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【高校生物基礎】第3講「何が生体内で起こる反応を制御しているのか」

 ~プロローグ~
すべての細胞には、ATPと、何百種類もの酵素(こうそ)が含まれている。ATPは、細胞内の多数の化学反応を推し進めるためのエネルギーの運び屋であり、生体におけるエネルギーの「通貨」とも呼ばれている。一方、酵素は、並外れて効率が良く特異性が高い生体触媒である。多くの酵素が、生命を維持するために必要な代謝経路の中心的な反応を触媒している。ATPと酵素は、生命現象に欠かすことのできない物質である。






★テストに出やすいワード
①アデノシン三リン酸
②アデノシン
③アデニン
④リボース
⑤最適温度



要点:ATPはヌクレオチドの一種であり、リボース(糖)とアデニン(塩基)と3つのリン酸からなる。


(1)ATPの構造


● ATP(アデノシン三リン酸)は、リボースという糖に、アデニンという塩基、およびリン酸が3つ結合したものである。

雑談:雑談:糖の語尾は「オース」になっていることが多い(グルコース、セルロース、スクロース、リボース、デオキシリボースなど)。


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ATP(アデノシン三リン酸)の構造。





(2)ヌクレオチド


● ATPのように、糖と塩基とリン酸からなる物質をヌクレオチドという(リン酸は何個あってもよい。ATPは3つリン酸を持つ)。






発展:塩基


ヌクレオチドの中で、塩基性を持った窒素を含む部分を、単に『塩基』とよぶ(化学基礎で学ぶ「塩基」一般とは別の用語)。塩基には、A:アデニンの他にも、T:チミン、C:シトシン、G:グアニン、U:ウラシルがある。

*今すぐ覚えなくてもよいが、TはDNAにのみ、UはRNAにのみ含まれる(RNAについては後に学ぶ)。

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塩基は核酸に含まれている。塩基にはアデニン、チミン、シトシン、グアニン、ウラシルといった種類がある。






● アデニンとリボースが結合したものをアデノシンという。

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● ATPはアデノシンにリン酸が3つ結合した物質である(だから「アデノシン」「三リン酸」という)。

● アデノシンにリン酸が2つ結合した物質はADP(アデノシン二リン酸)という。

● アデノシンにリン酸が1つ結合した物質はAMP(アデノシン一リン酸)という。

雑談:ATPのTは「トリ」、3を表す。「トリ」オは3人組。「トリ」ケラトプスは角が3本ある。ADPのDは「ジ」、2を表す。「ジ」レンマは2つに板挟みになること。AMPのMは「モノ」、1を表す。モノクロは単色のこと。




要点:ATPはエネルギーの共通通貨である。


● ATPをADP(アデノシン二リン酸)とリン酸に分解することで、化学エネルギーを取り出すことができる。取り出したエネルギーは様々な生命現象(筋収縮・発光・同化)に用いることができる。

*同化は生合成反応のこと。後に詳しく学ぶ。

生物はATPの分解によって放出されるエネルギーを様々な生命現象に利用している。






● ATPのもつリン酸とリン酸の間に結ばれた結合を高エネルギーリン酸結合(こうえねるぎーりんさんけつごう)という。この結合を切ることでエネルギーを取り出すことができる。


雑談:コーネル大学医学部に所属していたリップマン(高エネルギーリン酸結合の概念を確立した。1953年ノーベル賞受賞)は、ADPやATPなどのリン酸結合を高エネルギーリン酸結合(~P)と呼び、他のリン酸結合と区別した。しかし、ATPの加水分解から得られる自由エネルギー(仕事として取り出し可能なエネルギー量)の値は、「高」いとうより、「中」程度である(もし、ATPからリン酸が遊離する時に非常に大きなエネルギーが放出されるとすると、逆にADPをATPに戻す反応に対して十分大きなエネルギーを供給できる反応を見つけることは難しいだろう)。ATPの加水分解による自由エネルギーが、「中」程度であるので、ATPは代謝過程における便利なエネルギー伝達分子になり得るのである(つまり、容易に切断されてその自由エネルギーが利用できるところに生理的意義がある)。リップマンの「高エネルギーリン酸結合」という表現は誤った印象を与えかねない。そのため、化学者からは大反対されたが、生物学では広く受け入れ、現在でも一般的に用いられてる。





