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【高校生物】系統と分類「地球にはどのような生物がいるのか?」

~プロローグ~

「じつに単純なものからきわめて美しくきわめてすばらしい生物種が際限なく発展し、なおも発展しつつあるのだ。」 ダーウィン『種の起源』より


地球には様々な生物がいる。そのような多様な生物は、お互いに、どんなところが似ている(あるいは似ていない)のだろう?
たとえば、ヒトとヒトデの共通点は何だろう?

名前以外に似ているところはあるかな?




★テストに出やすいワード
①二名法(属名+種小名)
②ドメイン
③旧口動物(冠輪動物・脱皮動物)
④新口動物
⑤棘皮動物(五放射相称の体)

補足:動物の分類について、特にテストに出やすいポイント(これだけはぜ~~~~~~~~ったいチェックせよ!!)





要点:学名は属名と種小名で表す(二名法)。

● 生物分類の基本単位を種(しゅ)という。

● 地球上には多様な種が存在し、種と言う概念のみですべての生物をあらわすのは大変である。そこで、近縁な種をまとめて属(ぞく)という階級が設置されている。さらに、近縁な属をまとめて科(か)という階級が設置されている。同様に目(もく)、綱(こう)、門(もん)、界(かい)、ドメインという階級が設置されている(ドメイン>界>門>綱>目>科>属>種)。

語呂「かいもん(買い物)項目家族だね(界、門、綱、目、科、属、種。買い物の項目を共有するのは家族のあかしだね、というイメージで覚える)」

雑談:「分類」は非常に重要な整理法である。たとえば、本屋さんにおいて、近い種類の本が同じ本棚にあるから買い物が簡単になる(雑誌コーナー、実用書コーナー、漫画コーナーなど)。

雑談:ジャガイモ、トマト、ピーマン、タバコ、ナスはナス科の植物である。ウメ、サクラ、リンゴ、バラはバラ科の植物である。ダイコン、カブ、ハクサイ、キャベツ、ブロッコリー、ワサビ、コマツナ、チンゲンサイ、アブラナはアブラナ科の植物である。

雑談:たとえば、ヒト(Homo sapiens)は、ヒト属(Homo)に含まれる。
ヒト属は、ヒト科(Hominidae)に含まれる。
ヒト科は、霊長目(Primates)に含まれる。
霊長目は、ホ乳綱(Mammalia)に含まれる。
ホ乳綱は、脊索動物門(Chordata)に含まれる。
脊索動物門は、動物界(Animalia)に含まれる。
動物界は、真核生物ドメイン(Eukarya)に含まれる。

<Q.ヒトは脊索動物なの?脊椎動物なの?…どちらも正しい(分類の仕方が統一されていない)。脊索動物門に、脊椎動物亜門(脊索の周囲に脊椎骨が形成される)、頭索動物亜門(脊椎骨はなく脊索を終生体全長にわたり持ち続ける。ナメクジウオ類)、尾索動物亜門(脊椎骨はなく脊索を終生あるいは一時期尾部にもつ。ホヤ類など)が含まれるとする分類が一般的であるが、尾索類と頭索類を原索動物門にまとめ、脊椎動物を別門として独立させることも多い。脊索動物の系統については様々な仮説が提唱されてきた。あまり細かいことは入試で問われないので神経質にならなくてもよい。>




● 種の学名は属名(ぞくめい)と種小名(しゅしょうめい)で表す。これを二名法という(なお、種の学名の後に、命名者や命名年をつけることが推奨されている)。スウェーデンの博物学者リンネ二名法によって様々な生物を分類した。

● たとえば、ホモ・サピエンスは、「ホモHomo」が属名、「サピエンスsapiens」が種小名である。

雑談:たとえば、トキの学名はNipponia nipponである(Nipponia が属名。nipponが種小名)。

雑談:属名が異なれば、同じ種小名を付けてよいことになっているので、必ず属名と種小名をセットで記さなければならない(種小名だけで種を表すことはできない)。

雑談:種小名は「学名を構成する2つの単語のうち、属名に続いて記述されるその種の特徴などを表す単語」を指す。種小名は常に小文字で始めなければならない。属名は「その種の所属する属の名称」であり、大文字で始まる。「属名と種小名」のセットで、種の呼称である種名の学名表記が完成する。なお、この資料では表現できていないが、一般に、種名を書く時は、地の文の字体と異なった字体(たとえばイタリック)で記す。


種の学名は属名と種小名で表す。これを二名法という。



雑談:一般に種の学名はラテン語で表記される(博物学が発達しはじめた頃にはもう、日常的にラテン語を使う民族はいなかった。学名にラテン語が用いられるようになった理由の一つに、ラテン語がどの国の学者にとっても中立な言語であったということが挙げられる)。

雑談:リンネは分類学の父と言われる。リンネ以前は、ある動物に複数種が含まれていることが明らかになった時は、もともとある名称にさらに1語を付け加えることでそれらの種を区別していた。なので、とてつもなく長い名前が付いている種もあった。これをリンネが二名法で整理した(ちなみに、リンネは創造主である神の意志を推し量るために分類体系を考案したのであって、進化の結果多様な生物が現れたと考えていたわけではない)。

雑談:リンネは1735年に『自然の体系』の初版を発行し、二名法を採用した。写真は『自然の体系(第10版 第1巻)』。




雑談:二名法は、すでにリンネ以前に提唱されていた(知らなくてよいが、種と属を最初に区別したのは植物学者ボーアンだと言われている)。リンネは二名法を確立・体系化し、分類学の基礎を築いた(リンネは植物、動物、鉱物を取り扱った『自然の体系』を出版し、その中で二名法を採用した)。ただし、テストで「二名法を最初に提唱したのは?」と聞かれたら、高校生はリンネと答えよう(これは正確ではなく、非常に良くない問題だが)。

雑談:リンネは、雄と雌を示すために、占星術の記号である♂と♀を使用し始めた。

雑談:リンネは種不変論者であり、神が創造しただけの種があるとした。リンネは言う。「最初に創造されただけの種が存在する」「種に新しきものなし」(しかし彼は、自然観察を続ける中で、徐々に態度を変えていった)。

● 「おいしい、まずい」「無害、有毒」のように、人間の生活の何かの目的のために生物を分類する方法を人為分類(じんいぶんるい)という。

雑談:人為分類は、もっと広くとらえれば「人間の都合に合わせて、自然界を分けたりまとめたりすること」である。

● 人為分類に対して、自然に即して(自然の秩序に従って)分類することを自然分類という。
*現在では、生物の系統的な類縁関係に基づいた系統分類こそが真の自然分類であると認識されている(系統分類の厳密な定義を気にする必要はない。今まで理科で学んできた、「脊椎動物」とか、「被子植物」とかいう分類が、系統分類である。大雑把に言えば、系統分類は、進化的な道筋に基づいた分類である)。



雑談:自然分類には限界があるとも言われる。従来、自然分類と思われていたものも、後に人為分類であったということがわかることも多い。しかし、遺伝情報が利用できるようになった今日では(主観により目立つ形質を選んで生物を分類していた時代と比べて)分類が高度に発展・精緻化していることは間違いない。

雑談:人為分類が悪い分類なわけではない。「味」や「毒のあるなし」などで分類することは、スムーズに生活を営む上で非常に重要である。スーパーで「この食材の代わりになる物はないかなー」と思った時に、その生物のDNAの塩基配列を検索する人はいないと思う。







要点:生物は細菌ドメイン、古細菌ドメイン、真核生物ドメインに分けられる。


雑談:今まで、大きく生物を分類する方法がいくつも提唱されてきた(下表)。今でも多くの高校教科書では五界説に基づいた説明が行われていることが多い。
*モネラ界=原核生物界
*ホイタッカー=ホイッタカ―

ホイタッカーが提唱した五界説は、今でもよく高校教科書に見られる。



● ウーズは、rRNAの塩基配列の比較によって、界よりも上位の分類としてドメイン細菌ドメイン、古細菌ドメイン、真核生物ドメイン)とよばれる考え方を提唱した。

*細菌と古細菌は原核生物である。

雑談:ウーズは、rRNAの類似性の解析により、メタン生成細菌(現在ではメタン生成菌と呼ばれる)と他の細菌との類縁性が、細菌と真核生物との類縁性と同程度に小さいことに気付いた。すなわち、生物界には、メタン生成細菌(メタン生成菌)、その他の細菌、真核生物の三大グループ(3つのドメイン)が存在していた。メタン生成細菌(メタン生成菌)群は、原始地球の大気組成に似た水素-二酸化炭素を好んで利用する。そのため、「古細菌」の名称が与えられた。その後、飽和食塩水中に生息する高度好塩菌や、超好熱菌が古細菌の系統に含まれることが明らかになった。

● どうして生物を分類するのにrRNAの塩基配列を利用するのか?
①すべての生物がリボソームをもっているので、どのような生物種の間でも比較できる。
②rRNAの変異の速度は非常に遅い(rRNAが重要な分子だからだと考えられている)。よって、遠縁の種同士が比較しやすい。

● 塩基配列を分類に利用する場合、研究者の主観が入らない。さらに、細胞1個からでもゲノム全体の情報が得られる(個体がいなくても、塩基配列から分類ができる。たとえば、魚をヒレの形・位置で分類する場合は、ヒレを含むその魚1匹が丸ごといないと分類できない)。

