知識もない人が「農家として、何つくる?」って問われても、全く見当もつかないんですけど、「いろいろやってみた結果、一番自分に合ってる」っていうのは説得力ありますよね。

はな:最初の就農するって決めたときに、この地域の振興作物でおすすめとして三つぐらい提案されたうちのひとつではあります。実際にやってみないと、どういう作業が嫌かとか、なかなかわからないんですよね。

たとえば、害虫の種類とか。アスパラってそんなに芋虫系とかはつかないんですけど、キャベツとかは青虫がすごいつくんですよ。私、爬虫類は大丈夫なんですけど、毛虫系がダメなんですよ。青虫とか、見つけ次第掴んで潰せとか言われても抵抗あるし、ストレスだなって思って。

農業って、ただでさえ肉体的にも厳しいし、精神的にも追い込まれるんで、ネガティブ要素は少しでも少ないほうがいいというか、作業自体で好きだなと思えるところがないと本当に無理です。そういったことを総合的に考えて、アスパラにしました。

やひろ:好きなところは、たとえばどんなところですか?

はな:まあ、おいしい、ってところですかね。あと、B級品でも絶対売れる、っていうのは魅力です。アスパラって、嫌いな人が少ないんですよね。

たとえばトマトとかって、売れることは売れるけど好き嫌いがあるんですよ。あと、農家さん自体が多くて、市場が飽和状態だ、っていうのもあります。

やひろ:アスパラ農家は多いんですか?

はな:アスパラはそこまで飽和するほどじゃないですね。こっちの地方じゃ、むしろ足りないぐらい。収穫できるまでに2、3年かかるというのあって、そのあいだの収入がないので、なかなか大変なんですよね。

やひろ:その期間、乗り越えられますか? 大丈夫ですか?

はな:その二年間は、国から補助金が出るので、最低限のお金をいただきながら研修受けて、ってやろうと思ってます。なので、完全に自分だけの力じゃなくて、いろんな人の税金を使って、就農しようとしてるんですよね。もはや自分のためだけじゃなくて、半分恩返しみたいな要素もあります。


人生の主導権を握ってますか?

やひろ:スケールが大きくなっていってる。

はな:そうなんですよね。背負ってるものがどんどん大きくなってる感覚はあります。もっと背負ってる人もいくらでもいるとは思うんですけど、半分、自分の意思じゃないみたいなところはあります。世界が勝手に動いていってるんです(笑)。

やひろ:でも、自分で人生切り開いてやってる感じはありますよね。

はな:そうですね。この状況になって、よかったんだろうな、とは思いますね。その証拠に、だいぶ元気になったんで。

やひろ:「人生の主導権」を握ってる感じがします。

はな:そうですね。自分で手綱握って、いま走ってるぞ、っていう。これが「生きる」っていうことなんだ、みたいな実感はあります。

やひろ:都会で働いてると、「そもそもなんで働いてるんだっけ?」って迷い道みたいなところに入っちゃう人っていっぱいいると思うんですよ。人間の根本的な欲求で、「何者かになりたい」「何者かわからない」っていうのは、けっこうあるんじゃないかと最近思ってて。

たとえば大きな組織の中で、仕事はしてるはずなんだけど特に褒められることもないし、叱られもないし、人望もなく、やれと言われたことを淡々とやって糊口をしのいでいる人っていっぱいいると思うんですけど、そういう人たちって、わりと生きててつらいと思うんですよね。

たとえお金がそれなりにあったとしても、ぱっとしない人生というか。

はな:そうですよね。

やひろ:だから、そういう人たちは、他人に対して、しょうもないことでマウントをとるんですよ。自分が集団の中で目立てる、強いものを見つけて、弱い人を虐げる。これって、本能的なものだと思ってます。

でも、ほんねはなさんの生き方って、そういうところがあまりないじゃないですか。孤独といえば孤独かもしれないけれど、自分の人生を生きてる。自分の力で自分の人生の手綱を握って生きていく、という生き方なんで、非常に素晴らしいと思いますね。

都会で、しょうもないことでマウントとってる人たちに聞かせてやりたいですよ(笑)。

はな:でも私も、茨城にいたら同じだったと思います。茨城を離れたから、田舎にきたからこういうふうに自分の手綱を握れるようになった、っていうのはあるはずです。たまたま環境を変えてよかったというか、自分に合ってる畑に出会えた、ということかもしれないですけど。

たぶん、人によって何がいいかは違うんじゃないですか。都会で芽を出せる人もいるんでしょうけど、私は向いてなかった。そういう意味で、まだダメな部分はありつつも、変われてよかった、とは思いますね。

やひろ:でも、今の時代って、いろんな仕事が細分化されていて、「なんのために働いてるのかわからない人」って多いですからね。自分はこういう仕事をしてるんだ、ってちゃんと胸張って言えるというだけで素晴らしいことだと思いますよ。

