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R流の事業づくりを知る「リクルートのすごい構"創"力」

読んだのは5年前の2019年。

なんでリクルートはあんなに幾つもの事業・プロダクトが成功してるのか、何かしら再現性がある方法論があるに違いない、知りたい。と思っていたところにドンピシャの本が出たので読んだのでした。

本書では、リボンモデルに代表されるリクルートの事業づくりを0→1、1→10前半、1→10後半、にわけて計9つのステップを紹介しています。

当時の仕事(HRテックの領域でtoCのモバイルWebプロダクトを作っていました)にも参考になる部分が多く、とても勉強になりました。今はtoB事業のプロダクトづくりを担っていますが、変わらず本書に書かれていることはとても参考になることが多いです。

振り返りも兼ねつつ、印象に残った箇所を抜粋・コメントしておきます。

ゼロから1を生み出す新規事業の創出である「0→1」。ビジネスの 種 の発見と言い換えることもできる。 世の中に、まだ存在していないモデルを生み出すステージだ。  これは、左側のリボンに何を置くか、右側のリボンに何を置くか、両者をつなげて、ベストマッチングを追求するうえで、リクルートがどのような役割を担うことができるかを見極め、リボンモデルの概要を描くステップだ。 このステージ1で使われるのは、次の3つのメソッドだ。
メソッド ① 不の発見…新規事業の起点となる「不」を探す
メソッド ② テストマーケティング…発見した「不」がビジネスとして成立するのかを見極める
メソッド ③ New RING…アイデアを事業に育てるサポート

この「1→ 10」の前半 に当たるのが、 事業の「価値」を定義し、「勝ち筋」を見つける ステージ2だ。ここでは、次の3つのメソッドが登場する。
メソッド ④ マネタイズ設計…圧倒的な収益を獲得するためのモデル設計
メソッド ⑤ 価値KPI…勝ちにつながる行動や指標を発見・特定する
メソッド ⑥ ぐるぐる図…PDSを高速に回しながら、勝ち筋を探る手法

ステージ2で発見した勝ち筋やKPIを実行し、 爆発的な拡大再生産につなげる のが「1→ 10」の後半 に当たるステージ3だ。ここでポイントとなるのが、次の3つのメソッドである。
メソッド ⑦ 価値マネ…発見した価値KPIに基づき、拡大させていくためのマネジメント
メソッド ⑧ 型化とナレッジ共有…価値マネを実践するための行動を「型」に落とし込んで共有する
メソッド ⑨ 小さなS字を積み重ねる…現場でつかんだ〝兆し〟を吸い上げる仕組み。

めちゃくちゃわかりやすい。

まず1つ目が、 見過ごしがちだが誰も目をつけていなかった「不」かどうか。 多くの人が抱えているにもかかわらず見過ごされてきた、潜在している「不」こそが、ビジネスの源となるからだ。「スタディサプリ」で言えば、実際に調査をしてみるまでは、これほど多くの高校生が「受験勉強の機会がない」ことについて悩んでいるとはわからなかっただろう。

「不」の発見は、単なるニーズを探すこととは異なる。本当に誰も見つけられなかったのか、それによって世の中・業界構造が変わるほどのインパクトがあるのか、収益をどこから得るのか、というところまで突き詰めて考えることが重要。

「不」は「ニーズ」とは異なる。界隈によっては"Burning Pain"や"Burning Needs"とも呼ぶものと同義だろう。

メソッド ① で発見した「不」や、それを解消するためのアイデアが、本当に人の心を動かすものなのか。また、仮にその「不」が本質的で、悩みが深刻であっても、ビジネスとしての市場性が存在するのかどうか、収益を生み出す事業性があるのかどうかが見えないと、事業化へのステップに進むことはできない。 これらを見極めるため、限定的な規模でテストマーケティングを設計する。 テストマーケティングでは、「市場はありそうだが、利益があがるビジネスになり得るか、コスト面の検証を行う」「企業側に不があるのは確かだが、その不は企業にとって、お金を払ってまで解消したいものなのかを検証する」などの目的が達成できるよう、設計していく。