雑談:ある少女のDNAを手に入れるために悪役が少女を誘拐するという映画ある。しかし、本来、たった細胞1個からでも、ゲノムの情報は得られるはずである(だからこそゲノム情報の扱い方について問題になっている)。


● 真核生物は、細菌より、古細菌に近い。


*真核生物と古細菌の共通性から、真核生物の祖先は古細菌であると考えられている(マーグリスも、共生説の宿主として古細菌を仮定している)。しかし、未解明の部分が多く、確定はしていない。

*下図は大雑把な系統樹のイメージ。





雑談:以下の表は知る必要はない。しかし、ざっと見ても、古細菌と真核生物は共通な点が多いことがわかる。また、細菌・古細菌・真核生物でそれぞれ異なる性質も多いこともわかる。

古細菌と真核生物は共通な点が多い。









問題:細菌、(   )、真核生物は、生物の世界の3ドメインと呼ばれている。空欄を埋めよ。

答え:古細菌


問題:細菌と古細菌を比べた場合、より真核生物に近縁であると考えられているのはどちらか。

答え:古細菌


講義動画【原核生物について】




雑談:以下の系統樹はイメージ(正確ではない)。「?」のもやもやは正確な種の分岐が不明な部分(実線の部分が完全に確定しているというわけではない。ただし、共通祖先がただ1匹なのは、生物の共通性から考えて、間違いないだろう)。

*高校教科書に合わせて記載しているが、あまり正確ではない。たとえば超好熱菌は一般に80℃以上に生育する微生物のグループを指し、単一の種ではない(ただし、超好熱菌はほとんどすべて古細菌ドメインに属する)。

生物界全体の系統樹。




雑談:古細菌に属するメタン生成菌は、湖沼の沼の底や、ウシやシロアリの消化管内などに生息している。ウシ(の内部に生息するメタン生成菌)から排出されるメタンは、温室効果ガスであり、地球温暖化を促進しているとも言われており、問題になっている。メタン生成菌には様々な種が含まれるが、一般に、水素と炭酸ガスからメタンを生成することでエネルギーを得ている絶対嫌気性菌である。メタン生成菌は、嫌気的な環境での有機物の分解に大きく寄与していると言われている(メタン生成菌がいないと、地球は分解反応途中の物質であふれてしまうとも言われる)。

雑談:メタン生成菌は、水素などを電子供与体として二酸化炭素を還元し、最終産物としてメタンを生成するエネルギー代謝系をもつ(以下のメタン生成によってATPを合成している)。
CO2 + 4H2 → CH4(メタン) + 2H2O
上記のメタン生成にはATP合成酵素によるATP合成が関与している(ATP合成酵素が関与しているので、この反応は二酸化炭素呼吸と呼ばれる[かつてはメタン発酵と呼ばれていた])。

雑談:古細菌の膜脂質はエーテル脂質である(グリセロールと炭化水素鎖がエーテル結合している)。細菌や真核生物の膜脂質は主にエステル脂質で、グリセロールと脂肪酸がエステル結合している。
エーテル脂質は古細菌を特徴づける重大な性質の一つである。
エーテル結合はエステル結合に比べて化学的に安定である(エーテル結合はエステル結合より酸やアルカリに強く、また、耐熱性が高い)ことが、古細菌がエーテル脂質をもつ理由の一つと考えられているが、古細菌がエーテル脂質をもつことの真の機能的意義については、答えが出ていない。
テストには出ないと思うが、一応語呂「メーテルは古い(エーテル脂質、古細菌。銀河鉄道999のメーテルは古いキャラクター、というイメージ)」また、真核生物と細菌の膜脂質の炭化水素鎖は脂肪酸であるのに対し、古細菌の炭化水素鎖はイソプレノイド(イソプレンという二重結合をもつ炭化水素が構成単位となっている)であり、側鎖にある多数のメチル基が、膜の障壁としての機能を増大させていると言われている。

雑談:植物の細胞壁とは異なり、細菌は細胞壁にペプチドグリカン(複合多糖とペプチドが結合したもの)を持つ。抗生物質ペニシリンは、ペプチドグリカンの生合成を阻害する。また、唾液や涙に含まれるリゾチームはペプチドグリカンを分解する。なお、細菌は、グラム陽性細菌(ペプチドグリカンからなる厚い細胞壁をもち、外膜を欠く)とグラム陰性細菌(細胞壁を構成するペプチドグリカン層はうすく、その外側に外膜をもつ[外膜との間にペプチドグリカン層が存在する])に分けることができる。下図はイメージ。

細菌は細胞壁にペプチドグリカを持つ。細菌は、グラム陽性細菌とグラム陰性細菌に分けることができる。









要点:真核生物ドメインには、原生生物、植物、菌類、動物が含まれる。

● 真核生物には、原生生物、植物、菌類、動物が含まれる。

● 真核生物の中には、動物、植物、菌類にはっきり分類できないものもたくさんいる。
・ゾウリムシ、アメーバ(菌類?動物?)
・ミドリムシ(光合成できるから植物?動くから動物?)
このような生物達を『原生生物』という(動き回る原生生物を原生動物と呼ぶこともある)。

● 一般に、真核生物の単細胞生物は原生生物に分類される。

● 原生生物は原核生物と字面が似ているが、まったく別の生物グループなので注意しよう。

雑談:この原生生物の分類はかなり大雑把であり、古典的である。動物・植物・菌類以外の真核生物をとにかく同じ原生生物というグループにぶち込んでいる。現在、DNAの塩基配列の解析によって、真核生物の系統樹の作り直しが進んでいる。

雑談:原生生物のうち、捕食・移動を行うものを原生動物と呼ぶこともある。下図はイメージ。

ゾウリムシは原生動物である。原生動物は原生生物の1グループであり、原生生物は真核生物の1グループである。







雑談:植物・菌・動物・原生生物という真核生物の分類は見直されつつある。真核生物は、現代では、塩基配列から、以下のような8グループに分類される。覚えなくてよい。(  )の中は語源。
①アメーボゾア(アメーバ動物)
②エクスカバータ(細胞側面が凹んでいる excavated)
③アーケプラスチダ(古い色素体)・・・陸上植物はここに分類される。
④ハクロビア(ハプト藻とクリプト藻、ビアが生物を表す)
⑤アルベオラータ(細胞膜直下に機能不明の袋=アルべオールを持つ)
⑥ストラメノパイル(麦藁の毛=べん毛に生えている小毛)
⑦リザリア( rhizo=根)
⑧オピストコンタ(うしろのべん毛)・・・ヒトや菌類はここに分類される。
※ストラメノパイル、アルベオラータ、リザリアを、SAR(三つのグループの頭文字をとっている)としてまとめるという考え方もある。

講義動画【真核生物の8系統群について】

(動画の後半で少しだけ真核生物の分類に触れている。)








要点:植物の生活環において、胞子体は減数分裂で胞子を作る。


● 生活史(生物個体が生まれてから死ぬまでにたどる過程)を世代や核相の交代などに注目して環の形に表現したものを生活環という。

雑談:生物個体が生きて死ぬ過程を生活史という。生活史を、世代、核相の交代、生殖細胞、受精、減数分裂、体などに着目して表現する方法を生活環という。高校生は「生物が生きて死ぬまでを、核相に注目し、生殖細胞で世代を繋いで輪っかの形の図にしたもの」くらいに思っておけば良い。


(1)植物の生活環のポイント


① 胞子体は減数分裂で胞子をつくる!(胞子は成長して配偶体になる。)

*動物とは異なる。動物は減数分裂で配偶子をつくる。

雑談:動物の配偶子が減数分裂を経て作られるのに対し、配偶子は単相(n)の配偶体が体細胞分裂することにより形成される。植物は動物と違い、減数分裂により配偶子を直接作り出すのではなく、減数分裂を経て単独で栄養成長する胞子を産生する。単相の胞子は、体細胞分裂を経て多細胞の配偶体を形成する。

② 配偶体は配偶子をつくる!(配偶子は合体して受精卵になる。)

③ 受精卵は発生・成長して胞子体となる

植物の生活環。胞子体は減数分裂で胞子をつくる。配偶体は配偶子をつくる。配偶子は合体して受精卵になる。受精卵は発生・成長して胞子体となる。



④ 種子植物・シダ植物は胞子体が本体!コケ植物は配偶体が本体

⑤ シダ植物の配偶体は前葉体とよばれ、光合成をして独立して生活する




(2)コケ植物の生活環


コケ植物では、胞子体は配偶体に寄生している(めっちゃ問われる!!!)。

コケ植物の生活環。



雑談:コケ植物は、配偶体(n)が本体である。そこがシダ植物や種子植物と異なる。コケ植物の胞子体は、配偶体に寄生している(ただし、胞子体から配偶体への物質の輸送も知られており、「半寄生」「なかば寄生している」とするほうが正確である)。スギゴケの胞子体は茶色である。茶色ということは、基本的に葉緑体を持たず、自分で栄養を作れないということである(ただし若い頃は緑色で光合成を行う)。どのように生活しているかと言うと、配偶体の上に寄生し、配偶体から栄養をもらっているのである。 胞子体はコケ植物や被子植物では目立つ体、我々がよく見る本体なので、コケ植物のこの胞子体の弱々しい生活スタイルは目を引くものがある。やがて、陸上化に適応するにつれて、胞子体は独立生活するようになり、頑丈な胞子をばら撒くために巨大化していったと考えられている。

