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溶ける山、光る花

年に一度開催される花火大会の日、シャッターで埋まった店が立ち並び閑散とした地元の商店街が活気を帯びる。

建物全体が低く遮るものがほとんど無いため花火大会は田舎に限るよなと殆ど都会に出たことない私はつくづく思う。

社会人1年生。
配属先は大阪だった。

台風で延期となったあの日の花火大会はちょうどお盆休みと被ったこともあり帰省に乗じて好きだった子と見に行くことに。

帰省ラッシュに巻き込まれて約束に少し遅刻して到着した私はすでに上がりはじめた花火を背に約束場所へ合流して花火を見に行くことに。

長時間の移動に空きすぎたお腹と乾きすぎた喉を潤そうと屋台で焼きそばとビーチネクターを買う。

上がり始めて10分くらい経ってようやくよく見えるポイントに腰を下ろして2人で見ていた。
久しぶりに再開したこともあり話したいこともあったし、緊張もあった。

話しても話しても柳に風、暖簾に腕押しのような感覚が彼女からは終始見て取れた。

クライマックスに差し掛かる直前機嫌を直してもらおうとアイスクリームを急いで買いに行った。

クライマックスに差し掛かり空を埋め尽くす程の花火に圧巻された。
そんな横で花火の音に掻き消され聞こえなかったが何かを言う彼女の目は遠い、自分ではない何かを見つめる目をしていた。

溶けるアイスを横目に、最後の花火が光って空に消えた。

空に溜まった煙のモヤんとしたあの感じをいつまで経っても忘れられないのはきっとあの日のせいだろ。

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