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その1 そもそもの目的を考える Jazz Sax:アドリブ練習の目的別構造化 

さて、昨日突然作ってみた練習の目的別構造化について、順番に解説してみたいと思います。今回は冗談、もとい、図の上段の話です。

<昨日からちょっと変えました>

1.1 最終ゴールは何か

 ジャズに限らず、いわゆる教則本は、上手くなるための方法論が列挙されているものが多い。っていうか、世の中ではそういうものを教則本と呼ぶわけだが、よく考えていると「ところで、その練習って何のためにやるの?」というのがあまり書いていなかったりする。しばらく経ってみると大体何のためか分かったりするのだが、初心者にはなかなか難しそう。ということで、最終ゴールを定めて、それに向かってどんな練習をやるかの逆引きができるなにかがあったら便利かな、と思ったのがこの図を描くきっかけだった。まあ、以前から「ソロ何」シリーズとかでジャズのソロの方法論をだらだら書いてたりしたので、その続きという意味もあります。
 ということで、今回は練習の目的をシンプルに「SaxでJazzのAd-lib を吹く」としてみました。

1.2 目的を分解する

 さて、サックスでアドリブを吹くためには、その一段階下の概念として何が出来ればいいかを分解して考えてみる。

とにかくアドリブなので、
A. 何かしら吹きたいことを(ほぼその場で)思いつく
B. その思いついたことを自分で思った通り楽器で演奏(再現)する
の組み合わせでアドリブが完成すると定義してみる。

(1) 何を思いつくのか?

 ここで重要なのは「思いつくこと」が巷のアドリブ論の中心になる「(コード)理論的に正しい音、フレーズ」だけではないということ。同じフレーズでも、どんな音量、音色、アーティキュレーション、装飾、タイムで吹くかということまで含めて思いついて、それを正確に楽器で再現しなくてはいけない。また、思いつくことも、できれば、人が聴いて「なんだかジャズっぽい」と思われるようなことになっていると、恐らく、アドリブ奏者としての評価が上がると思われる。

(2) クラシック奏者との対比で考える

 改めて考えると、クラシック奏者というのは昔だれかが思いついたことを楽譜で読み取って、出来る限り表現の解像度を上げて(自分の解釈も加えながら)演奏することに命を懸けている。この図の右側の方は、楽器演奏の技術を高めていくという意味で、クラシック奏者の練習とほぼ同じような内容と考えてよいかと思う。

(3) 右側のポイント:「自動化」の話

 クラシック奏者が例えば「二分音符三つを情感豊かに」みたいなことを吹くとすると、クレッシェンドのタイミングとか、ビブラートの幅とタイミングとか、音色とか、「情感豊か」を表現する技法に集中して、その一段下のレイヤーの、運指とか呼吸とかマウスピースの咥え方とかは考えていない(というか自動化されている)と思われる。サッカーの選手が試合中にパスされた球に対して、トラップして右側45度の30cm前に置く、とは考えるけど、そのために足の甲の角度をどのぐらいにするとか、足の力の入れ方はどうだとか、その場で考えないと思われるのだが、それと一緒ですね。やりたい事が決まればそこら辺のレベルの動きは自動化されているというか。

(4) ジャズで頭を使いたいのは左側

 改めてジャズの場合、図の左側の方の「思いつく」ことに頭を使いたいので、右側の方は、思いついたことを自動的に再現するための練習をすることになる。一方、左側は、思いつくための訓練ですね。ここが、ある意味ジャズ演奏(即興演奏)の特殊性なんだろうし、これに関しての方法論については、星の数ほど、っていうか奏者の数だけあると思われる。その意味で、私の書いたことはその星の数のうちの(あまり程度の良くない)ひとつだが、目的志向で考えた場合、自分ならどういう練習をするのか、今やっている練習は左側なのか右側なのか、とかを自分なりに考えてみる、というのも頭の体操としては面白いかもしれない。

1.3 おまけ:ウェインショーターの名言

 さて、こんなことを書いていて改めて思い出したのが、先日亡くなったウェインショーターのインタビューで読んだフレーズ。正確なワーディングは忘れたが、

「書き譜は即興のように、即興は書き譜のように演奏する」

みたいな感じだったかと思う。特にアマチュアレベルだと、アドリブは音を選ぶのに一生懸命で、細かいニュアンスにまでに思いが至らないし、一方で、書き譜(メロディ)は妙に丁寧に吹いてみたりする。即興も書き譜も同じ音楽の一部なのだから、演奏の解像度に差があると格好悪い、ということを思い出させてくれるという意味で、至極明言かと思う。

とりあえず今日は以上です。

その2はこちらから。

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