雑談:コケ植物の雄雌の配偶体はそれぞれ造卵器・造精器を形成し、その中に卵・精子が生ずる。雨などが降ると、精子は水中を泳いで造卵器に移動し、その中で受精が起こる。





(3)シダ植物の生活環


シダ植物の配偶体は前葉体(ぜんようたい)と呼ばれる(めっちゃ問われる!!!)。

シダ植物の生活環。



雑談:前葉体(多くは緑色で小型の心臓形)には、造卵器と造精器の両方が形成されるが、ほとんどのシダの種では、精子と卵を異なる時期に生成するので、通常、1つの前葉体からの卵は他の前葉体からの精子によって受精される(成熟した造精器は、雨などが降った際に精子を水中に放出する。精子は造卵器が放出した誘引物質に引かれて造卵器まで泳いでいき、その中に侵入して受精する)。仮根は根に似た形をした構造で、固着のために使われる。

前葉体(シダ植物の配偶体)。独立生活する。


雑談:前葉体とは、シダ植物の配偶体のことである。非常に小さいが、それでも、光合成によって独立生活を行うことができる。 シダ植物の胞子体は、かなり光合成機能を発達させている。維管束系や、頂端分裂組織を獲得しており、理論上無限に成長、分枝、器官形成することができる。胞子体の生理的独立と優位性は、維管束植物の最も重要な特徴のひとつである。




(4)被子植物の生活環


*被子植物は減数分裂で花粉四分子や胚のう細胞をつくる。
よって被子植物の花粉四分子や胚のう細胞は、胞子に相当する(減数分裂で生じるのが胞子)。
*花粉四分子は、成熟花粉となる。胚のう細胞は胚のうとなる。成熟花粉には精細胞(配偶子)が生じる。胚のうには卵細胞(配偶子)がある。
よって被子植物の成熟花粉や胚のうは、配偶体に相当する(配偶子をつくるのが配偶体)。
*被子植物の配偶子は精細胞や卵細胞である(配偶子は受精して新個体[胞子体]になる細胞である)。

雑談:花粉四分子を小胞子、胚のう細胞を大胞子と呼ぶこともある。

被子植物の生活環。





(5)核相交代


● 生活環において、単相(n)と複相(2n)とが交互に現れる現象を核相交代という。

雑談:生活環の中で、受精卵から減数分裂が起こるまでの間(複相世代に相当)を無性世代という。
単相の世代(胞子の発芽から配偶子の形成まで)は、卵や精子を形成する配偶体をつくるので、有性世代という。
*ただし、無性世代、有性世代という語は現在ではほとんど用いられていない。たとえば、複相世代が、遺伝的組換によって多様性を生み出す減数分裂を行う(これは有性生殖の本質である)世代であることを考えれば、「無性世代」という語は適切ではない。

雑談:植物の胞子体の無性世代と配偶体の有性世代が交互に繰り返される仕組みを世代交代という。

講義動画【生活環】






問題:シダ植物の配偶体は何と呼ばれるか。

答え:前葉体


問題:種子植物、シダ植物、コケ植物の胞子体の核相はいくつか。

答え:2n




雑談:陸上植物の祖先と言われるシャジクモでは、ほぼ配偶体の時期しか存在しない。 もしかしたら、そこから、新たに小さな胞子体が作られ、コケ植物となっていったのかもしれない(下図の説①)。 この仮説に立てば、コケ植物の生活環はシダ植物のそれより祖先的であることになる。 一方、同じ大きさの胞子体と配偶体をもつ植物がはじめに生じたとする説がある(下図の説②。ただし、同じ大きさの胞子体と配偶体をもつ現生の陸上植物は見つかっていない)。


陸上植物の祖先と言われるシャジクモでは、ほぼ配偶体の時期しか存在しない。どのようにそこから陸上植物が進化したのか、わかっていない。




雑談:以下はシャジクモの生活環のイメージ。配偶体には造卵器・造精器が形成され(シャジクモは雌雄同株)、卵・精子が生ずる。接合子のみ複相(2n)である。接合子は発芽時に減数分裂を行い、単相(n)に戻る。

シャジクモの生活環。接合子は発芽時に減数分裂を行い、単相(n)に戻る。



雑談:配偶体から配偶子ができる時に、体細胞分裂は必ずしも必要ではない。たとえば被子植物において、配偶体を胚のうと見なせば、すでに配偶子である卵細胞が生じている。

雑談:最も原始的な植物化石のひとつとして知られるクックソニアは、シルル紀からデボン紀前期の地層から見つかっている。体は二股分岐していて、軸の先端に胞子のうが見られる。 クックソニアの茎には通道組織が見られるが、細胞壁の肥厚はなく、維管束植物ではない。

雑談:陸上植物(コケ植物、シダ植物、種子植物)の進化的な順序は確定していない。シダ植物とコケ植物の系統樹の根もとがどうなっているのかについては未解明である。





★ 植物の分類


雑談:植物の定義は難しい。ここでは高校教科書に従って陸上植物を植物と定義しているが、「色素体を持つ真核生物」を植物と定義することもある(その場合藻類も植物に含めることになる)。基本的に現在では、ゲノムの塩基配列を調べることによって(分子系統解析によって)生物を分類している。ギンリョウソウなどはクロロフィルを失い光合成を行わないが、植物に含める(ちなみにギンリョウソウも色素体は持つ)。




要点:コケ植物とシダ植物と種子植物は陸上植物である。シダ植物と種子植物は維管束植物である。


*以下の図はイメージ。正確ではない。実際は植物の進化はこのように単純ではない。


コケ植物とシダ植物と種子植物は陸上植物である。シダ植物と種子植物は維管束植物である。




● 以下は仮想的な系統樹のイメージ(実際はこのような綺麗な系統樹は描けない)。分子系統解析が進んでいるが、植物の系統については完全には解明されていない。

藻類と植物の系統樹。



雑談:コケ植物のタイ類は、気孔をもたない(退化したと考えられている)が、気孔と同じようにガス交換の役割をする気室孔をもつものが多い。


*コケ植物、シダ植物、種子植物の比較。

コケ植物、シダ植物、種子植物の比較。



● 一般に「植物」といえば、陸上植物(コケ植物・シダ植物・種子植物)を指す)。

● シルル紀末に存在していた最古の陸上植物クックソニアは、維管束はもたないが、コケ植物に見られない二股の枝別れが見られる。また、クックソニアは、胞子で増えていたと考えられている。




(1)コケ植物


・維管束はない。(重要)

・配偶体が本体(スギゴケでは、胞子体が配偶体に寄生している)。

・根・茎・葉の区別がない。

・コケ植物は、一般に、蘚類(せんるい)、苔類(たいるい)、ツノゴケ類の3群に分類される。

・一般に根はないが、仮根がある(根とは異なる)。

*仮根(かこん):維管束植物の根に似ていて、付着、吸収などを営むが、複雑な分化は見られない構造の総称。維管束植物の根とは異なり、仮根は組織をもたない。

*「コケ植物」は通称で、一般に、すべての非維管束植物(タイ類[苔類]、セン類[蘚類]、ツノゴケ類)を指すときにそう呼ばれる。

雑談:コケ植物にも通水細胞が存在することが明らかになっている。この細胞の獲得が植物の陸上化に大きな影響を与えたことは間違いないだろう。

雑談:コケ植物の中でも、セン類は維管束に類似した組織が発達する(ただし維管束は持たない)。

雑談:コケ植物は配偶体を植物体の本体とし、茎葉体(けいようたい)や葉状体(ようじょうたい)をなすが、組織の分化は維管束植物のように複雑ではない。
・茎葉体:茎と葉の区別がある植物体。コケ植物のセン類やシダ植物、種子植物に見られる。
*ただし、そもそも「茎」や「葉」、「根」などの用語は、維管束植物のものを指す用語として定義されている(コケ植物は、厳密には茎、葉、根を持たない)。よって、「コケ植物の茎(葉)」などという言い方は、本来はできない。正確には「コケ植物のもつ、茎(葉)のように見える構造」とするべきである。
・葉状体:茎と葉の区別がない植物体。コケ植物のタイ類とツノゴケ類に見られる。

雑談:コケ植物には様々な種類がいるので、明確に定義するのは難しいが、一般には「生活環では配偶体が本体となり、胞子体は配偶体になかば寄生する生活をし、植物体には根、茎、葉などへの器官の分化も、維管束などの組織の分化も認められない一群の陸上植物」と定義できる。





<<維管束の壁 >>

(「ここから先の生物は維管束をもちますよ」という意味で<<維管束の壁>>という表現を使っている。今後も同様に表現していく。正確な表現ではないからテストでマネしないように。)





(2)シダ植物


・維管束をもつ。(重要)

