【一級建築士製図試験】一発合格した私のエスキス方法
こんにちは。やぎ座の人です。
私は令和4年度の一級建築士試験にストレート合格しました。
学科試験は1年半以上勉強しましたが、製図試験については、たったの2ヶ月ほどの勉強時間で突破することができました。
特に仕事で設計をしているわけでも、学生時代に設計の研究室に所属していたわけでもない私が製図試験を一発合格したのは、論理的で淡々としたエスキスを行っていたからだと思っています。
製図試験においては、長い課題文から情報をうまく処理し、筋の通ったプランを描くことが大切です。建築士試験の製図に必要なのは、芸術的なセンスではなく、情報処理のセンスだと思います。製図試験は感覚的に解いてもうまくいきません。
今回の記事では、令和4年度の実際の製図試験を例に、私のエスキス方法を紹介したいと思います。
(実際のエスキス用紙)
上の写真は、本番の試験の私のエスキス用紙です。どのように考えてエスキスを行っているのか、具体的な手順について以下に説明します。
STEP1 面積をコマに換算する
エスキスの一番最初にやることは、要求室の面積をコマに換算するという作業です。面積で考えるとよく分からなくなるので、要求室全てをコマに置き換えます。
RCで計画する場合、だいたい柱の間隔は6~8mになるかと思います。過去の模範回答を見ると、コマ割りは、以下のパターンが多いです。
1コマ、42㎡から48㎡になることが多いので、私はいつも1コマを40㎡か50㎡で換算していました。コマに換算する作業自体はとっても簡単です。単純に「各室の要求面積÷40 or 50」をするだけです。私は以下のように、問題用紙にコマ換算した数値を直接書いてました。
ちなみに40を選ぶか50を選ぶかは、そんなに重要ではないので、要求室の面積の数値を見て換算しやすそうな方を選べば問題無いです。
また要求室以外の諸々の設備は、いつも4コマで考えていました。4コマの内訳は、階段×2+設備スペース等で2コマ、エレベーターで1コマ、トイレ1コマです。
さらに、この段階で1フロアあたり何コマになりそうかを計算し、建物の規模感や外形を掴みます。今回の場合だと、1階は21.5コマだから、21.5×40=860、建ぺい率は余裕だなぁ、全体のコマ数は、21.5+24×4フロア+17=134.5、さらに、134.5×40=5340、容積率も余裕だなといった感じです。
令和4年度の課題は面積がシビアではないので気にしなくても良さそうですが、面積合計の条件がシビアな課題は、コマ換算の段階で、調整できる範囲でコマ数を調整します。(面積適宜や〇〇以上の要求室のコマを調整するなど。)
STEP2 建築可能範囲を考える
次に敷地内の建築可能範囲を考えます。建築可能範囲は高さ制限から考えます。
高さ制限を考えるにあたって、そもそも設計する建物が何メートルになるのか?を考えます。要求文から高さに関する記載を探すと、今回は「貸事務室の天井高が2.8m以上」という条件があるので、階高で考えると、4mあれば確保できるかと思います。他に高さに関する制限はないので、全ての階を4mで考えると、4m×6フロアで24mとなります。これにパラペット分と1階の床レベルの0.7mを加算すると24.7mになります。
道路幅が10m、道路斜線の勾配が1.5なので、セットバックをxとすると、道路斜線の計算式より、(X+10+X)×1.5 >24.7、X>3.2となり、セットバックは4m必要ということになります。ちなみに特に高さ制限のない部分のセットバックは通行のことを考慮して、だいたい2mは空けておくようにしています。
セットバックがわかると、建築可能範囲がわかるので、エスキス用紙に建築可能範囲を以下のように書き込みます。今回は横が44m、縦が24mとなります。この段階で念のため、建ぺい率についても問題ないか確認しておきます。
STEP3 条件をコマで整理する
次に要求文の条件をコマで整理します。コマで整理することで、チビコマが簡単になります。イメージとしては以下の感じです。
コマ整理の段階では、部屋のつながりを整理することも重要です。この課題の場合は「シェアオフィスと屋外テラスが直接行き来できる」などの条件があるので、そういった条件を図示しておきます。チビコマに入る前に、きちんと条件を整理しておくことが大事です。
