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その5 インターバル Jazz Sax:アドリブ練習の目的別構造化 

 今回は、構造化の図の中の⑦、いわゆる基礎練習の中から「インターバル」です。通常は「スケール練習」いわゆる、ドレミファに行きたくなるところなのだが、先ずはジャズの演奏や分析にとって結構な肝である(と思われる)インターバルの練習の意味とやりかたを考えてみます(昔書いたテキストを適当に書き直してます)。


5.1 インターバルとは何か

 改めてインターバルについて調べてみると、日本語で「音程」と訳されていることが多いようだが、なんかピンとこないな。と思ってMark Levine の"The Jazz Theory Book"を改めてチェックしてみたら、こんな説明だった。

原子が物質の構成材料であるように、インターヴァル(音程)はメロディー及びハーモニーの構成材料です。インターヴァルの正しい定義は、2つの音の間の距離です。

Mark Levine "The Jazz Theory Book"日本語版 P3 

 うむ、これは分かりやすいですね。今回はこの定義を見つけ出せたので、これだけで相当満足だw もう少し丁寧に言うと「2つの違う音程の間の相対的な距離を数値で表したもの」くらいになるのかな。前段の説明も「メロディーおよびハーモニー(およびスケール)の構成材料です」としておくと、スケールよりも前に採り上げるのが多少正当化されるかと。

5.2 何のためにインターバルの練習をするのか

 さて、改めて何のためにインターバルの練習をやるのか考えてみよう。

(1) 「吹きたいことを思いつく」ための音感を養う

 例えば、普通の人がいきなりメロディを考えてみろといわれても、実は結構スケール上の隣通しの音を使うことが多いのではないか。70年代フォークなんかみんなそんな感じ。ドレミーーミファミレドミー、とか。せいぜい3度がでてくるかなってもんだ。

 3度でも、ドの3度上といえばミだとわかるけど、ド#の3度上というのは数えないとわからなかったりする。ましてや4度上とか5度上とか5度とかいわれてもねえ。日本の音楽教育なんかそんなもので、まあ、特殊なクラシック教育を受けていなければそういうことってわからないし。

 ついでに言えば、ジャズでも、ビバップのころまでは実はあまりアドリブの中での4度以上の跳躍は無いような気がする。結構、細分化されたコードの構成音(3度、2度が中心のアルペジオ)か、近い音を使ったメロディアスなフレーズ、またはちょっとクロマチックっぽいフレーズが多いと思う。パーカーとかね。

 それが、60年代に入るころから、要はコルトレーンがアドリブの中に4度とか5度とかを使ったフレーズを使ったり、あるいは、至上の愛のPart1みたいに同じパターンを(同じコードの中で)キーを転調させて使ったりしたので、アドリブがメロディアスでなくなってきた代わりに、妙な緊張感が出始めたと。

 というわけで、4度とか5度、あるいは7度あたりのインターバルを身体に染みつけておくのが、ちょっとモダンなジャズのアドリブ上達(あるいはフレーズ構築)の基礎になるのではないかと思っている。ちなみに、そのメカニカル、跳躍路線のフレーズ構築はその後楽器の構造上何の問題も無くその手のフレーズが弾けるギタリストがさらに発展させることになる。

(2) 「思いついたことを吹く」ための訓練をする

 上記のような音感を獲得しても、思ったことを実際に吹けなかったらしょうがないわけで、思いついたことを自動的に呼吸と指で再現できるようにしておくことが必要ともいえる。「ジャズっぽい音使いに慣れることにより、吹きたいことを思いつきやすくなる身体になる」と書いたほうが正確だろう。
 当然、メカニカルな練習そのものを気が狂ったようにやって、その感覚を指に覚えこませるという意味では「思いついたことを吹く」ためにも重要な練習といえるだろう。

5.3 どんな練習をするか

 さて、インターバルの練習といえば、たとえばこんなのがあるかな。と思いついたものを書いてみる。面倒臭いので、とりあえず4分音符で書いてみたが、これは8分音符でも、全音符でもかまわんし、ほかにも百万通りぐらいパターンはあるだろう。