問題:ATPに(1)リン酸は何個あるか。(2)高エネルギーリン酸結合は何か所あるか。

答え:(1)3個(2)2か所

リン酸とリン酸の間の結合が高エネルギーリン酸結合。





● ADPとリン酸からATPを再合成することができる。ATPを合成する際は、エネルギーの投入が必要である

● ATPの合成に用いるエネルギーの由来は様々である。植物は光エネルギーを利用してATPを合成するし、動物は食べ物(に含まれるグルコースなどの物質)を呼吸で分解した際に放出される化学エネルギーを利用してATPを合成する。以下はイメージ。


ATPがADPとリン酸に分解されると、エネルギーが放出される。


*以下は呼吸の概要。酸素を用いてグルコースを二酸化炭素と水に分解する際に出るエネルギーを用いてATPを合成する。呼吸については後に学ぶ。

グルコースが分解されるときに放出されるエネルギーを用いてATPが合成される。





講義動画【ATPの構造】



雑談:ATPは何度分解されても、すばやく再合成される。さまざまな反応にエネルギーを提供し、細胞内の平和を守る。何度倒れても立ち上がるヒーローのようである。下図はヒーローのようにATPを描いたもの。アデニンシールドと高エネルギーリン酸ソードがかっこいい(冗談です)。

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ATPはヒーロー。




発展:ATPの再生


平均的な人間は、一日当たり50kgを超えるATPを代謝している。もちろん、数十kgのATPが貯蓄されているわけではなく、分解と再合成をすばやく繰り返している。充電池を何回も充電することで繰り返し使えるように、ATPがADPとリン酸に分解されても、すばやく(食物から得た化学エネルギーなどを用いて)ATPに再合成できる。細胞1個当たり、1秒間におよそ1000万分子のATPを消費し、そして再生している。

ATPは充電池のようである(もちろん充電池そのままではない。ATPは細胞内で分解と再合成を繰り返している)。





雑談:呼吸では、グルコース1molが完全酸化される際に遊離するエネルギーのうち、約40%(これは非常に高い値である)がATPの中に蓄えられる。


● 地球上のすべての生物が、ATPを利用している(驚くべき共通性である。すべての生物に共通する性質はそれほど多くない)。したがってATPはエネルギーの共通通貨とよばれる。




雑談:ATP(アデノシン三リン酸)検出システムは、ホタルのもつルシフェラーゼ(ルシフェラーゼは生物発光を触媒する酵素の総称。ATPを用いた発光現象にかかわる)の発光原理を応用している。ATPは、微生物・体液等のよごれに存在する。 ATP検出システムは、食品工場のような場所で役に立っている。そこにATPがあるということは、そこに生物の痕跡があるということの証拠になる。余談だが、ルシフェリンの語源は、堕天使ルシファーである。

雑談:下図はATPのイメージ(覚える必要はないが、余裕がある人は、塩基のところにN[窒素]が含まれることはチェックしておこう)。

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雑談:ATPのリン酸部分において、本来P(リン)が持っていた電子は、O(酸素)に引き付けられている。隣り合った酸素は、互いに少しのマイナスを帯びていることになる。それが解放されると、エネルギーが取り出せると考えて良い(隣り合う負電荷同士の反発や、加水分解生成物の安定化[放出された無機リン酸イオンが共鳴および水との水素結合形成により安定化する]が、加水分解時に放出されるエネルギーに結びついている。知らなくてよい)。ATPがADPとリン酸に分解されるときに放出されるエネルギーを使って、本来エネルギー的に起きにくい多くの反応が推し進められている(水が下に流れ落ちる勢いを利用して、歯車を動かし、物を高い所へ運ぶようなイメージ)。たとえば、細胞内では、ATPが分解されるときに放出されるエネルギーを使って、多くの巨大分子の生合成反応(同化)が推し進められている。





要点:酵素はタンパク質が主成分の生体触媒である。


(1)酵素

● 自身は変化せず、化学反応を促進する物質を触媒(しょくばい)という。生体内では酵素というタンパク質が主成分の触媒が働いている。酵素は生体触媒(せいたいしょくばい)と呼ばれる。




