見出し画像

その12 コンボ練習 Jazz Sax:アドリブ練習の目的別構造化

 いろいろあってしばらくサボってたが、一応あと二つぐらいで重要と思われる項目はカバーできると思うので、頑張って書いてみます。
 今回は、セッションDisりwからの「コンボ練習」です。


12.1 セッションに行ってアドリブが上達するのか?

 この10年ぐらい?だろうか、日本は世界に冠たるジャズセッション大国となって、猫も杓子もセッションという状況になっている。アマチュアプレイヤーにとって、いまや欠かせぬ演奏機会だし、毎週土日、それにも飽き足らず平日にも参加している人も多いように見受けられる(マレーシアの駐在員ゴルフおじさんのようだww)。私もご多分に漏れず、コロナが落ち着いてから、なんだかんだ月に2-3回は出掛けているかもしれない。
 さて、本稿の主旨は、アドリブ練習論である。というわけで、まずはセッションへの参加がアドリブの上達に役に立つのか、という観点で論じてみたい。まあ、こういう問題提起をするときの結論は大体決まっており、私の答えは"No"だ。

(1) セッションの意義は何か

 そもそも、セッションに出掛けて、会ったこともない人と、場合によっては知らない曲を黒本でも眺めながらいきなり数コーラス、それを数曲演奏して上達するか、と問われれば、私は「まあ、無理だよねえ」としか答えようがない。「上達するために行くのではない!」と言われればそうなんだろうが、では何のために行くのか。
 あえてセッションに行く意味を考えてみると「(人がやっているのも含めて)曲を知る」とか「上手い人の演奏を見て自分の演奏の参考にする」とかが考えらえるが、それなら家でアルバム聴いたりプロのライブを観に行ったりすればよい。合奏の経験を積む、というのもあるが、なんかよく分からない、っていうか、ぶっちゃけ「下手」な人たちと無理やり演奏するぐらいなら、家でメトロノーム相手に練習した方がナンボかマシだ。いやいや、私はセッションに行くにあたって「課題(曲)」を設定して、それを練習するために行くのだ、という人もいるかもしれないが、狙っている曲を必ずできるわけではないし、無理やり通そうとすれば、ただの迷惑な参加者になりかねない。
 私は、何の分野にしても上達するためには、練習なり経験なりの「量」が必要だと信じる人間なので、その意味で、セッションは効率が悪いと言わざるを得ない(逆に、上に書いたマレーシアのゴルフおじさんは、なんだかんだ毎週何ラウンドも回って経験を積んで学んでいくわけで、量をこなすという意味では実に正しいアプローチと思う)。

(2) では、なぜ私はセッションに行くのかw

 私の場合「承認欲求の発露」「お知り合いと楽しく酒呑み」と、場合によっては「映えネタ作り」くらいだww。イントロあたりで酔っ払って偉い人と一緒に演奏してFacebookで自慢する、みたいなやつねw。 
 もう少し格好つけて書くと、やっぱり、自分なりに「おーイェイ!!」となる瞬間を味わいたいからかもしれない。そのためには、やはり出没する場所は選ばざるを得ない。結局、量(時間)とレベルの両方が期待できる怖いイントロと国分寺M's、たまに松戸コルコバードの特殊セッションwくらいになっちゃうのだ。
 余談だが、先日金沢に伺ったとき、(多分)生まれて初めて、セッションホストのようなことをやった。いわゆる普通のセッションホストとは違って、メンバーはマスターが指名し、ホストたる私は、次から次へと出てくるボーカリスト、サックス吹きと乱取り状態で一緒に演奏するという企画だったが、当人的には好き放題できて実に面白かったです。ご一緒した方がどう感じたかは謎だがw

【補論】ロックーポップス関係の「セッション」について

 2000年代に入って、SNS(要はミクシw)の定着とともに、ジャズだけではなく、ロックやポップスの世界でも「セッション」が盛んに行われるようになる。コミュニティでやりたい曲を宣言して「この指とまれ」でメンバーを集め、パートが揃ったら当日集まってみんなで演奏するという方式が開発されたわけだが、身の回りの人間だけでは演奏できない曲を、見知らぬ(とはいえ自分と同じぐらい曲に対する思い入れの強い)人とカタチにできるという意味で、画期的だったと思う。今はどうなってるのかな。実は、ジャズのセッションでこの方式を採用したら、自分のやりたい曲が、それなりに思いを同じくする人と演奏できるという意味で意義深いと思うんだが、どうなんだろうか。
 さて、私も、当時知り合いに誘われて何回かその手の企画、要は「スティーリーダンセッション」に参加させてもらったわけだが、とても自分のコネクションだけでは演奏できないSDの名曲をバンドで演奏できるということで、感激したことを覚えている。
 一方で、慣れてくると「なんか勿体ないなあ」と思ったのも事実である。せっかく集まったメンバーが「せーの」で演奏して、完奏すると「いぇーい!お疲れさまでした!」で次の曲に行ってしまう。完奏が目的になっちゃっていて、曲の完成度を上げるようなこと無しで流してしまうのが、なんとも不思議だった。
 まあ、そこはそれで、さらに突き詰めたい人は勝手にどうぞ、という主旨だったんだろう。とはいえ、同じようなことを考えた人はそれなりにいて、もう少し各曲を煮詰めようという人たちが集まって企画したのが、あの伝説のw 「日比谷公園ガウチョ全曲再現セッション」だったし、さらに、そこからの流れで、パーマネントバンドとして結成されたのが「スティーリー初段」だったわけだ。セッションが、人的なコネクション形成の場として活用された良い事例ですな。

