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キャンセルしてどうのこうの

ここ1,2年で急に「キャンセル・カルチャー」という言葉を聞くようになった。消費者としての力を駆使して企業の行動を良い方向に促したいということらしい(※1)。

ぼくも「消費者が世界を変える」みたいなことを書いたことがあるのでこれに近いものを考えてはいたんだけど、企業に対して「心を入れ替えろ」とか「行動を変えろ」ということは全く考えたことがなかった。人の心が入れ替わるには非常に時間がかかるし、1回の「キャンセル」では全然変わらない。

女性にふられた男性が、じゃあ心を入れ替えてあの子に好かれるような男になろう!と思うかといえば、全然そうならないのと同じだ(※2)。むしろ振られた男は「相性が悪かったかなあ」とか思って、心を入れ替えたりすることなく、ありのままの自分を受け入れてくれる人を探す。

それがすべての女性から同じように「お前はクズだ」と言われたら男もさすがに心を入れ替える努力を始めるかもしれないけど、そう簡単に全員の行動が一致するということはなかなか起こらない。

そもそも「キャンセル」するということは、一度は「良い」と思っているということだ。また恋愛で例えるなら、短い期間でも付き合ってくれる女性がいるということだ。そんな状態でその男の心が入れ替わるはずがない。

むしろ消費者としての力を発揮するのは、「買う」ことのほうだ。

これは犬にコマンドを教えるのと同じである。お座りしたらエサをあげる。お座りする犬にエサをあげる。あげつづける。そうすると犬はお座りをいつでもやる。企業も犬と同じである。
エサをあげないと犬はコマンドを覚えない。企業も同様に、お金をもらえないなら何にもやらない。キャンセルとは、エサをあげないということだが、エサなしでコマンドを覚える犬はいない。難易度が高すぎる。

(※補足1)
キャンセル・カルチャーの定義はもっと広くて、プラットフォームから追い出されるという意味あいもある。でもそのとき権限を持っているのはプラットフォーム側で、追い出すことによってプラットフォームがメリットを享受する場合にのみ追放が行われる。

(※補足2)
相手の女性がめちゃくちゃ好きなら男性も心を入れ替えて変わろうと努力するかもしれない。でもそこまで好きじゃなかったら絶対に変わらない。


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