【武器になる哲学】18 解凍=混乱=再凍結ー変革は、「慣れ親しんだ過去を終わらせる」ことで始まる
組織の中における人の振る舞いはどのようにして決まるのか。レヴィンは「個人と環境の相互作用」によって、ある組織内における人の行動は規定されるという仮説を立て、今日ではグループ・ダイナミクスとして知られる広範な領域の研究を行いました。
レヴィンの「解凍=混乱=再凍結」のモデルは、個人的および組織的変化を実現する上での三段階を表しています。
第一段階の「解凍」は、今までの思考様式や行動様式を変えなければいけないということを自覚し、変化のための準備を整える段階です。
第二段階の「混乱」では、以前のものの見方や考え方、あるいは制度やプロセスが不要になることで引き起こされる混乱や苦しみが伴います。
第三段階の「再凍結」では、新しいものの見方や考え方が結晶化し、新しいシステムに適応するものとして、より快適なものと感じられるようになり、恒常性の感覚が再び蘇ってきます。
ここで注意しなければならないのは、このプロセスが「解凍」から始まっている、という点です。私たちは、何か新しいことを始めようというとき、それを「始まり」の問題として考察します。しかし、クルト・レヴィンのこの指摘は、何か新しいことを始めようというとき、最初にやるべきなのは、むしろ「いままでのやり方を忘れる」ということになります。
ここに、多くの組織変革が中途半端に挫折してしまう理由があると、著者は考えています。常に10年先のことを考えている経営者であれば、やがてやってくる危機に対応して変革の必要性を常に意識しているかもしれませんが、管理職や現場は常に足元を見て仕事をしているわけですから、十分な説明もなしに「このままでは危ない、進路もやり方も変える」と宣言されれば、十分な「解凍」の時間を取れないままに混乱期に突入してしまうことになります。
同様のことは「社会の変化」についても言えます。平成という時代をどう捉えるか、著者が思うのは「昭和を終わらせられなかった時代」ということです。
本来であれば、昭和という時代に登った山とは別の新しい山をターゲットとして定め、登るべきだったのに、同じ山に踏みとどまりながら、頂上にいた頃の栄華を懐かしみながら、いつかまたあそこに戻れるのではないか、という虚しい期待を胸にしながら、ずるずると後ろを振り返りながら、ビジョンもないままに同じ山を下り続けてしまったように著者は思います。
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