雑談:サムナーは、ウレアーゼ(尿素の加水分解を触媒する酵素)の結晶化に成功し、酵素がタンパク質であることを明らかにした。「私はそのとき妻に電話して、ウレアーゼを結晶化させたよ、と言った」とサムナーは語っている(サムナーは17歳の時、銃の事故で左手を失っている。サムナーは、ハーバード大学を卒業し、おじの経営する綿織物工場に勤めたが、カナダのマウント・アリソン・カレッジより依頼され、1学期間化学の代講を行った。その時に生理学に興味を持ったという。1946年にサムナーはノーベル化学賞を受賞している)。




問題:酵素の主成分として適切なものを1つ選べ。

①タンパク質  ②脂質  ③DNA

答え:①





雑談:通常、酵素が存在することで、反応の速度が1000~100000000000000000倍に促進される。

雑談:砂糖の自然な分解には何世紀もの時間がかかるが、我々は日常的に砂糖を消化する。それは酵素が生体触媒として働いているからである。

雑談:基質は、たとえ別の状態に変化した方がエネルギー的に安定であっても、ある壁(エネルギー的な障壁)が邪魔をして、その方向に変化しないことが多い(たとえば、紙[セルロース]はCO2とH2Oになった方が安定だが、勝手に紙が燃えだすことはない。マッチの火など、エネルギーの投入が必要となる)。

雑談:触媒は、たとえるなら、キューピット役の友人である。AさんとBさんは、お互いに付き合いたいと思っている。ただ、告白には勇気がいる(エネルギー的な障壁がある)ので、2人はくっ付かない。そこで、触媒であるCさんが、「告っちゃえよ!」と言って2人の背中を押す。それによってエネルギー的な障壁が小さくなる。すると、AとBは迅速にAB(生成物)となり、安定する。確かに、1000年待てば、AとBは反応し、カップルになったかもしれない。しかしそれでは遅すぎる(冗談です)。

AとBはABに変化している。この反応を触媒しているCは反応の前後で変化していない。



● 酵素と反応する物質を基質という。基質は酵素と反応し、生成物となる(正確には、酵素と結合し、酵素-基質複合体を形成してから、酵素と生成物に分かれる)。
*本当は、下の2つの→は⇄である。生物基礎ではあまり気にしなくてよい。

酵素 + 基質 → 酵素-基質複合体 → 生成物




発展:酵素の反応


Eを酵素、Sを基質、Pを生成物とすると、以下のような反応が起き得る。 E+S⇄ES(酵素-基質複合体)⇄E+P
酵素-基質複合体には、酵素と生成物に変化するものだけでなく、酵素と基質にもどるものもある。




● 酵素がもつ、基質と結合する部位(基質が結合する窪み)を活性部位(かっせいぶい)という。

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基質は酵素の活性部位と結合し、酵素-基質複合体が形成される。その後基質は生成物に変化する。






(2)カタラーゼ



● 過酸化水素という物質は、そのままではゆっくりとしか分解しないが、酸化マンガン(Ⅳ)を加えると、急激に水と酸素に分解される(2H2O2→ 2H2O+O2)。これは、酸化マンガン(Ⅳ)が触媒として働いたからである。

● 酸化マンガン(Ⅳ)のような無機物の触媒を無機触媒という(無機触媒は、酵素と違い、最適温度がなく[高温ほどよく働く]、基質特異性が低い)。

● 過酸化水素の分解反応は、カタラーゼ(呼吸を行うほぼすべての細胞に存在する酵素)という酵素によっても促進される。

雑談:過酸化水素は、呼吸により生じてしまう危険な物質(副産物)である。カタラーゼはその危険な物質を処理している。また、殺菌に用いられるオキシドールの成分は過酸化水素である。過酸化水素を傷口にかけると泡が立つのは、あなたの細胞内のカタラーゼが過酸化水素を分解し、酸素が発生したからである。


講義動画【カタラーゼ】





雑談:カタラーゼは高速で働く酵素であり、1秒間に、1分子当たり1000万分子のH2O2を処理するとされる。

雑談:実際は、酵素と基質は、鍵穴と鍵のような、(形が固定された)かたいものではない。現在では、基質が結合すると酵素の立体構造が変化すると考えられている。下図を見よ。基質A-Bの結合が酵素のコンホメーション(三次元的立体構造)の変化をもたらし、その結果、AとBの間の結合にひずみが生じて、その切断が容易になる。