*維管束は、陸上化した植物に、『安定した水分の供給と機械的強度』をもたらした。

・胞子体が本体。

・配偶体は前葉体と呼ばれ、独立生活する(前葉体で精子と卵が作られる)。

例)ワラビ、ゼンマイ、スギナ、サンショウモ、マツバラン、クラマゴケ、トクサ、ヒカゲノカズラ

雑談:スギナの胞子茎(胞子をつけるための茎)が「土筆(つくし)」である。

「クラマ天狗に会ったら死だ(クラマゴケはシダ植物。コケ植物ではないから注意)」



雑談:シダ植物(pteridosperms)は、ギリシャ語のpterido-(pteris シダの連結系)と、sperm(種)の合成。pterisはpteron(翼)に由来する(プテラノドンなどの翼竜も同じ語源)。シダの葉に生えている細やかな毛が羽毛を連想させるからこの名が付いた。シダを羊歯と書くのは、細い葉が羊の歯に似ているからだと言う説がある。

シダ植物。








<<種子の壁>>



(3)裸子植物


・種子植物。

・種子で乾燥へ適応した。

・胞子体が本体。

例)イチョウソテツ、マオウ、マツ

・イチョウは生きている化石といわれる(イチョウの仲間は中生代には多くの種類が存在していたが、現在ではイチョウ1種が生き残っているのみである)。


雑談:イチョウ類は、ペルム紀から中生代まで全世界的に繫栄したが(特に中生代の示準化石として用いられることもある)。現在では中国原産で各地で栽培されるイチョウ(Ginkgo biloba)1種を残すのみとなった。これは事実上の絶滅の状態に近い。

雑談:現在の裸子植物は、①グネツム類(グネツム、マオウ、ウェルウィッチアが含まれる)、②球果類(「きゅうかるい」。針葉樹類ともいう。裸子植物の中で最も多様化している。マツ、ヒノキなどを含む)、③イチョウ類、④ソテツ類の4グループからなる。

雑談:ウェルウィッチアの葉は2枚のみである。その2枚の葉は生涯成長し続ける(葉の基部に分裂組織がある)が、葉の先端は裂けやすく、しだいに分解し、葉の長さは2~4mになる(巨大な葉がうねりながら地面付近に鎮座する外見は奇妙である)。ウェルウィッチアの別名は「奇想天外(キソウテンガイ)」である。CAM植物であり、寿命は少なくとも1000年といわれる。写真は神代植物公園のキソウテンガイ。

キソウテンガイ。




雑談:球果類の多くは、いわゆる「松ぼっくり」状の球果をつくる。球果は裸子植物の繁殖器官であり、その種子がかさ状の構造に包まれているものを指す(種子を付けて木化した鱗片が集まって球形または楕円体となった構造である)。




<<子房の壁・重複受精の壁>>






(4)被子植物


・種子植物。

・現在最も広く分布している(新生代は被子植物と哺乳類の時代と言われる)。

・胚珠が子房壁に包まれている。

・重複受精を行う。(重要)

例)モウセンゴケカナダモ、サクラ、イネ

語呂「モウセンゴケは、もうせん!と言いつつ虫を食う(モウセンゴケは、食虫植物の被子植物である。コケ植物ではないから注意)」



雑談:被子植物は、双子葉類と単子葉類に分けられる。ただし、分子系統解析の結果から、単子葉類は単系統群(単一の共通祖先に由来する分類群)であるが、双子葉類は、単子葉類の分岐以前に分岐した原始的なものと、それ以後に分岐したものに大別されることがわかっている。被子植物の起源と進化については現在でも多くの学説があり、まだはっきりしていない。

雑談:コケ植物・シダ植物・種子植物はあわせて陸上植物と呼ばれる。これらの植物は、胚をもつ(受精卵から生じた胚が親植物の保護器官に養われて発生の初期段階を経過する)という共通点をもっているので、有胚植物とも呼ばれる。









要点:陸上植物はシャジクモ藻から進化した。



● 陸上植物はシャジクモ藻から進化してきたといわれている。藻類の中でも、シャジクモ藻が陸上植物に最も近縁であると考えられている。その根拠に、シャジクモ藻がクロロフィルaとbを持つことがあげられる。

雑談:クロロフィルaとbをもつ葉緑体は、緑藻やミドリムシ類、いくつかの渦鞭毛虫にもみられる。ではなぜ特にシャジクモ藻から植物が進化したと考えられているのか?シャジクモ藻は、①セルロース合成酵素の形(円状に細胞膜に埋め込まれている)②ペルオキシソーム内の酵素群の種類③精子の鞭毛構造などが植物と類似している。塩基配列に基づく遺伝学的根拠もある。覚えなくてよい。



雑談:広義のシャジクモ藻類は、ストレプト植物の内、陸上植物を除いたものである(近年の微細構造と分子系統的な研究により、緑藻には、陸上植物に近縁な群と、そうでない群があることが明らかになった。前者は、陸上植物とともにストレプト植物と呼ばれている)。狭義のシャジクモ藻類は、広義のシャジクモ藻類の中でも、シャジクモ目に属するものを指す。





★ 動物の分類


雑談:動物学の祖はアリストテレスであろう。アリストテレスは今から2000年以上前に、頭足類の構造と習性、胎生のサメの胎盤類似構造、エビやカニの構造、ニワトリの発生、チョウの発生など、様々なものを注意深く観察し、その記録を残している。ダーウィンは次のような言葉を残している。「リンネとキュビエは今でも私にとっては神様のように思えますが、老アリストテレスの前に出れば二人は小学生に過ぎません。」
*ダーウィンは自然選択説を提唱した博物学者。リンネは二名法を使って生物の分類を行った博物学者。キュビエは天変地異説を提唱した動物学者。




要点:海綿動物は無胚葉性、刺胞動物は二胚葉性である。三胚葉性の動物は、旧口動物と新口動物に分けられる。

(系統樹はイメージ。枝の長さ等は正確ではない)

動物の系統樹。





(1)海綿動物(かいめんどうぶつ)




● えり細胞をもつ(えり細胞は、えり鞭毛虫[えりべんもうちゅう]の細胞と形態的にほぼ区別できない。えり鞭毛虫から動物が進化した証拠である)。

雑談:海水1リットルに、何百万匹ものえり鞭毛虫が含まれていることもある。えり鞭毛虫は、鞭毛を動かして海水中を泳ぎ、鞭毛の根元にあるえりで微生物をトラップして食べる。

● 無胚葉性。(よく問われる)

例)カイロウドウケツ、ホッスガイ

語呂「イケメンナイスガイ(海綿、ホッスガイ、「ナイ」で「無い」=無胚葉)」

語呂「襟を正すイケメン(えり細胞を持つ海綿動物)」

雑談:えり細胞は食作用によって食物の小粒を取り込んでいる。

雑談:えり細胞はべん毛を動かして水流を作り、小さな穴(小孔)から水を引き込む(カイメンは水に含まれる小さな食物粒子を食べている)。水は大きな孔(大孔)から出ていく。下図はイメージ。

海綿動物。えり細胞は、えり鞭毛虫の細胞と形態的にほぼ区別できない。



雑談:カイロウドウケツの中は空洞で、ドウケツエビの仲間がつがいで暮らしている。なので、カイロウドウケツ(偕老同穴)の名前が付けられた。偕老同穴とは「偕(とも)に老いて、同じ穴に葬られる」という意味で、「偕老同穴の誓い」という言葉は結婚式のスピーチなどでも使われる。

雑談:ホッスガイは、コップのような本体に、長い柄のようなものが付いている構造をしている。この長い柄の根元が泥の中に入って体を支えている。この部分が白くて美しく、お坊さんの使う払子(ほっす)に似ているのでホッスガイと名が付いた。ホッスガイの柄の部分は装飾に用いられることがある。

ホッスガイ




雑談:カイメンは、古代ギリシャでは植物と間違えられていた。

雑談:海綿動物(sponges)は、昔から事務用品などとして使われている(下図は事務用のスポンジ)。

海綿動物(スポンジ)。






<<二胚葉の壁>>




(2)刺胞動物(しほうどうぶつ)




● 散在神経系(さんざいしんけいけい)。
*神経系の種類については後述する。

・外胚葉と内胚葉の二胚葉性。(非常によく問われる)

● 刺胞をもつ。

例)ヒドラ、ミズクラゲ、イソギンチャク、サンゴ

語呂「四方に散財(刺胞動物は散在神経系[中枢がない])」

語呂「二度指す(二胚葉性、刺胞動物)」





雑談:刺胞動物の主なボディープランは袋状である。口と肛門は同じ穴である。このボディープランには大きく2つの型がある。①ポリプ型と②クラゲ型である。種によってはポリプ型とクラゲ型の両方を生活環にもつ。
①ポリプ型:付着生活を行う(口と反対の側で他の物に付着する)。ヒドラやイソギンチャクは一生をポリプ型で過ごす。口(肛門)の周りを触手が取り巻いている。下図はヒドラの体のイメージ。
②クラゲ型:自由に動くことのできるクラゲが含まれる。口(肛門)を下に向けている。触手は口側の表面から下に垂れ下がる。

刺胞動物:ヒドラのイメージ。





雑談:クラゲ型のイメージ。口(肛門)は下に向けている。

クラゲ型の刺胞動物。






<<三胚葉の壁>>




● 三胚葉性の動物は、旧口動物と新口動物に分けられる。旧口動物では、原口は口になり、新口動物では、原口は肛門になる。


● 旧口動物は、冠輪動物と脱皮動物に分けられる。旧口動物は原口が口になる。




(3)旧口動物(きゅうこうどうぶつ)



①輪形動物(りんけいどうぶつ)


