中国の歴史 3

 王莽は漢王朝を乗っ取り、皇帝となる。自身の国を新と名付ける。
 王莽の政治は復古的で、現実にそぐうものではなかった。やたら官職などの改名を繰り返すも、混乱を招くだけで民衆の不満は募るばかり。
 新の圧政に耐えかねた民衆は反乱を起こす。いくつかあった反乱軍の中でも、有力だった頭目に劉秀がいた。
 紀元23年、王莽は反乱軍に敗れて死ぬ。そして、新は滅亡した。

 新滅亡後、劉秀が皇帝となる。劉秀は漢王朝の血縁者だったため、国号を同じく漢とする。歴史上では後漢と呼ばれる王朝だ。王莽以前は前漢と呼ぶ。
 後漢は小さな政府だった。倹約につとめたのはよかったが、皇帝周辺にいる人物が異常に力をつける事態となる。皇帝に近い人間とはすなわち宦官だ。

 宦官は私腹を肥やすことに汲々としたため、政治が乱れた。
 184年、黄巾の乱が起こる。反乱の最中に将軍である董卓が皇帝を誘拐し、実質的な最高権力者となった。当然、董卓に対して非難が集まり、多くの武将が打倒董卓の旗印をかかげて集まる。その中には孫堅、曹操、袁紹らがいた。孫堅が董卓を破るも、混乱は治らない。諸将は自分の軍団を手元に置いたまま割拠し、中国はいくつかの軍事勢力に別れる。
 当初、有力だったのは袁紹だ。しかし曹操が黄巾軍を撃破し、これを支配下に加えたことで大勢力を作る。曹操は皇帝を迎えることで名実ともに最高の実力者となる。

 曹操は袁紹をはじめとした軍事勢力を次々と討伐。皇帝から魏王に封ぜられる。そして息子の曹丕は皇帝となった。しかし、魏は曹操ありきの勢力だった。
 曹操の軍師に司馬懿がいた。司馬懿は曹操死後、魏を乗っ取る。
 司馬懿自身は皇帝にならなかったが、魏の実権は曹家ではなく司馬家にあることは明らかだった。司馬懿の孫の司馬炎は魏の皇帝を廃して帝位につく。司馬炎の王朝は晋を国号とする。
 280年、晋は呉を滅ぼし、天下を統一。

 晋の天下統一は束の間のものだった。
 晋が衰退した理由は二つある。ひとつは司馬家の中で対立が起きたこと、もうひとつは外的の存在だ。
 漢の北には匈奴がいた。匈奴は漢の初代皇帝劉邦を敗北させるほどの力を持っていたが、新たに鮮卑族が現れる。鮮卑族は匈奴を圧迫するほどの力を持ち、さらにチベット系の民族まで現れ北方はカオスな状態にあった。
 分裂した匈奴の一派は晋の首都である長安を陥落させる。晋の亡命政府は南へ逃げる。華南へ移ったあとの晋を東晋と呼ぶ。
 中国北方の混乱は華北までも多い尽くした。いくつもの民族が争った。彼らは中国風に秦や魏といった国号を用いる。歴史上でいう前秦や北魏などである。
 北魏は華北を統一するも、華南までは力が及ばなかった。

 華南では東晋の滅亡後、宋、斉、梁、陳と続く。これに孫権の呉を加えた六朝は文化的に成熟し、仏教が盛んだった。しかし軍事的には劣り、北魏を乗っ取った隋によって滅ぼされる。

 漢にせよ晋にせよ、統一王朝でありながらその社会は不安定だ。黄巾の乱や八王の乱など、反乱が多い。
 同時代のローマ帝国は、これよりは安定していた。理由のひとつには成り立ちの違いだろう。ローマの初期の政体は王政だったが、そのときから王と元老院と市民集会という三つの勢力があった。市民集会がある以上、王といえども独裁権は弱い。市民集会としての意見を持つことは被支配者層にとっての捌け口となる。独裁制の強い皇帝のもとでは民衆は捌け口を持たず、限界まで耐えたあとに反乱という極端な手を取らざるを得ない。この不安定さは歴代王朝に常に付きまとうこととなる。

 政状の不安定はさておき、漢は世界帝国である。日本に漢委奴国王印を渡したことは有名だ。シルクロードを通じて仏教が入り、ローマとも使者を交わしている。
 蔡倫が紙を発明したのもこの時代だ。宦官といえば悪いイメージがあるが、蔡倫のように有能な人間も多い。

 晋が覇権を失い、北魏による華北統一までの五胡十六国時代は雑然としている。複数の民族が興隆し、華北で覇を競った。野生的な力に溢れていた彼らも中原の地に住むと漢文明を取り込み、同化された。こうして中華文明は形成されていくが、母体となった漢文明はそれほどの力を持っていたのだろう。春秋戦国や周といった下地があり、統一時代にひとつの文化を形成し、戦乱や他民族の流入にも耐えうる母体となった。

 六朝では漢文明は仏教と結合し、さらに洗練される。華北でも仏教は浸透していたが、それを芸術に落とし込んだのはやはり華南だ。
 春秋戦国時代、華南には楚があった。楚は大国だが面積のわりに人口は少なく、経済力は弱かった。
 三国時代になると劉備や孫権が曹操に対抗するため、自身の基盤となる地を開拓した。これによって生産力は高まる。唐においては南が経済力の大半をしめ、優れた詩人を産んだ。戦乱は褒められるものではないが、華南が開発されたことは熾烈な競争の結果であろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?