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基質は酵素の活性部位に結合する。それがきっかけとなり、生成物に変化する。








要点:タンパク質は高温や極端なpH変化で変性する。


● 酵素は、タンパク質が主成分となっているので、酸化マンガン(Ⅳ)などの無機触媒とは違い、「高温や極端なpH変化で変性する」「最適温度・最適pHをもつ」「基質特異性をもつ」などの性質を持つ。

①変性


● タンパク質は高温で変性(=性質が変わること。高温による変性を熱変性とも言う)してしまうので、酵素は高温で失活(=機能を失うこと)する。

*タンパク質は高温で立体構造が崩れ(熱変性)、ふつう、低温に戻しても活性はもとには戻らない。下図は熱変性のイメージ。

高温で酵素は失活する。


*極端なpHの変化も変性の原因になる。



発展:変性の原因


ふつう、タンパク質の変性では、タンパク質のアミノ酸配列は変化せず、立体構造が変化する。その結果、性質が変わる。変性の原因には、加熱、凍結、乾燥、高圧、超音波、紫外線、X線、極端なpHの変化などがある。加熱による変性を熱変性と呼ぶことが多い。


雑談:一度高温によって立体構造が崩れ、変性してしまったタンパク質は、冷やしても元に戻らないことが多い。目玉焼き(生卵に含まれていたタンパク質が高温で変性し、性質が変わってしまっている)を冷蔵庫で冷やしても、生卵には戻らないだろう。

タンパク質は熱変性によって性質が大きく変わる。



雑談:温泉に住む細菌などの持つ酵素には、高温でも壊れず、十分な活性を保つものもある。PCR法はDNAを増幅させる実験法であるが、その過程に高温のステップがあるので、高温でも失活しない(高い温度の環境に住む細菌由来の)DNA合成酵素が使われている。

雑談:タンパク質は、アミノ酸がつながってできた鎖が、正確に折りたたまれて、特別な立体構造をとることで機能している。高温にさらされると、その立体構造がゆがみ、機能を失ってしまう。タンパク質の構造については発展生物で詳しく学ぶ。

雑談:酵素を食べても、その酵素が細胞内に入り込むことはない。酵素の主成分はタンパク質であるので、消化酵素によってアミノ酸に分解され、吸収される。もし、他の生物のタンパク質が、細胞内に入り込むとすると、もともとあったタンパク質と協働できず、細胞内の代謝が乱されるだろう。すると、最近流行りの酵素食品はどう評価すればよいだろう。

雑談:新鮮なパイナップルはゼラチンを含むデザートに使用できない。これは、パイナップルに含まれるタンパク質分解酵素が、ゼラチン中のタンパク質を分解してしまうからである。しかし、缶詰のパイナップルは、問題なくゼラチンに加えることができる。なぜだろうか?それは、缶詰のパイナップルが加熱されているためである(酵素の主成分であるタンパク質は、高温によって変性する。その結果、酵素は失活する)。





②最適温度・最適pH


● 酵素には、もっともよく働く最適温度(ふつう40℃付近)や最適pHがある(金属などの無機触媒の場合は、酵素とは異なり、高温になればなるほどよく働く)。



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酵素には最適温度がある。





● ほとんどの酵素の最適pHは7付近である(たとえば唾液アミラーゼの最適pHは7)。

● 酸性環境である胃で働くペプシンの最適pHは2。トリプシンの最適pHは8。(ペプシンとトリプシンの最適pHだけは覚える!)

語呂「焼き鳥にペプシ(焼き鳥の や で8。焼き鳥の 鳥 でトリプシン。 に で2。ペプシでペプシン)」

*ペプシンやトリプシンはタンパク質の分解に働く酵素。

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酵素には最適pHがある。




雑談:風邪で40度近い熱が出るのは、酵素の働きを活発にするためだとも言われている。それよりも高熱が出ると、体のタンパク質が変性し始め、命が危なくなる。






③基質特異性(きしつとくいせい)


酵素には、特定の基質としか反応しかしない性質がある。そのような性質をを基質特異性という(無機触媒は一般に基質特異性は低い)。


雑談:それぞれの酵素に備わった高い基質特異性によって、多種類の代謝産物が混在する生体内で厳密に代謝を制御できる。




Q&A



Q.アデニンって何?…塩基の一種。弱い塩基性を持つ有機物だが、構造はテストに出ない。塩基には他にも、グアニン、シトシン、チミン(DNAのみ)、ウラシル(RNAのみ)がある。

