見出し画像

「買い占め」問題は解決できるのか?

3月11日に、日経ビジネスオンラインに「買い占め騒動」に関する次の記事を寄稿しました。

買い占めに走る消費者は「間抜け」なのか?
ゲーム理論「協調ゲーム」で考える消費者行動の合理性

協調ゲームというゲーム理論の分析ツールを使って
・なぜ買い占めが起きるのか?
・どうすれば解決できるのか?
を考察する内容です。(こちらのnote記事もご参照下さい)

ただ、この記事では主に「買い占め」問題の分析に焦点を当て、解決策についてあまり触れることができませんでした。この点を補足する意味も込め、インタビュー記事を3月17日の朝日新聞[文化・文芸面]に寄稿させて頂きました(聞き手・高重治香さん)。次の電子版では紙面よりも長いフルバージョンが公開されています。

トイレ紙買いだめ理にかなった行為か ゲーム理論だと…

以下では、買い占め問題の解決に繋がるかもしれないアイデアを中心に、インタビュー内容の一部をご紹介させて頂きます。上で挙げた日経ビジネスオンラインの記事でも強調したように、買い占め問題の解決は難しいですし、どんな状況でもうまくいくような解決策は(おそらく)ありません。ただ、こうしたアイデアを少しでも参考にして頂ければ有難いです。

――個人でできることはありますか。
 「普段から日用品のストックを多めに持てば、非常時に買いだめに走らなくても『損』をしません。先ほどのゲームは、ストックを持たずトイレ紙を買いたい消費者をプレーヤーに想定していましたが、ストックしている人が増えれば、違うゲームになるでしょう」

――トイレ紙の買いだめは、銀行の「取り付け騒ぎ」に似ているように見えます。根拠のない倒産情報で金融機関から預金を引き出す人が現れ、その様子を見て慌てて引き出す人が増えるという状況です。
 「そうですね。違うのは、銀行の場合は、倒産しても預金を保護する制度があることです。いずれにしろ保護されるならば、他の人がどう動こうと、慌てて引き出しても得はしません。預金の場合は、実際に現金を刷らずとも口座に残高が記号として表示されていればよいので、こうした対処が可能です。一方商品の場合は、需要が増えた分をすぐに生産・輸送できないから、この手を打てません。ただ、一定期間後に必ず商品を入手できると確約できれば、慌てて買う人を減らすことはできるでしょう」

――市場経済では、入手を確約するのは難しそうです。台湾では緊急対応として、1人あたりのマスク購入枚数を制限する代わりに、確実に購入できるという施策をとりました。
 「マスクがどれくらい必要かというニーズは人それぞれ異なり、通常時なら市場の中で需給が効率的にコントロールされています。市場の効率性を犠牲にしててでも、社会的安定性のために平等に配ることを優先したのだと思います」

――市場に任せるならば、ドラッグストアが需要の大きいマスクの値段をつり上げてもおかしくないのに、そうした動きはそれほどありません。
 「ネットでマスクを高値で転売をしている人たちは、高くても買いたい、という需要があるから売っています。転売屋には将来の商売はないから、それができるのです。ドラッグストアが同じことをしたら、短期的には利益を上げられても、社会的批判を浴びて長期的にお客が離れてしまいます。一方で、一人でいくつも買いだめすることを防ぐために、2個目以降の購入に限って値段を高くして売るという店もあります。一案として、値上げの差額分を寄付などに回せば、企業の評判を落とすことなく買いだめを抑制できるかもしれません」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?