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オンラインワークショップでビジネスキャンバスモデルを実施してみた

コロナ禍の影響でオフラインのワークショップも厳しくなり、オンラインでワークショップができないか考えたところ、MIROというサービスを知りこれならできるかもと思い、ウェブ解析士の仲間を召集して実施してみたので共有します。
https://utilly.jp/2019/03/31/about-miro/

「ビジネスキャンバスモデル」というのはこのようなもの。

ビジネスモデルキャンバスとは、ビジネスの構造を考えるためのツールです。
日本では、2012年に「ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書」(アレックス・オスターワルダー、 イヴ・ピニュール著)という本で紹介されました。9つの欄に分かれた一枚の紙です。この紙にポストイットをペタペタ貼るという使い方をします。

特徴は、ビジネスモデルの重要な要素が一枚の紙にまとめられている点です。
また、ポストイットを貼りなおすことで、簡単に組み替えができますので、新規事業の構想などにも使いやすいです。
ビジネスの全体像を俯瞰しやすく、各項目の整合性が確認しやすいということから、現状確認や認識の共有化に使いやすいツールです。
ビジネスの現状確認や新規事業構想など、ビジネスモデルを考える場面で広く使われています。
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ビジネスモデルとは?ビジネスモデルキャンバスとは?わかりやすく解説 _ ビジョンを実現するキャッシュフロー経営

もともとワークショップでビジネスの全体像をつかみ、価値観を共有するものとして使われるものと認識だけど、ワークショップの価値は「やってみないとわからない」こと。知識では雰囲気を理解しても、どう使うかはやはりやってみないとわからないよねということで実施することに。

そもそも実施した理由:上級ウェブ解析士のカリキュラムに追加されたため

さきに、なんでこんなことを思いつき実施したかというと、今年の上級ウェブ解析士を2月に実施したときの最初の事前課題に取り入れられていたからなんだよね。教えるにあたって、やったことないことは教えられないので、もちろんやってみるんだけどいまいちピンとこなかった・・・。そんなまま教えてしまうという後悔と反省も残っていたため、きちんとカリキュラムに向き合うときにただ否定するのではなく、自分でできるところまでやってみた上で、どう使うか考えたいと思い、ワークショップなのだからワークショップをやってみようと思ったわけです。

MIROは色々と凄かった!!

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MIROのアカウントを開いたら、テンプレートが最初に用意されているので、
ビジネスキャンバスモデルの準備はほとんどいらず。参加してくれるウェブ解析士の仲間も、基本こいうのは好きな人が多いのとITリテラシーが高いので説明するよりも「まずは自分で触ってやってみて、共有する」みたいな感じでだいぶ助かる。

他にもMIROの便利だと思うこと
・無料ツール
・ブラウザ上で動かせるので、インストール不要
・3枚まで作ることができる。
・4枚目が必要になったら、1枚消せば使える。
・DLとしてPDFやJPG画像もできる。
・文字の書き起こしもCSVファイルで落とせる。

わからないときは、作法にきちんと従う。

キャンバスモデルができたら、実施していくわけだが、基本的には、1〜9の順に進めていく。このあたりは3C分析などで、顧客→競合→自社の順と考え方は近い。ビジネスキャンバスモデルは競合がないが、競合調査としても使えるので、顧客→自社、顧客→競合で考えるとわかりやすいかなと。

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1.顧客(Customer Segments):ビジネスが対象とする顧客層
2.価値提案(Value Propositions):顧客が持つベネフィット
3.チャネル(Channels):接触するメディア(オンライン・オフライン)直接、間接効果を書く
4.顧客との関係(Customer Relationships):顧客との関係を結びつけるもの(長さや深さ)
5.収益の流れ(Revenue Streams):利益を生み出すもの
6.キーリソース(Key Resources):ヒトモノカネ情報など
7.主要活動(Key Activities):マーケティング活動など
8.キーパートナー(Key Partners):マーケティングを支えてくれるパートナー企業や個人
9.コスト構造(Cost Structure):払っていくお金

どのように取り組んだか

ワークショップなので、オンラインミーティングのZOOMと連携する。
取り組み方は最初の15分くらいで雑談しながらテーマやお題を決めて、実施してみて、残りの時間で雑談交えながら深めていく感じ。随時雑談は入っていた。

タイムスケジュール的にはこんな感じ。
①15分:雑談、テーマお題決め
②15分:作業期間
③45分:1ブロック5分くらいで話しながら情報整理
④30分:フィードバック、振り返り

今回はアップル好きな人が多いので、iPodやiTunesで考えてみた。
内容よりも取り組みを伝えたいので、①~④について触れていく。

①15分:雑談、テーマお題決

ここでの大事なポイントは心理的安全性というものかなと思っている。
今回ワークショップしてくれた人たちはみんな優秀な人だったけど、それでも初めてな方もいるので「変なこと言ってしまうんじゃないかとか、間違ったことを書いたらどうしよう」とかやはり不安があるものだ。(もちろん、このような記事を書くことも前提で進めるから、変なことを書きたくないというものもあったかもしれない。)ちなみに上級ウェブ解析士の事前課題の講座時でも正解や見本が欲しいという要望もあったので、この不安を取り除いてあげないといけないという思いがある。

