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【小説】「きみはオフィーリアになれない」

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謎の魚「オフィーリア」をめぐる、現代社会を生きる3人の群像劇。
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2020年4月の記事一覧

「きみはオフィーリアになれない」まえがき

「きみはオフィーリアになれない」というタイトルの小説の連載をはじめます。 noteでは「黄泉…

やひろ
4年前
53

「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #001

●主要登場人物 安達凛子………旅行代理店勤務 梶原江利子……凛子の同僚 瀧本達郎………メン…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #002

 先輩とは同じ大学に通っていたが、一緒の授業を受けていたわけではない。そもそも凛子は文学…

やひろ
4年前
25

「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #003

 凛子はその魚を一目で気に入った。休みの日に、先輩が車に水槽と用具一式を積んでやってきた…

やひろ
4年前
30

「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #004

 凛子は手すりを掴むと、台によじのぼるような動きで、柵の上に立った。普段は全く意識しない…

やひろ
4年前
30

「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #005

 しかし、ちょっと噛まれたぐらいで、こんなに効くなんて。これは猛毒ではないのか。  そう…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #006

 どうすれば夢から覚めるのだろう、と凛子は考えた。夢から覚める方法について考えたことなどない。そういえば、寝ることも、そして起きることも、毎日何気なくやっていることだけれど、どうやってそれをやっているのか、そんなことを考えたことはないな、と気付いた。どうしても覚められない夢があるとして、そこから現実世界に戻るにはどうしたらいいのか、そんな問題に自分が直面するなんて、考えたこともなかった。  凛子は靴を履いて、自分の部屋を出た。自分の部屋の扉を開けた先は、共用の廊下になっている

「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #007

 不意に、凛子のすぐ右のドアに、何かをこすりつけるような音がした。ドアに何かがこすりつけ…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #008

「エイジくんか。クラゲさんがどういう人かはわからないけど……たぶん、知らないと思う」 「…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #009

「おやすみなさい」 「ちょっと、ちょっと、待って! あたしはどうすればいいの?」  凛子は…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #010

 自分は疲れているだけなのだ。そう、ちょっと疲れているだけ……。  ちょっとだけ、眠らせ…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #011

 ゆっくりと影がベランダの床を指さす。目をむけると、そこに、先輩から貰った白い魚が、ぐっ…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #012

 そうやって葛藤していると、凛子の視線に気付いたのかはわからないが、そう思っているうちに…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #013

「だいぶ会議で絞られてたって話だよ。ほら、最近、売上げ悪いからさぁ」  会議というのは支店長以上が参加するエリア会議のことで、各支店の収支報告をする会議だ。管理職ではない凛子は、そこでどういったことが話し合われているのかはわからないが、チーフの恩澤は売上げの低迷を受けて発破をかけられているのかもしれない。支店長の安江は、人柄は温厚なのだが、気が小さいのか、ちょっとしたことですぐに機嫌が悪くなる傾向にある。恩澤も繊細な人柄なので、支店長から八つ当たりでもされて、ストレスが溜まっ