【武器になる哲学】14 予告された報酬ー「予告された」報酬は、創造的な問題解決能力を著しく毀損する

個人の創造性を外発的に高めることはできるのでしょうか?

この問題を考えるために、1940~50年代に心理学者のカール・ドゥンカーが提示した「ろうそく問題」を取り上げてみましょう。「ろうそく問題」とは、テーブルの上にろうが垂れないようにろうそくを壁に付ける方法を考えてほしい、というものです。

この問題を与えられた成人の多くは、だいたい7~9分程度で、下図のアイデアに思い至ることになります。

つまり、画鋲を入れているトレーを「画鋲入れ」から「ろうそくの土台」へと転用するという着想を得ないと解けないということなのですが、この発想の転換がなかなかできないんですね。一度「用途」を規定してしまうと、なかなか人はその認識から自由になれないということで、この傾向をドゥンカーは「機能認識の固着」と名付けました。

その後、ドゥンカーの実験から17年を経て、ニューヨーク大学のグラックスバーグは、この「ろうそく問題」を、人間の若干異なる側面を明らかにするための実験に用い、そして興味深い結果を得ています。つまり、報酬を与えることによって、創造的に問題を解決する能力は向上するどころか、むしろ低下してしまうということです。

これらの実験結果は、通常ビジネスの世界で常識として行われている報酬政策が、意味がないどころかむしろ組織の創造性を低下させていることを示唆しています。

人に創造性を発揮させようとした場合、報酬=アメはむしろ逆効果になる。では一方の「ムチ」はどうなのでしょうか?結論から言えば、こちらも心理学の知見からはどうも分が悪いようです。

つまり、人が創造性を発揮してリスクを冒すためには「アメ」も「ムチ」も有効ではなく、そのような挑戦が許される風土が必要ということであり、更にそのような風土の中で人が敢えてリスクを冒すのは「アメ」が欲しいからではなく、「ムチ」が怖いからでもなく、ただ単に「自分がそうしたいから」ということです。

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