基本的に、講座は間違えても良い場所だと思っているので、そのアイデアや思いついた理由を大事にしてほしいという感じで気軽に進めていこうという形で話した。

これはどうでもいい話が、目的忘れて雑談で話が盛り上がり30分近く話し込んでしまったので、すでにこの時点でスケジュールは15分以上遅れている。

②15分:作業期間

作業はとりあえずやってみよう!ということで書いてもらう。MIROは相手のマウスの動きとかも見えるので、これが見ていて面白いし、なにせサボれない・・・。15分のルールは9マスを埋めることだけど、わからないことや思いつかないこともあるから、全員がマストで埋める必要はないと伝えている。基本的には無言で作業しているが、ZOOMはつないでいるので、雑談は続いている・・・。4人か5人集まると面白いのは、作業中にも個性がでるところ。MIROは海外サービスのため、日本語がなかったり用語がよくわからないので、日本語翻訳を追加してくれるなど、みんなのことを考えてくれる人がいる(感謝)。また、最初わかんなくても誰かが一つの答えを書いてくれるので、それがヒントになって書ける場合が多い。(例えば、顧客セグメントで学生がいれば、学生をヒントに「サラリーマン」が書きやすくなったり、学生やサラリーマンの特性を見て「移動中に音楽を聞く全ての方」になったりというもの)

③45分:1ブロック5分くらいで話しながら情報整理

1ブロックの付箋を見ながら、どいうことだろうって話し合う。ここがMIROのオンラインワークショップの強みを一番感じたところ。

オンラインならではで便利だと思ったところ。
・要素から属性を考える時、色でグルーピングする。
・付箋に不足があった際に書き足す。
・優先順位の高いものや上位概念などを上下関係や付箋の大小でサイズを変更する
・矢印などだいたんなものも追加しやすい
・思いついたら、話しながらでも誰かが書き込みできる。

会話のなかで新たに生まれるところが多くあり、知識と知識を掛け合わせることで新しい価値が生まれると言うのをすごく体験できたところでした。

例えば、ワークショップの中で「ipodをきっかけにWindowsではなくMacを買ったという」言葉から収益に「Macbook」が追加されたり、MP3プレーヤーがなんで市場で価値を提供できたんだっけ?とか話してたら、「レコード会社を味方につけたから」みたいな話があり、あーパートナーに「レコード会社の存在は大きいよね」とか。今「iPhoneが日本で圧倒的なシェア率ってiPodのおかげが大きいよね」とか、会話が弾めばそこに新しい気づきがたくさん生まれていて、もちろん脱線もしまくるんだけど、ワークショップの楽しさやこのフレームワークの魅力を最大限に発揮できたのではないかなと思います。
ちなみに1ブロック5分にしないとずっと話していられるメンバーだったので、ここでも30分以上オーバーしています。

④30分:フィードバック、振り返り

じつは作ってみたけど、ふーーんって感じになっていたのが最初の感想です。このあたりは、自分が経営的な視点が弱いのと、アップルの成功したiPodを語っても、自分にとって新しい気づきはあるけど、もしかしたらこれじゃなくても新しい気づきは得られていたのではないかという思いがあったからです。というわけで、日にちを変えて2回のワークショップをやりました。そうするとふーーんで終わらない得られる気づきがありました。

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2回目はiPodの競合ウォークマンをモデルに書き、さらにiPhoneとウォークマンがある中でMP3プレーヤーが次の戦略としてこの市場を狙うならどうするかなんていうのを考えてみたんです。(アップル好きが多いので、右下はアップルの新規事業担当という名目で実施してます。)

こうすると、今ある中で、誰に何をどのように価値を提供するかをシンプルにまとめあげたツールだと改めて認識することができました。
そして、これは全体最適のための地図になるので、ここに紐づく行動の個別最適はきちんと全体最適の1つの要素になっているのではないか。
どこかマイルストーンとしての役割を気づくことができる感じです。僕の中では、アニメーションの原画と動画のような関係かなと思います。

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Twitter:花村ヤソ@アニメタ!⑤ 発売中 on Twitter: "アニメの原画と動画の違い

まとめ

ワークショップにはワークショップの価値があるということです。もちろん、これを知っている人は1人でもできるでしょう、ようはこのフレームワークに沿って実施すれば良いので、難しいことはありません。

何か伝えたい時には、「体験して良かった」と自分の体験したことで得られた一次情報が一番大事だと思います。その中には「目的のものを学んで得られる気づき」だけではなく、副次的に一緒に成し遂げた達成感や価値観の共有あったからこそ、得られたことも多くあったと思うのです。その大事な要素を副次的なものと切り捨てて主目的の「これ役立つからやってみて」はすごいもったいないのです。副次的なものも踏まえての価値なのですから、ここが抜けてしまう学問はやはり残念だなと思います。

世の中にたくさんのアイデアや答えが溢れて、インターネットを駆使して探しやすくなった分だけ、その情報網でどれが良いか取捨選択していくのも大変な時代だなぁと思ってます。その中で選ぶ側は自分に合ったものを使えば良いというスタンスで良いと思うのですが、できるなら「きちんとやってみた上で」自分に合うかどうかを判断してほしいです。きちんとやるなんて難しいと思うのですが、だからこそ、その難しい環境を用意するのも講師の役目だと思うのです。小学校で理科室の実験でワクワクした体験(マッチを使ってアルコールランプで火を使うことで得られた気づき)を、時間効率悪いから削除したいったら、理科に興味がなくなっちゃうじゃないですか。そいうことだと思うのです。おわり。

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