例)ワムシ

覚え方「輪形動物の輪はワムシの輪(ただし、輪形動物は"りんけいどうぶつ"と読むので注意)。」

雑談:輪形動物の排出器官は原腎管(げんじんかん。無脊椎動物の排出器官のうち、最も原始的な構造とされるもの。多くの場合、分岐した管状の構造をもち、体内に張り巡らされている)。

雑談:ワムシの体の前端には輪毛器(採餌や運動に用いられる)があり、繊毛運動のために車輪が回っているように見える。下図はイメージ(肛門もあるが、描いていない)。

ワムシ(輪形動物[りんけいどうぶつ])。







②扁形動物(へんけいどうぶつ)


● 三胚葉性だが、無体腔である。
*体腔については後述する。

例)プラナリア、サナダムシ、コウガイビル

● かご形神経系(かごがたしんけいけい)。

語呂「変なカゴに集中(扁形動物は集中神経系のかご形神経系をもつ)」

● 血管系なし。

雑談:扁形動物の排出器官は原腎管。

語呂「へん(扁)なげんじん」

雑談:扁は「たいら」という意味。

雑談:コウガイビルは、陸産のプラナリアであって、コウガイ「ビル」と呼ぶが、吸血性のヒル(蛭)(環形動物)とは別群である。日本髪をすく「笄(こうがい)」に似ており、頭部はイチョウの葉のように広がる。

雑談:プラナリアは、頭部に光を感じる眼点が1対ある。肛門はなく、消化されなかったものは口から排出される(口とは言わず「食物を吸い込み老廃物を出す筋肉の管」と言った方が正確かもしれない)。下図はイメージ。

プラナリア(扁形動物[へんけいどうぶつ])。







③軟体動物(なんたいどうぶつ)


● 外とう膜(がいとうまく。内蔵塊を覆い、殻をもつ場合には貝殻を分泌する組織)をもつ。(重要)

語呂「街頭でナンパ(外とう膜をもつ軟体動物)」

*外とう膜は「外套膜」と書く。「外套」とは衣服の上に着るオーバー(コート)のこと。

例)イカ、タコ(頭足[とうそく]類)、ハマグリなどの貝

頭足類(イカ、タコ)は閉鎖血管系。その他の軟体動物は開放血管系。

語呂「へいらっしゃい!イカ!タコ!("へい"で閉鎖血管系。軟体動物の中でも、イカ、タコなどの頭足類は例外的に閉鎖血管系)」

*閉鎖血管系について忘れてしまった方はこちらへ↓


● やわらかい体をもつ。
*だから「軟体」動物と名前が付いている。ただし、「体がやわらかい動物」を軟体動物と定義しているわけではないことに注意。体がやわらかい動物は軟体動物以外にもたくさんいる。現在では(見た目とか感触ではなくて)塩基配列に基づいて生物を分類している。イカとタコとハマグリが同じ軟体動物というグループに分類されているのは、見た目とか感触が似ているからではなくて、DNAの塩基配列が似ているからである。

雑談:カタツムリやナメクジの仲間など、陸生に生息する軟体動物は鰓を失っている。

雑談:軟体動物の排出器官はボヤヌス器(腎管の一種)。

語呂「ボヤヌス器ってなんだい(軟体)?」

雑談:腎管は、無脊椎動物で発達した排出器官であり、原腎管と対比される排出器官系の総称である。体腔に直接開く漏斗状の開口部(腎口)を持つち、複雑に屈曲した腎細管や膀胱体を経て、末端の腎管排出孔で外界に開く。腎管は原腎管が特殊化したものであると考えられている。

雑談:イカ、タコ、オウムガイなどは頭足類(厳密には軟体動物門の頭足綱)に分類される。現生の頭足類で、体外に殻をもつのは、オウムガイだけである。下図はオウムガイ。

オウムガイは軟体動物(なんたいどうぶつ)。






④環形動物(かんけいどうぶつ)


● 閉鎖血管系

● 軟体動物と環形動物はトロコフォア幼生(環状の繊毛をもつ)の時期がある(幼生の形状が似ていることは、系統的に近い証拠である)。

語呂「軟らかいトロ5貫(軟体動物、トロ5貫で、"トロ"コフォア幼生と"環"形動物)」

例)ミミズゴカイ、ヒル

語呂「あなたとの関係(環形)は誤解(ゴカイ)です」

雑談:環形動物の排出器官は体節器(腎管の一種)。





⑤線形動物(せんけいどうぶつ)


例)カイチュウ、ギョウチュウ、センチュウ

覚え方「線形動物の線の字はセンチュウの線」

センチュウは線形動物(せんけいどうぶつ)。






⑥節足動物(せっそくどうぶつ)


● 開放血管系。(重要)

● はしご形神経系(はしごがたしんけいけい)。

語呂「せっせと梯子を上って開放(節足動物、はしご形神経系、開放血管系。ファミコン版のドンキーコングで梯子を上って姫を開放するイメージ。高校生はファミコンのドンキーコングなんて知りませんよね。すみません。)」

● 多くの体節からなる。

節のある肢(関節のある付属肢)が「節足」の語源(付属肢:原則として各体節に1対ずつ付属する肢)。

● 外骨格をもつ。(重要)

雑談:我々脊椎動物は、一般に、骨は体内に仕舞われている(内骨格)。一方、節足動物はキチン質の外骨格をもつ。カブトムシを考えればわかるように、外骨格は体の外側を覆う。カブトムシやカニを思い浮かべてほしい。あの固い甲殻はキチン質でつくられている。

例)昆虫類、クモ類、ムカデ、ヤスデ、甲殻類(エビ、カニ、フジツボ、カメノテ、ミジンコ

雑談:節足動物のうち、昆虫類やクモ類などの排出器官はマルピーギ管(甲殻類は触角腺[腎管の一種])。

雑談:マルピーギ管は、イタリアの解剖学者マルピーギが発見した昆虫類やクモ類などの排出器官である。体腔内の老廃物を排出するための細長い糸状の管(片方の端が閉じた盲管で、腸に開口する)で、その機能は脊椎動物の腎臓の糸球体とボーマンのうとを除いた細尿管の部分に類似すると考えられている。下図はミツバチのマルピーギ管のイメージ。

昆虫類の排出器官はマルピーギ管。



雑談:節足動物の体節の進化は、体の各部位がさまざまな機能を持つという分業を可能にした。現在最大数の種が知られている、この節足動物の進化的な大成功の秘訣は、ボディープランの進化にあると考えられる。たとえば、ロブスターの鋏は防衛のための付属肢、触角は感覚受容のための付属肢である。

*間違えやすいが、カメノテ、フジツボ、ミジンコは節足動物である。



雑談:昆虫などの体表には気門(きもん)と呼ばれる呼吸門がある。ゴキブリに洗剤をかけると死んでしまうのは、洗剤がこの気門を塞ぎ、体液に酸素を取り込めなくなるからだと考えられている。






*脱皮動物(だっぴどうぶつ)と冠輪動物(かんりんどうぶつ)


今まで紹介した旧口動物のうち、節足動物と線形動物を脱皮動物といい、その他(扁形動物・輪形動物・軟体動物・環形動物)を冠輪(かんりん)動物と言う。

語呂「せっせと脱皮する("せっ"そく動物と"せ"んけい動物は"脱皮"動物)」



雑談:一般に、冠輪動物は、繊毛を生命活動の重要な部分に重用しているという共通の特徴をもつ。冠輪動物という名前は、このグループに触手「冠」(餌をとるための繊毛の生えた冠状の触手からなる構造)をもつ系統と、トロコフォア幼生(「担」輪子幼生ともいう)の時期をもつ系統(軟体動物・環形動物)が含まれることに由来する。しかし、冠輪動物、脱皮動物の分類は、形態ではなく、分子データに基づいて分類したものある。たとえば、脱皮動物は、脱皮する動物を集めたグループではない。塩基配列で分類した結果、そのグループに脱皮するものが多く含まれていたというだけである。


<Q.ヘビも脱皮するから脱皮動物?…ちがう。旧口動物の脱皮動物は、脱皮する動物を集めたグループではない。あくまでもrRNAの塩基配列に基づいた分類をしている。その結果、脱皮をしている動物が多かったから、脱皮動物と名付けた。冠輪動物の名前の由来は摂食に使われる触手冠だが、冠輪動物には明確な触手冠を持たないものもいる。>





(4)新口動物(しんこうどうぶつ)



● 新口動物には、棘皮動物と原索動物と脊椎動物が含まれる。

● 新口動物では、原口が肛門になる(超重要!!!しかし、ウニの発生、カエルの発生を学べば、自然と覚えてしまう)。





①棘皮動物(きょくひどうぶつ)


● 水管系(呼吸器系・排出器系・血管系をかねる、棘皮動物独特の構造)をもつ。

雑談:水管系は、棘皮動物に特有であり、体内に広く分布する細管(水力で動かす管)の系である。管内は海水に近い体液で満たされている。その末端は管足と呼ばれ、移動や摂食などに使われる(たとえばウニは、棘によって移動するのではなく[棘も多少動くし、移動に役立つが]、主に棘の間から伸びる管足によって移動する)。管足の先端は吸盤状になっており、垂直な壁でさえも移動することができる。

● 五放射相称(ごほうしゃそうしょう)の体制をもつ(超重要!!!体の中心から放射状に5つの同じ構造が伸びたような体をもつ。★のような形をしたヒトデが特にわかりやすいだろう)。