12.2 バンド(コンボ)練習の勧め

 じゃあ、実践の場におけるアドリブ練習はどうすればよいか、ということになるが、やっぱり普通に「メンバー集めてコンボ形式で好きなだけ練習する」ということになるんじゃないだろうか。
 私のいた大学のジャズ研は当時、大量に部員のいるサークルで、C-D年(1-2年)は先輩に勝手にバンドを決められて、それで一年間活動をした。バンド数が多いので、部室(いわゆる音楽長屋)だけではとてもすべてのバンドの練習を捌けず、それぞれのバンドが、春のコンサート、夏合宿、学際、そして12月のリサイタル等の発表機会に向けて練習スタジオ(新宿Doingとかwww)を借りて練習していた
 一方、ほかの大学のジャズ研は、あまり部員数がいない代わりに、部室でOBや他大学の有力者なども含めて限られたメンバーで年がら年中セッションやってる、みたいなところが多かったと思う。それはそれで羨ましかった覚えがある。
 何が言いたいかというと、上にも書いたが、なんにしても上手くなるためには「(演奏や練習の)量」がまずは必要であり、とにかく遠慮せずに好きなことを好きなだけ切磋琢磨しながら演奏する環境を整えるのが重要だということだ。例えば1950年代のニューヨーク52番街のアフターアワーズとか、70年代のソーホーエリアのロフトとか(注1)、いつものメンバー、プラスαで朝から晩までセッションしていたんだろう。
 ただ集まって順番に曲やってイェイ、だけじゃなくて、例えば、ブルース100コーラスとか、課題曲決めてテーマだけ50回とか、そこまでいかなくても、同じ曲を必ず2回やってみるとか、課題設定・反復・発見・反省の仕掛けを入れておくと面白いんじゃないかな。初心者だけで不安だったら、そこそこ上手い人に頼み込んで意見もらいながらやるとか。プロならベストだが、それこそセッションで見つけた上手いアマチュアにお願いしちゃうという手もあり。ビールの2-3杯奢るといえばホイホイやってきちゃう人もいるだろう(私だw)。同じアマチュア相手に変に偉そうにされると鼻につくかもしれんがw、まあ、大人になってそこは我慢。
 さて、この「コンボ練習」は、一旦「個々の技量を上げる」ことを目的としておくのが良いのではないかと思う。バンドとしてライブをやろう、とか発表会をやろう、みたいな目標を持つのも良いのだが、今の世の中アマチュアでもバンドで演奏機会を作るというのは結構ややこしい。というわけで、発想を裏返して「(自分が)セッションでドヤ顔することを目的として、何人かで集まって死ぬほどコンボ練習を行う」くらいの発想でよいのではないだろうか。たまたま仲良くなったりいい演奏ができたりしたら、それこそジャズストリートみたいなイベントに参加することを考えればよい。

( 注1) ベーシストGene Perlaのニューヨーク/ソーホーエリアのロフトで、1970年前後、メジャーになる前のLiebmanとかGrossmanとかBrecker兄弟あたりがガンガンセッションしていた私蔵音源が残されています(下記リンク)。なかなか面白いのでぜひお試しを。若きマイケルブレッカーが劣化版グロスマンみたいな感じww 教祖様はこのころから教祖様です。

12.3改めてセッションの意義を考える

 というわけで、上記の通り、私のお勧めはセッションより「メンバー限定して死ぬほどコンボ練習」だ。カルテット編成じゃないとだめ、とかいうわけではなく、演奏する量が担保されれば、各パート複数いても良いだろう。そういう意味では、サークル的に10人ぐらいで合宿でも行って、文字通り朝から晩まで演奏三昧(そのあと酒飲みながら反省会)などというのは、いろんな意味で有意義な企画だと思う。
 セッションはそれらの練習の成果を披露して、どや顔してみたり、思ったりうまくいかず落ち込んでみたり、できなかったことを反省してみたり、と、個人としての動機をリフレッシュする機会と考えればよい。
 さて、もう一つセッションに意義があるとすれば、「コンボ練習」を行う仲間を見つけるための機会、ということかな。違うパートの、大体同じぐらいのレベルー本来なら自分よりちょっとうまいぐらいの人たち―をセッションでナンパしてw、コンボ練習に持ち込むというのはセッションの上手い使い方だと思う。セッション発展場説、とでもいうのだろうか(多分違う)。誰か私をナンパしてくださいw

 本来であれば「コンボ練習」の目的をもう少し明確化したうえで、練習の際の留意事項やアドリブ上達に役立つアイディアなどを書くべきなのだろうが、セッションのDisりに頭を使ってそこまで頭が整理できなかった。そのうち気が向いたら書くかもしれません。あと、演奏や練習の「量」が重要というのは、また別稿として書いてみたい。ビートルズとかジャコパスとか、ビータとか、そういう話です。→(追記)書きました!https://note.com/yagi_tenor_sax/n/na9f94b667eaa

その13はこちらから。

 本連載の一覧(マガジン)はこちらから。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?