僕は逆に都会で働いてるんですけど、びっくりするぐらい「何も考えてない人」って多いですよ。考える能力があるのかないのかはわからないんですけど、とりあえず何かを考えるように見えない。決して機会がないわけじゃなくて、考えることを求められているんだけど、考えようとしないんですね。たとえば、一年ぐらいルーティンで回してる仕事があったとして、外部から僕みたいな人間が入ってくると、現状で問題だらけなんですよ。

もっと効率化できるし、問題も減らせる。そうなると、「この人たち、何してたんだろう?」ってなります。単純に、能力がないとかで一括りにしてもいいんですけど、本当にそれだけかな? とは思ってて。

能力がないって非難することは簡単なんだけど、トリガーがかからないというか、半分寝ているというか、「目が覚めてない」んでしょうね。そういう人たちを、まとめてアジアの田舎にでも放り込みたいぐらいなんですよ。そうしたら、嫌でも目が覚めると思うから。

はな:過激(笑)。そういう人たちは、もしかしたら「考え方」がわからないのかな、っていうふうにも思います。

やひろ:でも、ほんねはなさんだって敷かれたレールがない中で、前進できる方法を考えて手も動かして、ってやるわけじゃないですか。そのバイタリティが、もっとみんなの希望になるといいな、って思うんですけど。

はな:自分ではそんなにバイタリティがあるほうだと思ってないんですけど、やってることを客観的に見たら、そう見えるかもしれませんね。

やひろ:要は、生きるうえで「問題」にぶち当たってないんでしょうね、きっと。なんか起きても会社員だから、危機感がないというか。でも、田舎で暮らすとなったら、そんなもんじゃないぞと。

はな:本当に。普通に生きてたら、生死に関わるようなことって滅多に起きないじゃないですか。でも、田舎だと、わりと日常的に、「危機的なこと」がある。たとえば、マムシが出たとして、マムシに噛まれたらどうしよう、とか。生と死が近い環境なのかもしれません。

作物も、育つまでの過程が見えて、「生きてる」感じがするし、野生の生き物にだってたくさん遭遇します。でも、そういう生き物が道端で死んでたり、駆除された猪とかもいるわけですよ。

私は解体とか見るの平気なんで見るんですけど、そういうのを見ると、「生と死」が身近にある環境なんだ、っていうことを実感しますね。そういう刺激が、結果的に生きてる実感につながっていて、私が元気になった一番の要因だったりするんですよね。

作物も育つまでの過程が見えるし、生き物とかも野生の動物がいっぱいいる。その生き物が、道端で死んでたり、あとは猪を有害鳥獣として撃ったりもするわけですよ。

そういう、昔ながらの人間の生き方が田舎にはあるんですよね。だからそこが一番、私が元気になった理由だと思います。

やひろ:すごいな。それで元気になっちゃうんだ。

はな:いやでも、絶対実感すると思いますよ。目の前で解体された猪のお肉を自分で調理して食べるわけですよ。そうすると、「私はあの猪を食べてる」って、絶対わかるわけですよね。

やひろ:都会の人は、死の実感がないんだ。死ぬものも目にしないし、自分が死ぬという実感もない。

はな:動物も人間も、命がけですからね。向こうも食べるために必死で奪いにくる。でも、こっちもそれを取られたら生活できないから、殺すわけですよ。

残酷だ、とか言う人もいるんでしょうけど、どっちがとるかとられるか、っていう世界なんですよね。同じ日本でも、いろんな世界があるんだっていうのは知ってほしいですね。

やひろ:すごい逆説的というか、その厳しい環境にあえて身をおくことで、自らの力を覚醒させるってのもすごい話ですけどね(笑)。

はな:人間、追い込まれたら覚醒せざるを得ないんですよね。だから、きっと覚醒したかったと思うんですよね、私。都会で腐ってる自分が嫌だったから、己を田舎に放り込んだ感じです。

やひろ:僕もこれまでの仕事人生を振り返ると、生き死にには関わらないですけど、自分で考えて自分で動かなきゃいけない、という状況に追い込まれたときって、やっぱり楽しかったですね。大変なんですけど、やっぱり自分のこととして扱えるから楽しいっていうのがありました。

今日の仕事はここまで、っていう線引きが全くなくて、半年後とか一年後どうする、とかいうことをを考えながら自分で試行錯誤していくっていう仕事だったんですけど。そういうのが面白いっていうか、人間の能力を目覚めさせるのかな、って思います。

はな:ある程度の緊張感が覚醒には必要なんでしょうね。

やひろ:なんか壮絶な話になってきましたけどね(笑)。後半にいくにしたがって。最初は田舎暮らしのほんわかした話だったのに。

はな:全然ほんわかしてないんです、田舎。でも、同時に魅力もみんなに知っていただきたいですよね。いいところもあるよ、と。

やひろ:今日はありがとうございました。

はな:ありがとうございました。

ゲストのほんねはなさん、いかがでしたでしょうか。なかなかリアルな声が聞けない田舎暮らしについて、かなり詳しい話を伺えたと思います。

ほんねはなさん、本当にありがとうございました!



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