オタク、歯列矯正をする

歯列矯正を始めてちょうど一年経った。
全体的に揃ってきたもののまだ細かい部分の調整が必要らしい。当初の予定通りあと一年で終わるだろうと言われた。キリがいいし備忘録としてこれまでの経緯を振り返ってみようと思う。

そうだ、矯正しよう

私は物心つく頃からガチャ歯だった。コンプレックスというほどではないにしろ気にしてはいたので、歯科健診の折に矯正について尋ねることもあった。それでもなかなか踏ん切りがつかなかったのは「めちゃくちゃ痛い」という話を耳にしていたからだった。
私はとにかく痛みに弱い。この世で嫌いなものをランク付けするなら一位:同担、二位:虫、三位:痛みが入るくらいには無理だ。すっ転んで膝を擦り剥いたらそれだけでもう泣いてしまう。
そんな幼児もびっくりの脆弱さに加え、先生から「ちかげさんは多分抜歯がいるね。矯正するならすぐ抜いてあげるよ!いつでも来てね!」と追い打ちをかけられたので完全にビビっていた。

そして時は過ぎ、世間がパンデミックでわーわーになった頃。友人とこんな会話をした。
友人「そういえばさ、うち矯正始めたんだ~」
私「え!!すごい!やっぱり痛い?」
友人「痛いけどまあ大丈夫」
私「ほんと?じゃあ私もやる~!
オタクはわけわからんところでフットワークが軽い。後日矯正始めたよ~とツイートしたところ「え、マジだったの?」と言われた。マジだよ。

いざ開始

とはいえ流石に病院は慎重に決めた。評判のいい病院を数軒回りカウンセリングを受けて、治療内容はもちろん先生の雰囲気までじっくり見た。先生との相性、見逃しがちだけど大事。
病院を決めたあとはレントゲンを撮ったり、治療の流れや注意事項の説明を受けた。注意事項は「医師の言うことには従ってください」という当たり前体操レベルから「食べてはいけないもの」などわりとたくさんあった。ガムや餅みたいなくっつきやすいものは装置が取れやすいのでNGらしい。
特に餅は「食べないでください」と口頭でも言われた。私そんなに餅食べたそうに見える?

矯正のやりかたとしてブラケット矯正(ワイヤータイプ)とアライナー矯正(マウスピースタイプ)の二種類があって、私は前者で進めることになった。元々アライナー矯正には若干の不信感があったし、料金もブラケット矯正のほうが安かったのでほっとしたのも束の間「まず上下四本抜歯してください」と死刑宣告を受けて本気で泣いた。

地獄編 ~抜歯、そして装置装着~

死刑当日、トボトボと歯医者へ向かった。基本歩くのが速い私でもこの時ばかりはゾンビよりも遅かった。
諸事情で抜歯する前に引っ越したので、以前追い打ちをかけてきた先生とは違う病院だった(注:私の矯正歯科では抜歯を行っていないため別の病院を紹介される)
新しい先生は陽気なおじさんで、ド緊張してる私に「じゃあ抜いちゃうね~!」と元気に笑いかけてくれた。別にいいけど歯を抜く時のテンションそれで合ってる?
テンションこそヤバいものの腕は良い先生で、抜歯は三分もかからなかった。ボンヤリしている間に縫合まで終わり「これ記念にあげるね♬」と肉片つきの歯を渡された。いらねえ。

その後日を跨いで他三本の抜歯も無事終わり、化膿なども起きず、予定通り装置をつけることになった。装着には痛みがないことを知っていたのであまり不安はなく、単純にワクワクしていた。
装着当日。椅子に寝かされて、歯に取り付けた装置をLEDライトっぽいもので固定していく。痛いとか熱いとかまったく感じないの時間は正直退屈極まれりだった。次に書く小説どういう話にしようかな~とか考えて暇を潰した。
固定が終わり、装置にワイヤーを通して無事装着は完了した。鏡で見てみると思っていたよりもワイヤーが細い。先生曰く「歯を動かす準備段階だからワイヤーも一番細いものを使っている」とのことだった。どうやら最初から歯を移動させるわけではなく、ほんの少し力を入れて慣れさせるらしい。
これならわりと楽勝かも♬と余裕をこき、噛みやすそうなお弁当を買ってルンルンで帰った。それが地獄の始まりとも知らずに……

