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220414【映画と夜遊び女とドライな朝と】

映画について、自分は非常に疎い方だ。今、映画館では何が上映されているのか、何がヒット作品なのか、情報をキャッチできていない。職場で「あの映画見た?」という会話にはなるべく入らないよう、仕事が忙しいふりをしてでも目線を下げ、キーボードを打ち込むようにしている。学生時代、「土曜日のめちゃイケは見た?」という話題を真っ先に繰り出していた身だが、どうも「映画」には疎い。映画、というか、映画館に疎いのかもしれない。子どもの頃、金曜から日曜にかけて、テレビを点ければ、どこかのチャンネルで名画が放送されていた。幼くして、週末は夜更かしOKの許可をいただき、まだまだ規制が少ないテレビ業界でもあったせいか、昔のおどろおどろしい作品と触れる機会が多かった。ストーリーは全然頭に入ってこないのだが、昔テレビで観た「八つ墓村」と「極道の妻たち」シリーズはよく覚えている。当時の技術からして、特殊メイクや血や傷口、リアルなものからは程遠いのかもしれないけど、怖かった。毒を盛るシーンもあったなぁ。トイレに行くのが怖くなったのもここだけの話。また、任侠映画の娯楽シリーズとしての“極妻”。何も知らないガキの自分は、こういう世界が東京や大阪には潜んでいるんだ、と、やっぱり怖くなった。

大人になって、タブレットを開いてサブスクのプラットフォームで久しぶりに上記タイトルの作品を観た。やっぱり面白かったし、大人になった目線で、エンターテイメントとして観ることができて嬉しいのだ。あと、観ながらにして、「こんなシーンあったなぁ。」と回想する。まあ、よっぽどの最新作でない限り、タブレットで映画を観れる世の中になってしまった。映画館、遠い存在だ。自分、すぐ寝ちゃうし。

そんな中、色んな情報が溢れる日々に「アカデミー賞」のニュースが入った。とりあえず、「アカデミー賞」なのだから、優秀な賞だ、それ以外はよく分からない素人な自分。日本の作品が国際長編映画賞を受賞したというニュースが入ってきて、作品名は「ドライブ・マイ・カー」だという。その作品を観たことが無いし、恥ずかしながら、今からでも映画館に観に行こうともしない疎さなのだが、出演女優の三浦透子さんにはとても惹かれるのだ。

なんだろ、確かに綺麗だし、この女優さん、昔から知っていて良い演技をする。って勝手に思っている。なっちゃんのCMは覚えてなく、彼女を初めてスクリーンで観たのは2015年の「私たちのハァハァ」だった。まあ、それも彼女を観たい、というわけではなく、自分好みのちょっとニッチな青春ロードムービーだったから、当日付き合っていた今の妻を連れて、映画館で観た。

その頃から、何故か彼女が印象に残っていて、それ以降特に何も追ってないんだけど、ここで来た「ドライブ・マイ・カー」のジャケットから出てくる彼女。

どうも魅力的だなぁと思って、振り返ると、昔、遊んでいた女の子に似ているからだとたどり着く。鬼恥ずかしい。

その彼女について書いても、何も世界は変わらないし、この先のプラスにもマイナスにもならないけど書き進める。

彼女をとは、表参道にて、とあるブランドのポップアップショップの仕事で出会った。約2週間のポップアップの展開に、担当者として自分は毎日現場に足を運んだ。その場に、コンパニオンスタッフとして彼女も連日勤務をしていた。コンパニオンスタッフは10名ほど居たが、どうも自分は、彼女だけが恐縮ながら「タイプ」であって、休憩中に他愛もない話で盛り上がり、一連の仕事が終わった後、彼女とサシでのご飯に誘うことができた。当時、自分は20代半ばで、彼女とは同世代。もうロックオンしていた。

彼女は、身長は170センチないくらいの高身長で、眼力があって、その顔が三浦透子さんに似ているの。初めて聞いた名前の芸能事務所に所属しながら活動をしており、自分で曲を書き、ギターを弾くシンガー・ソングライターでありつつ、演技の仕事もしていて、アカデミー賞には全く引っかからないB級映画の主演をしていた。確かに、You Tubeで検索すると、曲なり、動画なり、出てくる。更にはホームページにウィキペディアと、自分で作ったのか分からないが、それなりにプロフィールが揃っていた。それでも芸能の仕事だけでは食べていけないため、アルバイトとしてコンパニオンスタッフをしていたようだ。

その日、自分は積もり積もった仕事を投げ捨て、20時にスクランブル交差点のロクシタンカフェの下で待ち合わせ。ハチ公前やTSUTAYA前は混むから、待ち合わせはいつもここにしているんだ。と会話をしながら、奥渋谷のお店に入った。乾杯をして、彼女の本来の姿を聞いた。返すように、自分はこういう仕事を、業界の端っこでしてます、と話したら、向こうから食いついてきた。そして、酒場の席で自分は彼女のCDを一枚買った。手売りの自分で焼いたCD、彼女にとってはCDを売ってナンボ、ファンを増やすためには大事な手段なのだろう。

その後、すっかり酒が進み、何故か立ち寄ったゲームセンターにバーとハシゴをし、終電が過ぎた25時、渋谷のセンター街で彼女にキスをされた。自分は感情が爆発するのを必死に抑え、金曜日で捕まるはずのない「割増」を灯した走り去るタクシーたちに手を上げ続けて20分、ようやく空車のタクシーが止まり、とろけそうに眠りそうな彼女をタクシーに乗せこんだことを思い出す。自分、モテたこと無いし、女遊びの経験も乏しいから、「うわー、これが東京の夜遊びか。」と心の中で叫んだ。

朝になり、自分の狭い部屋に彼女。身支度を整えて、彼女を小田急線の最寄り駅まで送ったんだけど、その時はもうドライだった。それは、彼女の作戦と、「何度もこういうこと、してんだろうなぁ。いろんな男と、こういうこと、してんだろうなぁ」と、その時気づいた。ああ、こうやって彼女、遊びながら、表現の仕事をしていくんだって。いやぁ、自分なんかじゃ、良い曲書けないと思うが。もっといい男と遊ばないと。自分には分からないけど。そして、あの朝、なんか覚えている。すんごいドライで、身体は疲れていて。でも、自分はしっかりカウントに「1」を刻む。誰かに会ったら「この前遊んだわ。」と言ってやる。

というところで夢から覚めた、にしておく。

今でも細々と活動している彼女。彼女ももう30代じゃん。たまに、検索してしまう。早く売れろ、と勝手に応援している。売れたら、「この子、自分遊んだことあるで。」と言ってやる。もちろん、向こうは自分のことなんて、覚えてないのだろうけど。

さて、映画館に行こうか、それとも、ドライブに行こうか。

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