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数学入試のジレンマ

以下は、2017年10月に行われたZ-KAIのWEBプレースメントテスト資料へ寄稿したコラムの草稿です。ゲーム理論の「囚人のジレンマ」のような状況をイメージしながら、数学入試の問題点についてコメントしました。

文系数学問題を斬る

安田洋祐|大阪大学大学院経済学研究科 准教授


経済学の勉強には微分積分や線形代数などの数学が当たり前のように登場する。大学に入ってから本格的に数学を使わなければならないにも関わらず、多くの経済学部の入試では数学はほとんど要求されない。そればかりか、全く数学を選ばずに受験することができる経済学部も珍しくない。日本の大学受験では、経済学は文系に分類されているため、理系分野と違って数学の配点を上げることが難しいからだ。

ライバル大学との競争を考えると、入試における数学の比重を下げるほど受験者数が増え人気が高まるため、経済学部が競って脱数学化をはかる、というジレンマ的状況も発生している。結果的に、各大学に数学の苦手な経済学部生があふれているのが現状だ。彼らの補習のために追加的な講義を担当したり、数学を使わずに経済学を教えたりすることは、教員にとって大きな負担となる。同時に、数学力の高い学生から学びの機会を奪うという悲劇を生み出しているのである。

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