Q.アデノシンって何?…アデニンとリボースが結合したもの。

Q.リボースって何?…糖の一種。

Q.糖って何?…糖の別名は「炭水化物」。見かけ上、炭素と水から成るような組成をもつ化合物の総称。Cm(H2O)nで表わされる。mとnは整数。たとえばm=6、n=6なら、C6(H2O)6のグルコース(C6H12O6)。

Q.合成したATPはどこで、何に使うの?…その細胞内で、様々な化学反応の推進に使われる(ATPがADPとリン酸になる時に放出されるエネルギーを用いて、起こりにくい反応[たとえば特定の場所に物質を運んだりする反応や、複雑な物を合成する反応]を起こすことができる)。なお、ATPは細胞膜を通れない。したがって、たとえば動物において、細胞から細胞へは、グルコースという糖が主なエネルギー源として移動している(それが血糖である)。

Q.どうしてエネルギー源としてグルコースがよく使われているの?…グルコース(ブドウ糖)は生物界で「最も」よく使われているエネルギー源であるが、なぜグルコースが選ばれたのかについては、確定した説はない。水によく溶けること、縮合性・加水分解性に優れていることなどが、エネルギー源としてよく利用されている理由かもしれない。

Q.ATPからAMPができることもあるの?あるなら、ADPとリン酸に分解するより、AMPとリン酸2つに分解した方が、たくさんエネルギーが得られてお得だよね?…AMPが生じることはある。しかし、エネルギー的に得をしている、とは一概に言えない。ATPは充電池みたいなものであって、結局、ATPを再合成するには、外部からのエネルギーの投入(たとえば食べ物の中にある化学エネルギー)が必要である。

Q.エネルギーって何?…仕事をなしうる能力、と高校物理では定義されるが、本質は何かと聞かれれば、それは非常に難しい。人類は、一定に保たれる"ある量"に、エネルギーと名付けた。厳密なエネルギーの定義については気にする必要はないが、高校生物においては「自分にとって都合の良い反応を無理矢理推し進めるには、エネルギーの投入が必要」という概念が重要である。(半分冗談だが)部屋を綺麗に片付けるのには、エネルギーが必要(筋収縮にはATPの分解が伴う)だが、部屋は勝手に乱雑になっていく。

雑談:「我々がまずある数を計算しておく、それから自然がいろいろな変化をした後になって、もういっぺんこの数を計算してみる。そうすると、面白いことには、その値が前と同じだというのである。」「エネルギーにはちがった形のものがたくさんあるのであって、おのおのに対してそれぞれ計算式がある。すなわち:重力エネルギー、運動エネルギー、熱エネルギー、弾性エネルギー、電気エネルギー、化学エネルギー、輻射エネルギー、核エネルギー質量エネルギー等である。これらのおのおのの量を求めて全部加えあわせると、エネルギーの出入りがなければ、答はいつも一定なのである。エネルギーとは何だろうか。それについては、現代の物理学では何もいえない。」ファインマン『ファインマン物理学』より


Q.酵素ってどこにあるの?…生きた細胞なら、基本的にどの細胞にも存在する(すべての生物の、すべての細胞に存在する)。細胞質基質に存在する酵素もあるし、ミトコンドリアには呼吸に関するたくさんの種類の酵素が、葉緑体には光合成に関するたくさんの種類の酵素が存在する。消化酵素などは細胞外に分泌され、細胞外で働く。

Q.酵素って永遠になくならないの?…実際は、何もしなくても、常温で放置すると壊れる(徐々に変性する)。研究室では酵素はふつう冷凍保存する。細胞内の酵素は、遺伝子発現により、常に補充され続けている(生産される量は厳密に調節されている)。

Q.酵素って細胞内から出れないの?…そんなことはない。必ず酵素は「細胞内でつくられる」が、消化酵素のアミラーゼやペプシンのように「細胞外に分泌されてはたらく」酵素もある。



講義動画【酵素のはたらきをあらわすグラフ】


(発展です)


講義動画【酵素の阻害】


(発展です)




講義動画【酵素と活性化エネルギー】


(発展です)