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「いい匂いがするね。」と他人事のように言った。

昨日から急にすっかり秋の空気になった。
秋は急に来てすぐ冬に溶け込むイメージがある。
夜風が涼しいから寒いに変わる。

仕事から帰ってきたら、母も父も仕事でてんやわんやしていた。
「お夕飯は卵かけごはんだよ、美味しいお米を炊いたし、おいしい卵をもらったから。」と母に言われる。
母は仕事を終わった後も頑張っておかずを作ろうとしてしまうので、久しぶりに家族の分の夕飯を作った。
実家に来てからは料理をほぼしていない。
自分でメニューを考えて作るのは3年ぶりくらいだった。
母が仕事を終えリビングに帰ってきた。
並んでいる食事を見て、「いい匂いがするね。」と他人事のように言った。
本当に他人事だと思っていそうだったので、母の分と父の分だよ。と伝えると、「え、いいんですか……?」と嬉しさと疲れと警戒が混じったような声を出した。
母が私に話す敬語なんて久しぶりに聞いた。
豚肉にはケチャップをかけて食べてね。と伝える。
伝えた矢先に、父がそのまま食べ始めて笑ってしまう。
それを見て「私はケチャップをかけて食べます。」と宣言する母。
「俺は醤油派なんだ。」という父。
母が、この料理はケチャップをかけて食べると美味しく作ったから、私がケチャップをかけてねと言ったことを、父に説明する。
「ああ、そうか。」と父は納得し、ケチャップをかけた。
大体のものに醤油をかける父が、ケチャップをかけたところは初めて見たかもしれない。
醤油という文明しか知らなかったけど、母に説明を受けることによって、新しい概念を理解した。
ちなみに卵かけご飯は母親がゆでたまごを作っていたことを思い出し、今日のお夕飯からなくなった。

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