例)ウニ、ヒトデ、ナマコ、ウミユリ

覚え方「棘皮動物の棘はトゲとも読む。ウニはトゲトゲ。(ナマコ等にはトゲがないが、塩基配列データ等から、棘皮動物に分類される)」

雑談:ヒトデは、管足で二枚貝をつかまえ、胃の一部を反転させて口から出し、狭い貝の隙間から挿入する。そして消化液を分泌する。貝殻の中で消化が行われ、胃は体内に引き戻される。

棘皮動物(きょくひどうぶつ)は五放射相称の体制をもつ。



ウニは棘皮動物。




雑談:棘皮動物の最大の特徴は五放射相称の体である。ナマコには5列の管足がある(背側では退化しているものもある)。口のところから見ると、五放射相称の名残りを残しているのである。ナマコを輪切りにすると五放射の体制がよりはっきりわかる(ナマコの断面に五角形の空洞が見える)。ウニも5列の管足をもつ。

雑談:棘皮動物は、他のいろいろな動物と同じように、中にスペースを持った体をしており、そこは体液で満たされ、体腔と呼ばれている(海綿動物・刺胞動物には体腔はない。扁形動物は無体腔だが、一種の先祖返りと考えられている)。体腔は、中の液体の水圧で体を支えたり、栄養や酸素の通り道になったりするなど、いろいろな役割を果たしている。体腔については後述する。

雑談:棘皮動物の幼生として、ウニ類のプルテウス幼生の他にも、ヒトデ類のビピンナリア幼生、ナマコ類のオーリクラリア(アウリクラリア)幼生などが知られている。








②原索動物(げんさくどうぶつ)


● 脊椎骨はない。

● 一生のうち少なくとも幼生期に脊索をもつ。

● 管状神経系(かんじょうしんけいけい)。

例)ホヤ、ナメクジウオ
*ホヤを見たことがある人は、ホヤが我々と同じ脊索動物であることに違和感を感じるかもしれない(ホヤを見たことがない人はネットで検索してみてみよう)。しかし、ホヤの幼生はオタマジャクシ型である(脊椎動物に似ている)。海底に固着・変態すると脊索は失われる。

ホヤの幼生はオタマジャクシ型である。




雑談:脊索は、弾性エネルギーを蓄え、それを放出することができる。ナメクジウオは、筋肉と脊索が互いに作用することで身をよじるように動く。





③脊椎動物(せきついどうぶつ)


● 閉鎖血管系。

● 脊椎をもつ。




★ 【動物の分類】ポイント整理




発展:脊椎動物の分類


● 以下、脊椎動物の分類を記す。ほぼテストに出ない。

・無顎類(むがくるい。カンブリア紀に出現。ヤツメウナギなど。最初の脊椎動物。顎がない)

雑談:ヤツメウナギに顎はない。ヤツメウナギは吸盤状の口で他の魚に吸い付く(酵素を分泌し、肉をこすり取る)。

<<あごの壁>>

・軟骨魚類(サメ、エイなど。)

<<硬骨化した内骨格の壁>>

・硬骨魚類(マグロ、メダカなど。)


*魚類は1心房1心室である。

<<指のある肢の壁>>

・両生類(デボン紀に出現。イモリなど。卵は硬い殻をもたず水中で発生。2心房1心室。両生は「両方の生活」の意。)

覚え方「井戸を守るからイモリ(両生類)、家を守るからヤモリ(ハ虫類)」

雑談:現生の両生類は、無尾類(カエル類:遊泳には後足を使う。いわゆるカエル泳ぎを行う)、有尾類(サンショウウオ、イモリ類:尾を使って遊泳する)、無足類(アシナシイモリ類:ハ虫類のヘビと同様に四肢を失っている)の3群(目)がいる。


<<羊膜の壁>>

*羊膜(ようまく):内部に羊水を保持する。胚を覆う胚膜。


・ハ虫類(ヤモリ、ヘビなど。卵は硬い殻をもち陸上で発生。変温。2心房1心室[不完全な隔壁が動脈血と静脈血の混合を多少防いでいる]。)

雑談:ハ虫類の定義は「有羊膜類(羊膜をもつ動物)の全体から鳥類と哺乳類を除いたもの」とすることも多い。


・鳥類(ペンギンなど。恒温で2心房2心室だが、哺乳類とは近縁でなく、ハ虫類の仲間から進化したとされる[恐竜の末裔とも言われる])

<<哺乳の壁>>


哺乳類(三畳紀に出現。カモノハシ[単孔類]、カンガルー[有袋類]、ヒト[真獣類]など。)

*カモノハシは卵生。






発展:脊椎動物の心臓

(最近はあまり問われない)

● 脊椎動物では、心臓は心房と心室に分かれている。

いろいろな動物の心臓。


雑談:(1)魚類の心臓は1心房1心室である。心臓から送り出された静脈血はただちにえらに行き、動脈血となった後、全身を回って心臓へ戻る。
(2)両生類とハ虫類の心臓は2心房1心室であり、静脈血と動脈血が混ざる(酸素を効率よく全身に運搬するという点では不利である)。ハ虫類では、心室の左右の分離が多少進んでいるが、隔壁は不完全である。心臓から出る血液は、肺と全身に送られる。心臓には、全身から来た血液と、肺から来た血液が流入する。
(3)鳥類及び哺乳類の心臓は2心房2心室であり、静脈血と動脈血は混ざらない。






発展:いろいろな神経系

(最近はほぼ問われない)

いろいろな動物の神経系。




①散在神経系(さんざいしんけいけい):散在神経系には、中枢がない。
*散在神経系以外の②③④は集中神経系(中枢がある)である。

②かご形神経系(かごがたしんけいけい):頭に神経細胞が集まった神経節がある。かご形神経系はしご形神経系の原始的な形態と考えることができる。

③はしご形神経系(はしごがたしんけいけい):頭部に脳を持つ。また、体節ごとに1対の神経節(左右が相寄って1個のように見えることが多い)があり、神経節も中枢として機能している。

④管状神経系(かんじょうしんけいけい):巨大な中枢である脳と脊髄を持つ。両者は神経管に由来する。

ヒト(脊椎動物)は管状神経系である。






雑談:はしご形神経系の中枢は、脳以外は腹側(地面に向けている側)を走っている。下図は節足動物と脊椎動物の中枢神経系の位置のイメージ。まるで背中と腹側が逆になっているようである。

節足動物のはしご形神経系の中枢は、脳以外は腹側を走っている。



雑談:管状神経系の管状構造は、発生段階では明瞭である。成体となっても、脳の脳室(脳の内部にある空所)や、脊髄の中心管(脊髄の中央にある)に管状構造の特徴がみられる。






発展:体腔について

(ほぼ問われない)

● ほとんどの三胚葉性の動物には、消化管と外側の体壁の間に、体腔(「たいこう」または「たいくう」)と呼ばれる、液体や空気で満たされたスペースがある(体腔は、本来は、移動などの体の運動から消化器を分離し、消化器を独自に運動させるために設けられたものと考えられている)。
小さな動物では、この体腔の中の水が、身体に強度や運動可能性を与えている(ある部分が収縮すると、液体が移動して、別の部分が膨らむ。これが運動につながる)。
*体腔:動物の体にある空所。

① 無体腔:海綿動物、刺胞動物、扁形動物などは体腔をもたない。

無体腔。図はプラナリア(扁形動物)をイメージした。



② 擬体腔:胞胚のときの胞胚腔がそのまま体腔となる。体腔は中胚葉と内胚葉からできている(表皮は中胚葉層で裏打ちされるが、消化管側ではこれを欠く)。輪形動物、線形動物など。
擬体腔という名前だが、偽物ではなく、しっかり体腔としての働きを果たしている。

擬体腔。図はセンチュウ(線形動物)をイメージした。




③ 真体腔:中胚葉に由来する組織から形成された体腔。体腔を裏張りする(中胚葉性の)組織が存在する。内部にいろいろな器官を吊す。 節足動物、環形動物、軟体動物、棘皮動物、脊索動物など。高等な動物は基本的にこの真体腔をもつ(いわば消化管と体壁の間にクッションをあてがわれた形になり、体のつくりが丈夫になる)。

真体腔。図はミミズ(環形動物)をイメージした。



*リボソームRNAによる分子系統解析の結果、左右相称動物の進化は、体腔の発達とは関係ないという結論になりつつある。





講義動画【生物の分類(ポイント整理)】




講義動画【生物の分類(発展・雑談)】






要点:菌類は胞子で繁殖する。菌類には酵母菌やアカパンカビ、シイタケなどが含まれる。


● 菌類

(ほぼテストに出ない。雑談が多く書いてあるが、高校生は知らなくてよい。)

菌類:一般に、菌類は葉緑体をもたない従属栄養生物であり、胞子で繁殖し、からだは菌糸(きんし)でできている。


雑談:菌糸とは、菌類のからだに見られる細長い糸状の構造である。一般に子嚢菌類、担子菌類では隔壁を生じて多細胞となり、ツボカビ類、接合菌類、グロムス菌類などでは無隔壁の多核体である。