リーンに検証すること。

ポイント ①クライアントが明確であること
リクルートにおける「勝ち筋」の定義は、大きく3つあり、フィジビリではこの3つを粘り強く追求する。  1つ目は、「そのサービスに対して誰がお金を払ってくれるのかが、明確であること」 だ。いくら「不」が存在しても、それに対してお金を払う人がいなければ、マーケットは生まれず、ビジネスにはならない。リクルートでは、「いいもの(サービス)であれば、誰かが買ってくれるだろう」という発想は絶対にしない。
ポイント ②「お財布」までが見えていること
2つ目は、「お財布」が明確であることだ。「誰がお金を出すか」だけでなく、「誰が、どのお財布からお金を出すか」までを突き詰める。  お金を出すのが個人であれば、これまで雑誌を買うのに使っていたお金を振り向けるのか、交通費として使っていた分を振り向けるか。法人であれば、広告宣伝費か販売促進費か。これまで何に使っていた予算を、どのように削減して、新しいサービスに振り向けてくれるか、具体的なシナリオが描けるかどうかまで問う。
ポイント ③ 利益を生むオペレーションモデルが確立できること
3点目は、コスト優位性のあるオペレーションを継続的に行える仕組みができることだ。「コスト優位性」と「継続性」がポイントだ。 売上だけでなく、コストも細かく詰めるし、組織体制や人繰りの回し方なども含めて検証する。  いくら売上の見込みが立っても、オペレーションが回らなかったり、オペレーションにかかるコストが大きすぎるのであれば、「勝ち筋」とは言えない。一時的に売上が立つだけでは不十分で、継続的に売り上げ、そして利益が上がる状態を維持できなくてはならない。利益を最大化するためのオペレーションの仕組み作りまで、「1→ 10」の勝ち筋を探す段階で行うのだ。

捌け率 90%超というのは、6割程度の実売率と言われる雑誌業界から見れば驚異的な数字である。また、頻繁にナショナルクライアントによるタイアップが入るというのも、異例だろう。しかし、 これらはオペレーションと結びつけて「マネタイズする」にまでは至らなかった、ということで「価値KPI」ではなかったのである。 こうして、2015年に紙の「R 25」は休刊した。

KPIに必要な条件は次の3つだ。
① 整合性…最終的な目標に向かって、きちんとロジックが通っていること。最終的な目標が売上なのか利益なのかということだけでも、達成への道筋は異なってくる
② 安定性…KPIとして定めた指標が、安定的・継続的にとれること。検証しづらいものをKPIにしてはいけない
③ 単純性…指標が少なく(できれば1つ)、覚えやすいかどうか

R25の事例まで含めてめちゃくちゃわかりやすい。toB事業に携わる今、これらがいかに重要か痛いほどわかる。特に「誰がどのお財布から支払うか」を深く理解することは本当に大事。

リクルートのヨミ会は、「今週の売上はどうだった?」ではなく、「今週なぜ売れたのか?」「なぜ売れなかったのか?」が問われる。「なぜ」を解き明かすための会議だ。 「お客様は、なぜ買ってくれたの?」 「その納品内容で、お客様の不は解消できるの?」 「あと、何が足りていれば買ってくれたの?」 「どうすればもっと提供価値を高められる?」 「同じ価値を求めているお客様は、もっとほかにもいるのでは?」 などの質問が飛び交う。

「勝ちパターンの共有」というとごく当たり前のことのように聞こえるが、それを実行してみたくなるネーミングや、チームによる競争の工夫などを入れ込むことで、実行される確率は格段に高まる。

良い。数字ではなく「なぜ」を突き詰めて再現性を作り、組織のナレッジにする。

顧客に提供する価値を変えることで、さらなる事業の成長を図るケースもある。

カーセンサーは、中古車販売店から中古車の情報を集め、カーセンサーのWebサイトに掲載することで、販売店に送客を行う広告モデルが主体だ。しかし、この中古車販売会社A社の場合、急速な新規店舗の拡大スピードに人材育成などが追い付かず、せっかく送客が行われても店頭での成約率が伸び悩んでいた。  このためカーセンサーは、A社が持つ中古車すべてをカーセンサーに掲載し、送客ではなく、実質的な成約とひもづく問い合わせ課金という従量制度に変更した。それだけでなく、カーセンサーが持つ営業担当者の人材育成やKPI管理のノウハウを、この会社に提供し、コールセンターのスタッフが、中古車販売店に対してコーチングをする仕組みを整えた。  つまり、中古車販売のプロセスすべてにまで、サービス提供の範囲を広げている。  これらはどれも、 顧客企業のビジネスプロセスに深く入り込み、ビジネスモデルを進化させるところにまで、提供価値を大きく広げていると言える。

市場の不をもう一度見つめ直し、自らの提供価値を再定義し、「スピードで圧倒する」「マネタイズポイントを変える」「周辺領域に拡大する」「他社のビジネスプロセスに入り込む」などの形で進化させることで、新たな成長を生み出すことができる。

マーケットや顧客の状況にあわせて価値を再定義することの重要さ。

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