(1) 練習例1

まずは、下の譜面ようなことをじっくりやるのかな。

こんなことを頭に思い浮かべながら。

- ド~、ドのシャープ~(まずは半音(短2度)だな)、
- ド~、レ~(長2度だ、全音とも言うな)、
- ド~、レのシャープ~(っていうかミのフラットか、短三度だし)、
- ド~、ミ~(よし、これは長三度だ。メジャーキーの肝だね)、
- ド~、ファ~(いよいよ完全四度、難しくなってきた)、
- ド~、ファのシャープ~(お、これが通好みの増四度か)、
- ド~、ソ~(これが完全五度、わかりやすいな)
- ド~、ソのシャープ~(増五度、難しいぞ、短六度ともいうのかな)
- ド~、ラ~(長六度、裏を返すと短三度だよね)
- ド~、シのフラット~(短七度、いわゆるセブンス。ジャズの醍醐味だね!)
- ド~、シ~(お~、ようやく長七度か、結構モダンっていうか、裏を返すと半音でぶつかるってやつだね)
- ド~、ド~(オクターブ、完全八度ね、落ち着いたわ)

 なんか、幼稚園児向け教本みたいになった(笑)。

 ポイントはちゃんと音名を(頭の中で)歌い、さらには(  )で書いたようなことをいちいち考えてインターバルの「感じ」と「名前(短三度とか)」を結び付けておくことだと思う。せっかく練習するんだから同じ時間でより高い効果を得るためには、出来る限り頭を使って、というか、頭に癖をつけるのがいいんじゃないかと思う。始めは楽器使わないで自分で音名付きでピアノに合わせて歌ってもいいかも(ソルフェージュ的な)。

 この練習は当然12音全てでやっておくといいのは言うまでも無い。っていうか、いったんド(C)でやってみたら、次はファのシャープ(F#)をベースにしてやってみるのも面白かろう。ついでに言えば、下降のパターンもやっておくといいかも。ド、シ、ド、シのフラット、ド、ラ…って感じだ。そのときには、ド、ラ(短三度だな)、みたいに考えるのかな。

(2) 練習例:2

 もうひとつのパターンとして、下記のようなのがある。これはたまたま長三度だけど、短三度でも、五度でも構わない。っていうか、ジャズ的に言うと、多分だけど、全音、短三度、長三度、四度、増四度、五度、七度(長短両方)、あたりを重点的にやるのがいいような気がする。なんとなくだけど。

 譜例は半音ずつ上昇してるが、例えば全音ずつ上昇(ホールトーンになりますね)とか、特定のスケール(まあ、いわゆるドレミファソラシドとか)でやってみるとか、上がるんじゃなくて下がるとか、いろいろなバリエーションがありますね。今回はインターバルだから、2音だけど、これを3音や4音の組み合わせでやるとアルペジオとかフレーズとかになるかな。

 このように、機械的にいろんなパターンを一日ひとつ考えて、じっくりと練習し、身体に染み込ませる。そのパターンを身体に蓄積させていくと、・・・もしかするとコルトレーンみたいになれ・・・ないか。でも、コルトレーンもブレッカーもきっとそういう練習してたんだろうと思ったりします。

 このパターンも、まずは二分音符くらいから音名を頭の中で歌いながらゆっくりとはじめるのがいいと思う。できるようになったら、四分音符、八分音符とスピードを上げていく。
 で、最後は、わざと違うことを考えながらやってみるとかも面白いかもしれない。例えば、メトロノームはつけつつ、敢えてテレビを見ながらやってみるとか。要は、CPUを別のところに使いながら指だけ勝手に動くという状況にしてみるということだ。もしかすると、これが「思ったことを吹く」時に役立つかもしれない。
 インターバルについては、トライトーンやらアルペジオやらパターンへの発展というのも含めて、もっといろんな練習があるような気もするけど、今回はここら辺で。

その6はこちらから。

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