雑談:カビやキノコは正式な生物用語とは言い難い。カビは、一般に、胞子嚢がたくさん集まって胞子を飛ばす状態になったもので、子嚢菌類に多く見られる。カビを生じる菌類では菌糸が目立たないので、カビと呼ばれる部分が急に生じたように見える。キノコは、一般に、菌糸が集まって子実体をつくった状態を指す。子嚢菌類や担子菌類が比較的大きな子実体(キノコ)をつける。

雑談:下図は菌類の系統樹のイメージ(正確ではない。菌類の系統については現在研究中である)。

菌類の系統樹。



①ツボカビ類

例)カエルツボカビ

雑談:ツボカビ類は、後端にむち形の鞭毛をもった胞子(遊走子)を形成する。菌類のうちでは、鞭毛をもつ遊走子をつくるのはこのグループだけである。ツボカビ類の一種であるカエルツボカビによって、多くのカエル(おそらく200種以上)が減少・絶滅している。

雑談:ツボカビ類は「尾型一毛菌類」とも呼ばれる(尾状の鞭毛が後端に一本ある遊走子をつくるから)。

雑談:遊走子とは、胞子の一種で、鞭毛をもっていて水中を運動するものの総称。藻類や菌類で見られる。


②接合菌類(せつごうきんるい)

例)ケカビ、クモノスカビ

雑談:接合菌類は、土壌中で腐生生活を営むものや、昆虫の寄生菌まで、幅広い生態をもつ(パンやイチゴなどの食物の上で急速に成長するカビも含まれる)。環境条件が悪化すると有性生殖を行う。

雑談:接合菌類は、一般の生物でいう接合子を形成する菌類である(この接合子は耐久性を持ち、「接合胞子」と呼ばれている)。かつては門レベルのまとまりで扱われたこともあったが、現在では、分子系統解析の結果から、門として認められなくなってきている。

雑談:一般的に、接合菌類の菌体は管状菌糸体であり、環境が悪化すると有性生殖を行う。体細胞接合によって厚い細胞壁に包まれた接合胞子が形成される。接合胞子をつくった時だけは二倍体(複相)になるが、その後、減数分裂を行って単相に戻る(厳密には、接合胞子ははじめ両親に由来する多数の単相の核を含んでいるが、核融合により複相の核を持つようになる。環境が好転した際に減数分裂が行われる[なお、ふつうは1個の複相核のみが減数分裂を行う]。その後発芽して、胞子嚢を形成する。胞子嚢からは多数の単相の胞子が放出される)。菌糸体は多様な交配型をもつ(下図では交配型を+、ーで表す。異なる交配型の菌糸体は有性生殖において親となる)。無性生殖の時は、菌糸の先端に黒い胞子嚢(遺伝的に均一な単相の胞子を形成する)ができる。胞子嚢の中に多数の単相の胞子が形成され、空気中に散布される。胞子が湿った食物などに付着すると、発芽して新たな菌糸体となる。

接合菌類。接合胞子を形成する。






③グロムス菌類

例)アーバスキュラー菌根菌


グロムス菌類は、ほぼすべてがアーバスキュラー菌根菌である(アーバスキュラー菌根を形成する)

*菌根:陸上植物の根に菌類が侵入・定着して形成される構造。

● 菌根は、広大な範囲に広がった菌糸で吸収した無機塩類を植物へ供給している(菌根は菌類の根という意味)。植物は、かわりに、光合成で作った炭水化物のような有機物を菌類に与えている(相利共生)。

雑談:アーバスキュラー菌根・・・樹を意味するラテン語arbosが語源。根の細胞に侵入した菌糸は、枝分かれして、(栄養交換のための)樹枝状体を形成している(樹状に分岐した菌糸が根の細胞膜の陥入によって形成された空間に形成されている。細胞膜の中には侵入しない。下図はイメージ)。陸上植物の90%は、アーバスキュラー菌根菌と相利共生の関係にあると考えられている。

アーバスキュラー菌根。根の細胞に侵入した菌糸は、枝分かれして、樹枝状体を形成している。細胞膜の中には侵入しない。






④子のう菌類(しのうきんるい)

例)アカパンカビ、酵母

雑談:子嚢(しのう)の中に胞子を形成する。

雑談:アカパンカビでは、接合によって生じた接合子の核(2n)は、すぐに減数分裂を行い、4個の単相の核(n)になる。その後、1回、核だけが分裂する体細胞分裂を行い、8個の核(n)になる。この核の周りに細胞膜と細胞壁ができて、子嚢胞子となる。アカパンカビの子嚢では、分裂した細胞が移動しないので、分析が容易い(ビードルとテータムは、アカパンカビを用いて一遺伝子一酵素説を提唱した)。

アカパンカビ(子のう菌類)




⑤担子菌類(たんしきんるい)

例)シイタケ、マツタケ、サルノコシカケ

雑談:担子菌類の子実体は一般に「キノコ」と呼ばれることが多い。子実体の形成は非常に素早く行うことができ、一夜で、まるで妖精が躍った跡のように、環状にキノコの輪ができることがある(妖精の輪[フェアリーリング]と呼ばれる)。

雑談:雨や温度変化などの刺激により、菌糸から担子器果(担子器を生ずる子実体。キノコと呼ばれる)が形成される。担子器果のひだには、多数の担子器(核の融合及び減数分裂が行われ、その後に担子胞子を外生する構造)があり、そこから担子胞子が散布される。たとえば、マッシュルームは、10億個もの担子胞子を放出する。
*「外生する」とは、「体の表層から生じる」という意味。

雑談:担子菌類の生活環は以下の通り。
①担子胞子が発芽すると、各細胞に単相の核を1個持った一次菌糸となる。
②一次菌糸が体細胞接合を行い(異なる交配型の菌糸体が親になる。下図では+とーで型を表した)、単相の核を2個もった二次菌糸が形成される。
③二次菌糸は子実体(担子器果、通俗的にはキノコと呼ばれる)を形成する。
⓸キノコの裏のひだの所に、担子器と呼ばれる単相の核を2個もった細胞が形成される(キノコの裏のひだは、担子器を支持・保護する広大な表面積を提供している)。
⑤担子器で核融合が起こって、複相の核が形成される。続いて減数分裂が起きる。複相の核は4個の単相の核を形成し、それぞれが担子胞子になる。

担子菌類。子実体は通俗的にキノコと呼ばれる。




雑談:地球上で最も大きな生物は菌類であると言われる。我々は、地上の「キノコ」に注目しがちだが、地下では広大なネットワークを形成していることがある。

雑談:菌根菌には、アーバスキュラー菌根菌の他に、外生菌根菌(多様な担子菌類、子嚢菌類が含まれる)がある。外生菌根菌は、根の皮層の細胞間隙に生育する(下図。外生菌根菌の菌糸は細胞の間に入り込む。また、外生菌根菌の菌糸の外套は、分厚いコートのように植物の根の表面を厚く包み込む[一方、アーバスキュラー菌根菌は根の周りに外套を形成しない])。食用キノコのトリュフ(子嚢菌類)やマツタケ(担子菌類)は外生菌根菌である。

外生菌根菌の菌糸は細胞の間に入り込む。



雑談:外生菌根菌は、裸子植物も含めて木本類に感染する。菌糸体の菌糸は土壌中に伸びて広がり、子実体をつくることがある。全種子植物の約3%程度が外生菌根菌と菌根を形成すると考えられている。







発展:細胞性粘菌

(ほぼテストに出ない)

● 一般に、粘菌類は、(菌類ではなく)原生生物に分類される。

例)タマホコリカビ

語呂「さいたま(細胞性粘菌、タマホコリカビ)」


● 細胞性粘菌は基本的に単相(n)の生物である。

①飢餓状態になると、アメーバ細胞(n)が集合する。

②集合体は移動する(まるで1匹の生物のようである。個々の細胞は融合しておらず、細胞膜で仕切られている)。

*移動する集合体は移動体、ナメクジ体などと言われる。変形菌(後述する)の変形体と似ているが、細胞性粘菌の場合は、細胞膜の仕切りがある(変形菌の変形体は仕切られていない)。そのため、この移動する集合体は「偽変形体」などと言われる。

③やがて集合体は停止し、子実体を形成するようになる。

柄になる細胞は死んでいく。

子実体において、柄になる細胞が死んでしまうという現象は生物学的に重要である(これは利他行動である。他の細胞[子実体上部にある胞子になる細胞]を生かすために自らが死んでいくという興味深い現象である[多細胞生物の進化に関わりが深い]。細胞性粘菌が「社会性アメーバ」という別名をもつのはこのような性質があるからである)。

⑤胞子が散布される。

⑥胞子は好適な環境で発芽し、再びアメーバ細胞になる。

(⑦有性生殖を行うこともある。2個の細胞が融合して接合子(2n)が生じる。)

(⑧やがて接合子(2n)は周囲の半数体のアメーバ細胞を捕食して巨大細胞になる。その後、減数分裂を行い、発芽して、多数のアメーバ細胞(n)を生じる。)

タマホコリカビ(細胞性粘菌)。







発展:変形菌(真正粘菌)

(ほぼテストに出ない。細胞性粘菌よりさらに出題頻度が低い。)

● 変形菌は、細胞性粘菌と同様、原生生物に分類される(菌類ではないので注意)。

例)ムラサキホコリカビ(和名は、「ムラサキホコリ」のように「カビ」を省いて呼ばれることもある。)

