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リスボン滞在日記 [week3]:コロナ対策

在外研究のため、ポルトガルのリスボン市にやってきてから3週間が経ちました‼  過去2回の投稿([week1] [week2])では、日ごとの出来事を “日記” スタイルでつづってきましたが、今回はポルトガルにおける暮らし、とりわけコロナ対策について感じたことを書きとめておきたいと思います。

リスボンに来た当初によく聞かれた質問は
・そもそも入国時に自主隔離しなくて良いの?
というものでした。在ポルトガル日本大使館によると、4/18(本日)までは次のような入国制限になっています。陰性証明は必要ですが、隔離期間は特に設けられていません。日本から来る場合、1/30までは観光目的の入国も可能だったのですが、現在は必要不可欠な目的の渡航のみ許されています。

日本に対するポルトガルへの入国制限
・1月31日から、日本からの渡航は、職務遂行、勉学、家族との再会、健康及び人道上の理由等真に必要不可欠な目的の渡航のみが認められ、また、渡航する場合には、24か月以下の幼児を除き、搭乗前72時間以内に実施したCOVID-19のPCR検査の陰性証明を搭乗時に提示することが求められることとなりました。この措置は、4月18日23時59分まで有効です。

さて、直近の大きな動きとしては、4/14(水)に国全体を対象に4/15(木)まで発令されていた非常事態宣言が4/30(金)まで延長されることが決まりました。ただ、この15日間の延長は既定路線だったようで、特に市民から不満の声はなさそうです。これよりも重要な点として、4/19(月)からはリスボン市を含む多くの自治体で次のような形で制限が大きく緩和されます。(以下も、在ポルトガル日本大使館の情報です)

新規陽性者が一定の基準を下回っていた自治体は
1.緩和項目(第三段階)
-高校生及び大学生以上の通学
全ての店舗とショッピングセンターの開店
-レストラン、カフェ、ペイストリーショップ(ただし店内最大4人/席、テラスで最大6人/席)は平日22:30、週末・休日は13時まで。
映画館、劇場、講堂、観劇場。
-市民行政サービス窓口の対面業務、ただし予約制。
-中リスクのスポーツ種目。
-最大6人の屋外での運動。

僕が滞在しているリスボン大学経済経営学部ISEG)も週明けからいよいよ学生が(部分的に)キャンパスに戻ってきます。今まで閉まっていた大規模店舗や、レストランの店内営業もついに再開!あと、こちらの映画はスペインやフランスなどの隣国とは違い、「オリジナルの言語+字幕」で基本的に放映されるようです。というわけで、英語の洋画なら(あるいは日本映画もあれば!?)、バッチリ楽しめそうです^^ 

こちらのコロナ対策として興味深いのは、人口あたりの感染者数にもとづく客観的な基準に従って、自治体ごとに行動制限の強弱を変えている点です。ちなみに、ソーシャルディスタンスを保てない屋外でのマスク着用は義務で、こちらの人はまじめにこのルールを守っている印象。行列でも、前の人との間隔をしっかり2メートルとっています。

2.今次緩和が適用されない市
(1)過去14日間継続的に指標(人口10万人当たりの感染者数)が120以上の以下の7市は、現状措置を維持(緩和せず第二段階に留まる)。
アランドロアル、アルブフェイラ、ベージャ、カレガル・ド・サル、フィゲイラ・ダ・フォス、マリーニャ・グランデ、ペネーラ
(2)過去14日間継続的に上記指標が240以上の以下の4市は、措置を後退させる(第一段階に戻る)。
モウラ、オデミーラ、ポルティマォン、リオ・マイオール

うまく感染を抑え込めた自治体は段階的に行動制限が緩和される一方で、
・感染者数が減らない自治体は制限を継続(足ぶみ)
・感染状況が悪化した自治体は制限を強化(後退!)
という形で、感染状況と行動制限の強さをリンクさせるのは合理的です。

日本でもそうでしょうが、直接的であれ間接的であれ、行動制限や行動変容を長期にわたって強いられると、人々は
・頑張ってもどうせ報われない → 「もう限界!」 
と感じてモチベーションを維持するのが難しくなってきます。自治体ごとの感染対策/状況に応じて、
行動制限の緩和(アメ)と強化(ムチ)を用いる
というのは、単純ではありますが、実はかなり効果的なインセンティブ設計ではないかと感じました。

ところで、こうしたアメとムチを用いる際に重要なのは、あらかじめその基準と措置を分かりやすい形でルール化して、政府あるいは自治体が
・事前のルールに従って粛々と措置を行う
ことにコミットメントしておくことです【注1】。日本の場合は、残念ながら政府も自治体も(「大阪モデル」「東京アラート」がありましたね?)、この「ルール化」と「コミットメント」に関してどちらも不十分、というかグダグダでした… せっかく基準っぽいものを作っても、人々の行動変容に有効な形で結びついていなかったのではないでしょうか。

日本においてワクチン接種が遅れていることを考えると、もうしばらくは行動制限・行動変容を継続する必要があります。その際に、ポルトガルで実施されている「ルールに基づいた自治体ごとの制限措置」にコミットする、というアイデアは参考になるかもしれません【注2】。


【注1】コミットメントが不十分だと、基準に達しなかった場合に世論の反発を恐れてムチを行使しにくくなります(政治家は不人気な政策を避ける傾向があるため)。かと言って、ずるずると“民意”に引きずられてしまうと問題を先送りすることになり、長期的には多くの人が望まない状況に陥ってしまうでしょう(コロナ対応だけに限らず、この種の先送りが日本の多くの組織内で横行しているのはご存知の通り…)。最近、朝日新聞で「コロナ対応への民主主義の失敗」を指摘して話題となった、Yale大学の成田さんによる論考(↓)とも重なる部分があります。ご関心のある方はぜひチェックを!

「コロナ失策からの発見 崩れる民主主義の常識」(成田悠輔)


【注2】ただし、ポルトガルは昨年冬以降の第2波で深刻な感染拡大に陥り(人口が約1000万人なのに、感染者数が1万人を超えた日も…)、今年の1月から厳しいロックダウンを行っていました。現時点で人々の行動変容がうまく行っているように見えるのは、インセンティブ設計の効果が出ているのではなく、単にまだ人々の脳裏に最悪期の記憶が焼き付いていて(あるいは、「あの頃の厳格なロックダウンと比べれば制限があっても全然マシ!」)、抑制効果が働いているからなのかもしれません。


オマケ
なんか、クソ真面目な滞在記(なのか!?)になってしまいました。来週以降は、ゆるめの生活情報や日々の出来事にも触れて行きたいです(苦笑)

写真(↓)は、今朝ブランチを食べに行ったレストランからの眺めです。時間を忘れて、ぼ〜っとしながらずっと座っていたい素敵な空間でした^^

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