家に帰り、やや時間をかけて夕食をとった。ネギが装置に挟まりすぎてゲラゲラ笑った。思っていたより食べられたな、やっぱり歯磨きは時間かかるな、とか思いながら床に就いた。

それからしばらく経っても一向に眠れなかった。
歯が痛い。痛いし痒い。「痛痒い」のワンランク上くらいの痛みが延々と続いている。器具が唇の裏側に当たってモゾモゾするのがシンプルに気持ち悪い。何これ?真綿で首を絞めるタイプの拷問?
しばらくウーウーと呻いていたものの、前述の通り私は痛みに弱いので結局鎮痛剤を飲んだ。無事薬は効き、そのタイミングでなんとか寝ることができた。

それで終わりとはいかず地獄は翌日も続いた。あのさ、フニャフニャの春雨が噛めないなんてことある?
噛めない。どんなに頑張っても力が入らない。上の歯と下の歯が当たった瞬間に痛みが走り「ウゥーッ!!」とデカめの呻き声が出る。
前歯に当たったら本気で死にそうだったのでパスタのように巻いて押し込むというパワープレイで乗り切った。春雨スープ作った人、こんな食べ方絶対想定してない。
そんな風にヒィヒィ言いながら食事をとり、歯磨きの面倒臭さに辟易し、常時続く歯の痛痒さに呻いていたが、一週間ほどでようやく収まった。流石に煎餅をボリボリ貪り食うとかは無理だけど、普通のご飯なら食べられるようになったし装置の違和感にも慣れた。
やっと乗り越えた♬と呑気にできる時間も秒で終わり、ワイヤーを締め直す日がきた。基本的に歯列矯正は月に一度調整が必要なのだ。地獄って月一であるらしい。

そして現在

そんなことを繰り返して一年、だいぶ歯が揃ってきた。歯磨きも楽になった。相変わらず調整のたびに呻いてはいるけど、薬を飲まなくていい程度には慣れてきた。
せっかくなので矯正前と現在の写真も載せようと思う。まあまあ絵面がグロいのでワンクッション置きます。




☆★☆★注意!えぐい写真があるよ☆★☆★





ビフォー


アフター


かがくのちからってすげー!!!!

ちなみに前歯だけじゃなく奥歯のほうもだいぶ変わっている。矯正開始時に写真を撮られ説明を受けたのだが、私の前歯~奥歯の歯並びって逆アーチみたいな形になってたらしい。よく今まで物噛めてたな。

矯正を始めて劇的に変わったことは、実はそんなにない。表面が凸凹じゃないと歯磨きしやすいなとか、発声も気持ち楽だなとかその程度しか感じない。
ただ先日写真を見返していた時、自分が以前よりも歯を見せて笑っていることに気付いた。いい笑顔してる。めっちゃ装置見えてるけど。
コンプレックスというほどではないと思っていたけど、無意識の内に気にしていたのかなと思う。

またこれは私自身が変わったことではないけど、私が矯正していることを隠してないせいか周りに色々聞かれることが増えた。聞かれることはだいたい同じで「お金どのくらいかかるの?」と「何年くらい続くの?」が圧倒的に多い。どちらも病院やその人の状態によるのでこうだとは言えないけど、できるだけ答えるようにしている。でもまあ、こんな素人に聞くよりも病院に行ってカウンセリングを受けるのが一番早いし確実だと思う。

私「カウンセリング無料のところ多いよ、行ってみれば?」
知人「歯医者か〜、もう何年も行ってないわ笑」

…………。
みんな、定期検診行こうね!


おわり。



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