また面積が「〇〇以上」となっているものについては、着色をしておくことで、面積不足にならないように意識をしていました。
またこの段階で設備方式についても、整理・検討しておきます。
STEP4 スパン割の検討
次にスパン割の検討をします。STEP2 で建築可能範囲について検討したところ、今回は縦方向24m、横方向44mの建築可能範囲になりました。コマの最大値と最低値を検討するために、柱の間隔(6m,7m,8m)で割ると、以下のようになります。
今回、STEP1で検討した通り、24コマだと基準階の納まりが良さそうなので、上記の中で24コマが確保できる組み合わせを探すと、縦が6mスパン、横が7mスパンなら、24コマ確保できることがわかります。
そこで、24コマの場合の基準階のチビコマについて考えてみます。すると、事務室のコマ数が3×3になってしまい、これでは事務室の条件である、無柱空間にするのが難しいなということが分かります。
センターコアのパターンも検討していますが、今までにセンターコアで設計した経験がなかったため、本番では選択しませんでした。
この検討で、無柱空間とするためには、事務室を2×○のコマ割りにすべき、そのコマ割りにするなら、縦を3コマにするのが一番プランニングしやすそう、という理由で、次に縦が3コマのパターンを検討しています。
STEP1の検討から、コマ数は21~24は必要なことが分かっているので、可能な限りコマ数を増やすため、横は最大値の7コマを選択しています。このコマ数で基準階のプランを考えると、図のようなプランニングが一番綺麗に収まります。
コアの場所から考えると、自然に最上階のプランニングも確定します。
さらに周辺敷地条件や管理用導線を考えて、1階の主要な要求室を配置していきます。今回は駅からの動線を考えて入口は南側とし、サービス用の駐車場からの動線を考えて通用口は南に持ってきています。さらにテラスを持つレストランは環境の良さそうな公園側に持ってきています。
上記のように配置していくと、大体うまく収まりそうなことが分かってきこのスパン割で確定することに決めました。
この段階では、要求室にある管理部門の管理人室などは配置できていませんが、チビコマから通用口周辺の空間をうまく使えば、十分に配置できそうと予測が立つので、ここまでできたら、1/400のエスキスに進みます。
チビコマの段階では、コマの最大値と最大値の範囲内で、どのコマ数を選択するべきか、いろんなパターンを検討して試すことが重要かと思います。
さらに周辺敷地や導線を意識して、各室を配置していくことが重要です。製図が苦手な人は感覚的に配置してしまうことが多いかと思いますが、駅からの導線があるから入り口はこっち、管理者と利用者の導線がこうなっているから室配置はこうなる、など理由をつけて室配置をすることが大切かと思います。
またチビコマの最後には、面積が条件を満たしているかも確認しておきます。
STEP5 1/400でのエスキス
STEP4まで終われば、ほぼ完成みたいなものですが、最後の1/400エスキスでは作図で迷わないために、より詳細にプランを詰めていきます。ここでもう一度課題文について確認し、細かい要件についてチェックし、図面に落とし込んでいきます。
各部屋の面積についても一つずつ確認し、とにかくこの段階で課題文の条件を満たしていない部分がないか、徹底的にチェックをかけます。図面を書く段階では、ただの作業となるよう、エスキスで全ての検討を終わらせます。
(おわりに)
以上が私のエスキス方法です!
廊下係数の検討や、もっと細かくつながり図を記載する人もいるかと思いますが、私は可能な限り無駄な検討は省いて、シンプルにエスキスを考えていました。
エスキスの方法は迷われる方も多いと思いますが、自分にあったエスキス方法を探して、自分だけの手順を確立することが大事だと思います。
私のnoteでは、他にも建築士試験関係の記事を記載していますので、興味のある方はぜひ他の記事もお読みください!
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