①胞子(n)は好適な環境で発芽し、運動性の細胞を放出する。運動性の細胞には、前端に2本の鞭毛をもつ鞭毛細胞(n)とアメーバ細胞(n)がある(この2つの細胞は容易に転換する。また、これらの細胞は細菌などを摂食し、分裂によって増殖する)。

②アメーバ細胞や鞭毛細胞は同形配偶子として接合し、接合子(2n)を形成する。

③細胞質分裂を伴わずに核分裂が繰り返され、摂食期である多核の(細胞膜の仕切りがなく、多数の核を含んでいる)変形体(2n)が形成される。成熟した変形体は網目状になる(変形体は運動し、細菌などを摂食する)。

④環境が悪化すると変形体は成長をやめ、柄や胞子嚢をもった子実体を形成する。

⑤減数分裂によって胞子嚢内に胞子(n)がつくられ、空気中に散布される。

ムラサキホコリカビ(変形菌)



雑談:分子系統的には、変形菌類は細胞性粘菌類の一部と比較的近縁だと考えられている(他の生物との系統関係についてはまだよくわかっていない)。変形菌類と細胞性粘菌類は、粘菌類と呼ばれることがある(粘菌類と菌類は近縁ではなく、両者の類似性は収束進化によるものと考えられている)。






発展:ゾウリムシの有性生殖

(ほぼテストに出ない)

ゾウリムシは、分裂(無性生殖)だけでなく、接合(有性生殖)を行うことがある。

● 生育条件の悪化などにより、ゾウリムシは接合をはじめる。

①ゾウリムシが隣り合わせに並び(接合)、小核が減数分裂を行う(4つの核が生じる)。

②生じた4つの核のうち、3つは消失する。

③残った1個が分裂し、2個の小核をもつようになる。

④2個の小核のうち1個を交換する。

⑤小核が融合する。

⑥小核が3回分裂し8個の核ができる。

⑦もともとあった大核が消失する。また、4個の小核が大核になる。

⑧2回の分裂(核分裂ではなく、細胞が分かれる分裂)によって、4個の細胞ができる。

ゾウリムシの有性生殖。



雑談:このように、小核は生殖に深く関わる。大核は、摂食や老廃物の排出、水分バランスの調節など、大部分の生命現象を担う。

雑談:どうしてゾウリムシ(繊毛虫)がこのような2つの型の核を用いて特殊な生殖を行うのかについては、ほとんど明らかになっていない。





発展:藻類の分類

(最近はあまりテストに出ない。)

①紅藻(こうそう)



・クロロフィルaをもつ。

・フィコエリトリンという補助色素がクロロフィルの緑色を覆い隠しているため紅色に見える。

例)アサクサノリ、テングサ

語呂「浅草には紅い天狗さでるだ」

雑談:アサクサノリ(写真は国立科学博物館より)

アサクサノリ(紅藻)






雑談:紅藻は、水中で最も深くまで届く青緑色光をよく吸収する。水深200m以上の場所に生育する紅藻もいる。また、紅藻のアマノリ属(アサクサノリ、スサビノリなど)は日本食に欠かせない。テングサはところてんの材料。

雑談:紅藻は、生活環を通じて鞭毛をもつ時期を欠く。よって、配偶子が運ばれるためには、水流が必要である。これは、紅藻が陸上に進出できなかった理由の一つかもしれない。

雑談:おむすびに使う海苔(のり)のアサクサノリやスサビノリは、焼海苔にするとフィコエリトリン(赤い色素)が退色して緑色になる(緑色のクロロフィルは熱でも退色しない)。




②緑藻(りょくそう)



クロロフィルaとbをもつ。

例)アオサ、クラミドモナス、ボルボックス(オオヒゲマワリ)





③シャジクモ藻



・クロロフィルaとbをもつ。

・最も陸上植物に近い。

例)シャジクモ、フラスコモ





④褐藻(かっそう)



・クロロフィルaとcをもつ。

・カロテノイド(主にフコキサンチン)を多く含むため、褐色、またはオリーブ色を呈する。

例)コンブ、ワカメ、ホンダワラ、ヒジキ


雑談:ワカメ(上)とホンダワラ(下)(写真は国立科学博物館より)。

ワカメ(褐藻)
ホンダワラ(褐藻)





雑談:褐藻は巨大なものが多い(数十mにも達するものもある)。褐藻は、いくつかの紅藻や緑藻とともに「海藻」と呼ばれることが多い(海藻は塩基配列に基づいた分類で用いられる名称ではない。ちなみに海"草"は一般に海中に沈水して生育する種子植物の総称を指す)。陸上植物と似たような特殊化した組織・形態をもつが、それらは陸上植物とは独立して獲得されたものであり、陸上植物と相同ではない。

雑談:褐藻のワカメは、フコキサンチンをもつため茶色に見えるが、湯通しするとフコキサンチンが退色して緑色になる(緑色のクロロフィルは熱で退色しない)。






⑤珪藻(けいそう)



・クロロフィルaとc、及びフコキサンチンをもつ。

雑談:珪藻は有機質基質に二酸化ケイ素が沈着してできたガラス様の被殻をもつ。

雑談:珪藻は淡水から海水まで極めて多くの場所に生息し、地球上の総生産量の約1/4を担っているという説もある。また、生きている珪藻は140万kg/m2の圧力にも耐えることができる(この圧力はゾウが乗ったテーブルの脚の下にほぼ等しい)。

雑談:珪藻は普段、無性生殖の分裂によってふえる。ただし、珪藻の場合、分裂するたびに、もとの細胞より小さな細胞が生じる。下図はイメージ。珪藻の細胞は被殻に包まれている。分裂のたびに新しい殻がもとの殻の中に作られる。また、もとの殻のそれぞれは、娘細胞の片方の殻として受け継がれる。面白い分裂だが、高校生は気にしなくてよい。

珪藻の分裂。




雑談:『④褐藻類⑤珪藻』は、『①紅藻②緑藻③シャジクモ藻』とは異なるグループに属する。現代の真核生物のグループ分けを考えれば、『④褐藻⑤珪藻』はストラメノパイルに分類されるが、『①紅藻②緑藻③シャジクモ藻』および陸上植物はアーケプラスチダに分類される。


雑談:下の系統樹はイメージ(枝の長さ・分岐の位置は正確ではない)。珪藻・褐藻はクロロフィルaとcをもつ。紅藻はクロロフィルaをもつ。緑藻・シャジクモ藻・陸上植物はクロロフィルaとbをもつ。

語呂「アッコかっけー(a,c、褐藻、珪藻)」

藻類と植物の系統樹。


藻類と植物のもつクロロフィルの種類。




雑談:シアノバクテリアは、クロロフィルa、b(クロロフィルdをもつものもいる)、カロテン、キサントフィル、フィコシアニン、フィコエリトリンをもつ。一般に、シアノバクテリアは藻類に含めない。





発展:葉緑体と一次共生、二次共生


葉緑体はシアノバクテリアが初期の真核生物に共生して生じたと考えられている。この共生を一次共生という(シアノバクテリアは細胞膜の外側に外膜をもつ。宿主細胞に取り込まれた後、3枚の膜のうち1枚が失われ、二重膜の葉緑体が生じた。葉緑体の内膜はシアノバクテリアの細胞膜由来、葉緑体の外膜はシアノバクテリアの外膜または宿主細胞の細胞膜由来であると考えられている)。陸上植物や緑藻、紅藻などは一次植物と呼ばれている。
一次植物の葉緑体は2枚の膜に包まれているが、それより多くの膜に包まれた葉緑体が、ミドリムシや褐藻、珪藻などで見つかっている(ミドリムシの葉緑体は三重膜、褐藻、珪藻の葉緑体は四重膜)。そのような葉緑体は、一次植物が他の細胞に取り込まれたことで生じたと考えられている。このような共生を二次共生と呼び、そのようにして生じた生物を二次植物と呼ぶ。ミドリムシや、褐藻、珪藻は二次植物である。下図はイメージ(4枚の膜で包まれた葉緑体の存在は、二次共生が起きたことの根拠になっている。ミドリムシの葉緑体は3枚の膜で包まれているが、これは、二次共生が起きた後、葉緑体の4枚の膜のうち1枚が失われて生じたものであると考えられている。ミドリムシの葉緑体は緑藻の葉緑体が、褐藻、珪藻の葉緑体は紅藻の葉緑体が起源になったと考えられている)。
*葉緑体の膜の由来については、わかっていないことも多く、未だ確定した説はない。

一次共生と二次共生。








まだわかっていないこと

● 地球上にはどのくらいの種がいるのか。また、どのような種がいるのか。

● コケ植物・シダ植物の祖先はどのような生活環を持つ生物であったか。

● 珍渦虫(ちんうずむし)には口があるが、肛門はない(珍渦虫類には、ヨーロッパ海域の海底に生息する Xenoturbella bocki の1種のみが含まれる)。はじめ、この動物はDNA解析から、貝の仲間と考えられていた。しかし、実際は、それは珍渦虫が食べていた餌のDNAを誤って解析したものだった。正しいDNA配列から、珍渦虫は、新口動物であると考えられている。珍渦虫は、体腔、中枢神経も、生殖器官ももたない。珍渦虫をどの分類群に入れたらよいだろうか。

● この地球上に存在する多様な生命を、どう守っていけばよいか。